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騎士名誉クラブ  作者: 雪ハート
神の涙
106/111

一発必中

獣の嗚咽、叫び。大地を揺るがし、ジャンヌ達の骨の髄まで響く鼓動。死臭を振り撒くその獣はジャンヌとソフィアに向って突進してくる。血反吐を漏らしながら土を蹴り上げる。

ジャンヌとソフィアはそれぞれ左右に飛び、獣の突進を避ける。

「ソフィア、また城壁から援護してくれ。こいつの狙いは私のようだ」

「援護って…こんな化け物に私の矢なんて通用しないよ」

「なんとかしろ」

「なんとかって……」

ソフィアは城壁を見上げる。大樹の城を囲む城壁。本来なら外敵を排除するはずの城壁。何か…使える物が。

ソフィアは目を凝らす。空と城を隔てる城壁の最端には巨大な据え置き式の大型弩砲バリスタが取り付けられていた。

「あれが使えるかも…、ジャンヌ、ちょっと待っててねっ」

ソフィアはジャンヌから視線を外し、城内へと掛けていく。弩砲に番える矢がある筈だ。ソフィアは階段を駆け上がり、城内を探して回る。鋭い槍、大きな石、黒い鉄製の巨大な矢。それらを十分にかき集めると両手に抱えて再び城壁を目指して駆け上がっていく。


ジャンヌは黒い獣と対峙する。獣は燃えるような爪を携える巨大な腕を振り下ろす。ジャンヌは俊敏に攻撃を避けつつ剣を振り切った。獣の口を捉えた斬撃に、獣は悲鳴を上げる。ダメージはある様だ。それも痛みにイラつきを感じる程度のものだろうが……。獣の悲鳴は低い唸り声に変わり、闇を食らったような巨大な大口を開いてジャンヌに飛び掛る。ジャンヌは咄嗟に後ろに飛ぶが、同時にバランスを崩す。獣はその隙を見逃さなかった。振り上げた片手でジャンヌを叩き飛ばす。ジャンヌは剣で獣の爪は防いだものの衝撃までは消せない。ジャンヌの身体は飛び上がり、背中や腕を何度も地面に打ちつけた。痛みに視界が霞むが、必死に握り締めていた剣を振り上げる。獣がそこまで迫っていた。

開いた大口に再び斬撃を打ち込むも、一瞬の怯みと刹那に、ジャンヌに覆い被さり、ジャンヌを喰らおうと頭を揺らした。ジャンヌは剣を黒い牙に引っ掛けて必死に押し退け様と腕を伸ばす。(当然、無駄だったが…)

獣の牙がジャンヌの頬を撫でるほど迫る。血反吐と死臭の吐息がジャンヌの顔に落ち、焦りと反抗心が同時に湧き上がる。歯を食いしばり、腕を前へと伸ばそうとする。獣の牙がジャンヌの身体を飲み、皮膚を裂き、肉と骨を砕くその時まで諦めないと心に決めている。

獣の牙がジャンヌを引き裂こうとする刹那、空気を切るような音と共に投影槍が獣の肢体を引き裂いた。獣はもがく様に身体を揺さぶり、悲鳴を上げる。

ジャンヌは獣の悲痛な悲鳴を見上げつつ、確かに緩んだ獣の両腕から逃げ出し、立ち上がった。

嗚呼、ソフィア…そなたは本当に頼りになるな。ジャンヌは城壁から見下ろすソフィアに感謝の言葉を心中で零した。

「愚かな人よ…愚かな人間。私は死なない、私は消えない」

獣の失った肢体は再び元に戻った。トカゲが尻尾を落し、また伸ばすように、獣の肢体も再び形を成した。

くそっ…。話にならない。こんなの相手にするだけ無駄だろう。力の源を潰すしか方法はない。ジャンヌは、城に足を掛ける巨大な大樹を見上げた。

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