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騎士名誉クラブ  作者: 雪ハート
神の涙
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私の愛しい悪魔1

ジャンヌは独り、雪の中を歩いていた。空は暗黒に包まれ、視界は遠くまで見渡せないほどに暗く、狭い。

数秒前までソフィアとスノウを追い掛けていたはずなのに、いつの間にはぐれたのだろう。

ジャンヌは、黒と白が交わる地平線へと黙々と歩みを進めた。

数分…いや、数時間かもしれない。ジャンヌはひたすらに雪を蹴り上げ、何回も躓きそうになりながらも地平線を目指す。

突然に広がったのは古い城だ。ジャンヌはそれを高い丘から見下ろしている。そして、目も前にいるのは一人の男と、黒い何かだった。

「お前は、私を侮辱した。私を穢した。お前達の行いが災いを招くのだ」

黒い影は声を張り上げる。人間の声色にしては低く、耳障りな声だ。

「違う。話を聞いてくれ。私達は…」

男はその影に懇願する。膝を着き、両手を振り回して許しを乞う。

「消えろ」

断末魔の悲鳴と共に、一人の男が消えた。いや、引き裂かれた。残ったのは、ジャンヌと、もう一つ…黒い影。確かに人の輪郭をし、二本足で大地に立っているが…彼は揺らめく。闇の中でも存在し続ける影だ。

影は、ジャンヌに目もくれずに消えた。

此処は何だ?どうにも現実とは思えない。浅い眠りの居心地悪い夢を見ているようだ。身体は宙を浮いているかのように感覚がなく。身体に張り付く不快感を覚える。

ジャンヌは、丘を下り、古い城砦へと歩みを続ける。何かに導かれ急かされるように彼女の足は止まらなかった。



ジャンヌの姿がない。ソフィアがそう気付いたのはスノウに追い付いた後だった。雪に覆われた山の麓を駆け上がり、寒々とした森の中へと駆けて、スノウに追い付くまでそう時間は掛からなかったはずだが、ましてやジャンヌがあの程度の悪道で遅れを取るとは考えにくかった。

「ようやく二人になれましたね。彼女から、アレは殺すなと言われていましたから…」

「アレってジャンヌのこと?どういう意味なの?」

「言いませんよ。馬鹿ですか?」

馬鹿だった。彼女は意図すれば喋らぬ死体になれるような女だ。そんな女から簡単に口を開かせる術など、ソフィアは持ち合わせていなかった。

「私の存在意義は、悪魔を殺すことだけですから…。貴女と私は一心同体…。私は悪魔になった。そして、貴女も…。貴女がいてくれるだけで、私は存在意義を感じられる。貴女を殺して私は死神になる」

彼女の声色から僅かに艶やかさを感じる。無垢とは無関係なその機械的な口調の中に、仮面に篭った吐息を感じる。何を言っているのかはソフィアには理解できなかったが…いや、スノウ自身以外に、その言葉の意味を理解するなど不可能なことなのだろう。

「意味不明だけど…。私を殺したいって事だけは理解できたよ。勿論、私もやられたりしないから」

ソフィアは、弓を構えた。矢をつがい、軋む弓に力を込める。そして、スノウ目掛けて矢を放った。

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