43 デカい魚の倒し方
迷宮で遭難した者の朝は早い。
早朝の起き抜けから鍛錬に励み、肉体を鍛え上げ、スキルの熟練度を上げ、魔闘法の修練をする。そこからはフェルとクズノハが起きてくるまでの間に生産スキルを磨くといった流れが毎日の日課だ。
俺はここ三か月の間に生産スキルに傾倒するようになり、元の器用さのおかげもあって製作能力に磨きがかかったと自負している。そして、今は魔石銃四号機の開発を進めているところだった。が、しかし... 今の所で一番出来の良い物は魔石銃二号だという点がちょっと残念なポイントだな。
その魔石銃二号機はサブウエポンとしてかなりいい出来であり、第一号で無駄に複雑な構造を作ろうとして大爆発した失敗を踏まえ、極限まで構造を簡略化した結果に完成した銃だ。だが、その実態は銃と言えるか怪しいラインの代物だったりする。
「うん」
そう考えると、今手に構えているコレが少ししょぼく見えるが、見た目だけは銃っぽく整えたので銃と名乗っても良いだろう。
ちなみに、その制作過程も超簡単だ。
Step1
サイズが一回り違う、重ねればピッタリとフィットするような二つの筒を用意する。
Step2
そして、細い方にはライフリングを、太い方の片穴にはネジを噛ませるタップ加工を施しておく。
Step3
そのネジ穴にピッタリ合うネジを錬成し、ネジの凸側を尖らせることで撃針としての役割をさせる。
Step4
太いパイプの中に、弾丸を装填した細いパイプを差し込む。
これだけ。
ちなみに弾丸は魔石を一定のサイズまで押し固めた物に、円錐型の弾を固定しただけだ。
ステップ4でパイプを強く押し込めば、撃針によって後部の魔石が割れて、その魔石の爆発によって弾が発射される。しかも、魔石は破裂した瞬間に実態を持たない魔力に還元されるため、内部に薬莢が残るようなこともない。
簡素で無骨で不恰好。だが、ことダンジョンにおいては最適解と言って良い。なにせ、こいつはその機構の単純さゆえに、詰まらないし壊れない。実質的に二つの筒だけで、SPもMPも消費なしに強力な遠距離攻撃が出来るのだ。
銃が戦争を変えた発明と呼ばれるわけだよ。
あとは他にも、ネジ部分を魔力を通しやすい素材で作ることで、魔法を弾丸に付与する攻撃強化が行えたり、魔石の種類を変えることで威力や性質を調整したりもできる。まぁ、弾丸用の魔石を調整するのに手間がもんのすごくかかるのだが、そこはご愛嬌というやつだ。
ちなみに、命名は『ツインバレル』。二つの筒を使ったからというかなり安直なネーミングだが、俺的には結構気に入っている。
そうして最終調整を行っていると、腹時計は朝7時を指す頃合いになっていた。最近は朝食で前日の残りを温めて食べることが多く、今朝も例にもれず昨日の鶏がらスープを飲み干す。
「おはようございまふ...」
「くあぁぁぁ」
二人もやっと起きてきて朝食を飲み干すと、ダンジョンへ...といつもならなるが今日は違う。バロムとアネモイを召喚し椅子に腰かける。
「では作戦会議を始めます! 作戦参謀!作戦を頼む」
「では今回の作戦を発表する」
口を開くのは昨夜作戦参謀に任命したバロム。
「まず奇襲でダメージを与えるそしたら後は全員でボコるだけだ」
「....却下で」
流石の脳筋悪魔でもそれは無いだろう。
「相手の権能は私が押さえておきましょう」
頷いて今度は俺の作戦を話す。
「奇襲っていう案は良いな。まずは奇襲で俺ができる限りあいつにダメージを与えて神足通で離脱、地上に脱出する。そしたら俺は運気調息で神足通に使ったMPを回復し、ある程度回復したら復帰。そして、その間はバロムをメインとして、フェルは事前に蓄えたMPを使った永久凍土と天災地変で海を凍らせて拘束、クズノハは両者の支援。そこからは持久戦で、できる限り広範囲スキルの発動を妨害と、こんな感じかな。後は未知のスキルも多いが予想できる厄介なスキルは猛毒血液、これのせいで近接戦はあんまりだからバロム、百歩神拳で応戦、以上」
「さすがはネトゲをやったことのある者の攻略法はレベルが高いな!」
「もしもの時は精霊憑依で大精霊召喚を使ってください」
「ちなみにリヴァイアサンを仕留められる?」
「もちろん、10秒で海から引き揚げて活け造りですね!」
WoW すごいね!?
「じゃあそれで... 「今の私の本体をマスターの体に宿した場合、魂がほんの1分でぺっちゃんこになりますよ? なのである程度セーブして、なおかつ短時間にとどめる必要がありま「いや遠慮しときます」
「いや遠慮しときます」(迫真)
追記
銃の名称を何度か変えているため、ツインバレル以外での呼び方(例 マッチロック)があれば、感想にてご報告いただけると幸いです




