ラストゲーム
それからも毎日のように“ゲーム”が続いた。
そうか、バルザックが妙な表情をしていると思ったら、こういうことだったのね……。
わたくしとフェイルノートは、毎日お城に呼ばれ陛下とゲームで戦った。
けれど、陛下はどのゲームも弱くて……いつも、わたくしが圧倒していた。
「…………またお前から婚約を奪い取れなかったよ、クリス」
悔しそうに唇を噛む陛下。
もういい加減に諦めたらいいのに。
そこまでしてフェイルノートをわたくしから奪いたいのだろうか。
運のなさに少しだけ同情する。
「もういいでしょう。陛下、これくらいにしませんか」
「…………」
あれから一週間も経った。
その間にプレイしたゲームは数知れず。多くの勝負をした。
おかげで知らないゲームの知識まで得てしまった。
「俺からもお願いします、陛下。これ以上は……」
「まだだ、まだ終わらん」
「陛下……しかし」
「考えてもみろ、フェイルノート」
「……?」
「この程度のゲームで済んでいるのだぞ。血を見ずに済んでいるだけ平和的であろう?」
それは遠回しにアンジェリクスのことを言っているのだろうか。でもそうね、陛下が本気を出せば全騎士団を集結させ、わたくしたちを地獄に底に叩き落すくらいワケがないはず。
そうしないのは慈悲なのか、気紛れなのか。
今度は、わたくしが交渉した。
「あの、陛下。次で最後のゲームにしませんか」
「……ふむ。いいだろう。お前たちにはずいぶんと付き合ってもらった。楽しかったぞ」
「では」
「ああ。明日が最後のゲームだ」
「内容は?」
「楽しみだ」
「解りました。では、また明日改めて」
「覚悟しておくがよい、クリス」
張り切る陛下だけれど、次もきっとわたくしが勝つ。
今度こそ終わりにして平和に暮らす。
仕方ない、ラストゲームをやりましょう……。




