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騎士名誉クラブ  作者: 雪ハート
永遠の森
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リアナ-氷の微笑-

目を覚ましたリアナを迎え入れたのは、明るい暖炉とカボチャのスープの甘い香りだった。身体は柔らかい毛布に包まれている。

視線の先で、樫の木を繋いで作った木造の家の隙間から差し込む日差しが埃の銀河を形成していた。

「もう目覚めたのかい、早いね。君の仲間は良く働く。おかげで私も助かっているよ」

白い髭を伸ばした何処か気品を漂わせる初老の男性がカボチャのスープをスプーンで回す。

「どちら様?此処は?」

状況が掴めないリアナが首を傾げながら問い掛ける。初老の男は空気を噛むように口を数回動かした後に選ぶように言葉を口にする。

「川に落ちた君と彼らを私が拾った。此処は私の家だよ」

リアナは差し出されたカボチャのスープを啜った。初めは毒でも盛られているのではないかと考えたが、助けてくれたのに殺すのか?そもそも、そんな回りくどい殺し方をするだろうか?方法は他にいくらでもある…先程までは無防備で寝ていたのだから。今では、その判断が正しかったと胸を張って言える。空腹も相成って、スープは頬が落ちるほどの美味しさだったからだ。

「さて、外にいる君の仲間たちを呼んでくれるか?会って欲しい人がいるんだ」

初老の男はそう告げて、病み上がりのリアナを半ば無理矢理に立たせた。まるで自分の身体ではないかのような重さとダルさが彼女を襲ったが、溜息混じりにリアナは歩みを進め、樫の木の扉を開いた。

外気の空気は冷たく、病み上がりのリアナの肌を刺した。それでも、降り積もる雪が織り成す、白銀の世界には言葉を失う。何度見ても美しい、北部はリアナの故郷だ。

「おい、小僧。もっと足腰に力を入れて薪を叩き割れ」

「はいはい、ありがとう、魔法使いさん。俺はこれでも全力だ。爺の手も借りたいよ…いや、猫の手のほうが使えそうだ」

斧を振り下ろして薪を割るソラルの横に腰掛けているのはジオだった。

「目が覚めましたか、リアナ様」

何処に潜んでいたか、モルトがリアナに呼びかける。

「ええ、お陰様で…貴方達三人とも無事なようですわね。彼が、呼んでましたわよ」

リアナは、背後にある家を指差す。

「では、参りましょうか」

モルトとジオが気だるそうに扉を開く、その後に続いてソラルが両手に自分自身が割った薪を抱えて駆けて行く。


「もうそろそろ、来ると思うんだが…」

初老の男は見事なまでに白く染まった髭を摩りながら、言葉を紡いだ。すると、入り口の扉が開いた。

「やれやれ、此処まで来るのも一苦労だよ」

樫の木の扉の影から現れたのは、一人の女性だった。長い黒髪を後頭部で結わえ、しなやかな身体のライン、整った顔つきの彼女が何者なのかは想像も付かない。

「おお、来たか。坐りなされ」

「紅茶を一杯、頂けるかな。丸一日何も食べてないからね」

女は、黒髪をさらりと捲り上げると四人の対面に腰を落ち着かせた。

「こんにちは。君たちの事は既に聞いてるよ」

「紹介が遅れたわい、このお方は…」

「いや、いい。私が自分で名乗るよ。こほん…。私はテアノ、共通の敵を持つ、いわば…戦友といったところかな…」

テアノと名乗る女は、紅茶を一杯、優雅に啜れり、目の前の4人へと軽く視線を送りながら言葉を紡いだ。

「私は、君達の敵軍の…今は『神の軍』の副王<ヴァイスロイ>だ」




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