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第二十三話 振り返ってみちゃった。(後)<ミユ視点>



 ユウ兄がバイトに行っている間は暇なので、宿でただゴロゴロするのにも飽きたこともあって町巡りをしてみたり。

 すると……異世界にもあるんだね、えっちな本。

 まぁそのMP回復において、やっぱりユウ兄とした方が効率がいいと言うか……自分ですると時間がかかってしまうというか。

 そんな回復効率をあげるのがえっちな本になるとは、どちらかというとそのえっちな本に描かれてる女の子に自分を当てはめた上で相手をユウ兄に置き換え――


 それ以外だとユウ兄の仕事風景見をに行ったり、ユウ兄が街を掃除してるところ見に行ったり、ユウ兄が街をぶらついてるのを見に行ったりするぐらいかなあ。

 まぁ妹の行動としては普通だよね。



 で、バイト行ってたユウ兄がまた死んじゃった!?

 ほんと意味わかんない! それも何か事故にあったわけじゃなくて……過労って!

 確かに朝から晩まで毎日ぶっ通しで働いてるのおかしいと思ったし、でもユウ兄がやる気だったから止められなかったし……そしたら!

 生き返ることがわかっていても息をしていないユウ兄を見るのはやっぱりぞっとする、もう二度と見たくない。

 だからまたミサさんに蘇生をしてもらって、ユウ兄が生き返ったときは思わず泣いちゃったっけ。

 シフトを減らすように頼み込んだよ、ユウ兄はそれから少し抑えるようになったんだよね。



 それからある程度ユウ兄は強くなっちゃった……ごほん、強くなった。

 強くなくたっていいのになぁ、強くなければ一生この町から出られないから一生ここで過ごせるのに。

 でも私も約束しちゃったし、強くなったからと渋々町の外に出ることに頷いて、ユウ兄が戦いを挑んだモンスターのスライム相手に死にかけながらも――なんと仲間にしたんだよね。

 なんとなく弱そうな印象を受けるスライムだけど、実際この世界では結構に強いスライムに舐めてかかり散っていった転生者は数知れないという。

 そんなスライムを手懐けるユウ兄……すごい! ユウ兄ってば人間の女の子だけでなくスライムにもモテちゃうんだ……とその時は半分冗談で思ってたんだけどね……。


 そしてスライムことスラスラがユウ兄に懐いたあとは可愛いものだった。

 目も鼻も口も見当たらない青い寒天なのに、プルプル揺れる震える様はなんだかとても可愛い。

 私が宿で暇しながらえっちな本でMP回復に務めているとスラスラ興味を示している節もあったなぁ。

 水が結構好きなようなので一緒にお風呂に入っていたりもしたっけ、私たち兄妹の可愛いペットだなぁとほっこり思ってたら――


「え、ちょ、なにこれ!?」


 とある日私が街の店を冷やかしまわるぶらり旅を終えて宿に帰ってくると――私がユウ兄とえっちなことしてた。

 いやいや私ここにいるけど!? 幽体離脱なんてしてないけど!? というかむしろあっちの方が透けて……透けて?

 輪郭の一瞬で判断しちゃったけど色は青にして透けていて、その質感は紛れもなく――スラスラだった!?


「ユウ兄なにしてんの!?」

「いやこれはだな! ……スラスラの食事らしい」

「うそだ!」


 私ちゃんとスラスラにペットショップで買ったゼリーあげてるもん!

 どういう状況かといえばユウ兄に馬乗りになっているのは私の姿形をしたスラスラで、どういうわけかユウ兄からその……搾りとろうとしていた。


「マジでそうなんで、別にミユが思っているような意図はおおおおおお」

「いやいや、そんなわけないよ……!」


 と、というか関係ないけどユウ兄のおっきい……!

 一緒にお風呂に入ってた時はそんなことなかったのに、えっちな本よりおっきいかも!?

 こ、これがギャルゲー主人公なんだ……そうなんだ……勉強になるというか、貴重な実物資料だ――


<MPが回復した!>


 見ているだけでMPが回復してしまった自分が恥ずかしくて仕方ないながらも、このまま二人の情事をこれ以上見過ごすわけにはいかない!


「とーにーかーくー!! 妹の目の黒い内はふしだらなこと禁止いいいいいいい!」


 それからどうにか私の真似をしたスラスラを引きはがすことに成功する。

 あれから私はユウ兄とスラスラを二人きりにしないように、眠るときも私と一緒にするように対策を講じるようにしたんだよね……意外と油断できないかも。

 

 ……そういえばユウ兄は相手がスラスラだから興奮したのかな、それとも私に似てるから興奮したのかな、とか考えてしまったわけで

 後者だったら、いいんだけどなあ。


 

 ……で、前々から思ってたけどミサさんのユウ兄を見る目がなんだか普通じゃない。

 年齢差で言えば親子ほどだと思う、思い返してみればユウ兄を蘇生する際の人工呼吸的に魔力を注ぎ込む時の艶めかしさが増してる。

 そして日に日に痩せてる気がするし、というか痩せたらキレイな人だと思ったら本当に美人だしびっくりした!

 そんな人が明らかに母性だけではない瞳でユウ兄を見つめている、これは危険信号だよ!


 さらにあの女……ごほん、あの人あとで分かったけど私がいないタイミング見計らって教会デートしたらしいし!

 油断も隙もない、そうして私たちが旅立ってお世話にもなったしユウ兄を生き返らせてくれた恩義もあるけど、やっぱり要警戒人物だった彼女と離れることに少しホッとしていたら――


「待ちな――私も、あんた達の旅に同行させてもらうよ」


 なんですとおおおおおおおおおおおおお?



* *



 そうして兄妹二人水入らず……の旅にはならなくて。

 年上系お姉さんのミサさんとスライムのスラスラとの四人旅になったわけで……。


 こうしてスラスラを出している間も、私は考えてしまう。

 ……たぶんこれからもユウ兄のまわりに女の子が増えるんだろうなって。

 女のカンでしかない、でもきっと当たりそうな気がしてならなくて。


「でも……しょうがないかな」


 ユウ兄がモテるの病気見たいなものだし、ギャルゲー病みたいな。

 一人の女の子としての気持ちを一旦おいておくと、妹としてはいろんな人に好かれる兄は誇らしいし。


 それに、こうしてまたユウ兄と過ごせるだけで幸せだ。

 一度死んで離れ離れになるかもしれなかった私たちが、ユウ兄の願いでまた再会できた。

 贅沢言っちゃいけないよね。

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