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求・ヤンではなくクーな人達  作者: 綾織 茅


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番外編1

今日は雛祭り。特別に一話入れてみました!

風紀副委員長、七瀬礼司sideです。

決して出番が少ないからという理由では…

 階段を昇って自分の教室に行こうとしたら向こうからなーちゃんがやってくるのが見えた。

 これはチャンスとしかいいようがないわ。


 私はなーちゃんに気づかれないように空き教室に潜り込み、なーちゃんが通りかかるのを待った。結構こういうの得意なのよ?私。 


 そして今、私の腕の中にすっぽりと包まれてるなーちゃん。

 その顔にはなんでここに!?としっかりと驚きが現れている。


 なーちゃんは普段はクールだけど、ふとした時、とっても表情豊かになる。私にはそれが酷く好ましい。


 もちろん普段のなーちゃんも好きよ?だけど、素の笑顔を見られた時なんかはその一日はハッピーに過ごせるわ。なーちゃんマジックとでも言うべきかしらね。


「七瀬様、お離しください」

「うーん。ダーメ」


 ダメダメ、絶対ダメ。

 一度逃げたらなかなか捕まえさせてくれないじゃない?


 どこに行くのか聞いてみたい気もするけれど、大体の想像はつく。

 だから、ダメ。


「……人を呼びますわよ?」

「あら、そこまで嫌なの?」

「はい」


 ……直球ね。かなりくるわ。


 嫌われたいわけじゃないから嫌々なーちゃんを解放するとなーちゃんはすぐさまドアから出ていこうとした。


 …そこまで、か。


「……またね」

「…失礼しますわ」


 教室のドアを開けてなーちゃんは出ていった。


 ………あーぁ、なんでダメなの?


 私は廊下側の壁を背に床に座り込んだ。


 自分で言うのもなんだけど、誰も彼もが寄ってくる顔なのに。なーちゃんはダメ。騙されてくれない。周りにいる男共が問題なのよ。みんなそんじょそこらの男よりもイイ顔してるんだから。


 でも…だからこそ、なーちゃんはなーちゃんでいてくれるのよね?



「……泣かないで、かぁ」


 自然と自嘲げに笑みが浮かんだ。




 幼等部で半ば無理矢理友達になった颯について初めて神宮寺家を訪れたのが十年くらい前。


 あの頃のなーちゃんは今みたいに私達を寄せつけない子なんかじゃなかった。むしろ颯にはべったりだったし。こう言っちゃなんだけど、実の兄である庵先輩なんかよりよっぽど。生徒会長とも普通に遊んでたし。


 昔っから可愛いものとか綺麗なものが好きだった私。

 そのことを親について参加したパーティーで男子達にからかわれてこっそり泣いてた時に慰めに来てくれた。真っ赤な頬をして、あぁ必死に探してくれたんだなぁって。


「きもちわるくないの?」

「?なにが?」


 本当に分からないみたいで首を傾げてる。だから唾を飲んで聞いてみた。


「ぼくが」

「……なかないで。いっしょにあそぼ。れいちゃんはれいちゃんよ」


 今でも完璧に覚えてる。…嬉しかった。


 その言葉に、そのたどたどしいまでの口調に、どれだけ救われたか。たぶんなーちゃんは分かってない。小さかったから何気なく、なんの考えもなく言ったんだと思う。

 その後は今となっては考えられない程普通に別室でお人形遊びしたから。喜んでたみたいだったからそれはそれでいいんだけどね。


 なーちゃんが変わっちゃったのはなーちゃんが幼等部に入る少し前だったかしら。


 …変わって欲しくなんてなかったのに。




「……ふふ」


 昔を思い出したらダメね。懐かしすぎて……辛くなる。


「こんな所にいたのか」


 声の方が上から降ってきた。顔を上げると見慣れた顔、颯が窓から見下ろしていた。


「こんなところで何をやっているんだ?」

「………秘密」


 秘密よ。恥ずかしいもの、感傷に浸ってたなんて。言えるわけないじゃない。


 私は立ち上がって窓枠に腕をもたれかけた。

 一年生の教室が並ぶこの階には今、一際賑やかなクラスがある。


「ねぇ、最近なーちゃんの周りが騒がしすぎると思わない?」

「……」


 返事なし、ね。ま、そりゃそうよね。自分だってその一人なんだから。


 でも……


 負けられないわ。だってなーちゃんだもの。


 なーちゃんったら一体何人の男を魅了すれば気がすむのかしら。たくさんの男を手玉に取るなんて……悪い子。


 ………おしおき、必要ね。


 とりあえずは敵情視察に勤しむとしましょうか。


「颯、その王太子サマにもう一度挨拶に行きましょ」


 逃げないように嫌がる颯の腕を組み、私は賑やかなクラスへと足を進めた。

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