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小林晴幸のネタ放流場  作者: 小林晴幸
ネタの放流場
12/55

竜と竜を崇める里の夢(2010・1・25)

小林の夢日記からサルベージしてきた内容になります。

何に影響されてこんな夢を見たのかは謎です。

これは、小林が2010年1月25日の夜に見た夢のおはなし。


主な登場人物

 少年 ←主人公

 少女

 子竜

 男竜

 女竜

 豆狸


 そこは竜の血を引く民の暮らす、山にへばりつくような傾斜の里。

 人々は普通の人間と全く変わらないが、ごく稀に先祖返りが誕生する。

 そして里には竜人と呼ばれる里人とは別に、竜がいた。

 どことなくティラノサウルスを連想する、凶悪な姿のドラゴンが。


 代々続く里の歴史は、途切れることなく竜と共にあった。

 いつの時代でも、必ず最低でも一頭の知性を持つ竜がそこにいた。

 何の恩恵をもたらすわけでもなく、人間を歯牙にもかけず。

 ドラゴンの血を引くはずの民も、他の人間と変わらず虫けらのように思いつつ。

 

 里の者達はそれでも竜を敬っていた。

 歯牙にもかけられていないと知りつつ、竜を神と崇めた。

 間違っても怒りを買うことがあれば、それは里の滅亡に簡単に繋がってしまうからだ。


 その時代、里には二頭の竜がいた。

 慈悲深く、弱い者にも穏やかに接する女竜。

 特に獰猛で苛烈、歴代でも最強とされる気性の荒い男竜。

 彼らは里の山頂をねぐらにしていて、何故そこにいるのか、何をしているのか。

 それら一切を里人に話すこともなく存在していた。

 

 里のある山の頂には、竜の里が隠されていた。

 今となってはもぬけの殻の里。

 番人であり守り人たる二頭の竜を除いて他に竜はいない。

 だがそこには、卵が遺されていた。

 数え切れないほどたくさんの、竜の卵。

 遡り切れないほどの大昔、いずこかへと去ってしまった竜達の遺した卵が。


 卵を内包する聖地である竜の里と、何よりも大切な卵。

 それらを守るため、二頭の竜は存在していた。

 昼間は竜の里に籠って姿を見せず、夜は怪しい影を探して眷属と共に徘徊する。

 竜人は竜を刺激しないよう、夜になると家から出ないのが慣習となっていた。


 

 その里に、一人の少年が訪れた。

 外界とは隔絶されているはずの、その里に。

 同じ年頃の少女と、小さな竜の幼生を伴って。

 

 竜の幼生は、特殊な竜。

 竜達の王「神竜」となる定めの子竜だった。


 本来であれば竜の里で生まれるはずの、子竜。

 だがその卵は何故か外界へと紛れ、少年の手元で孵った。

 己を友として扱い、大事にしてくれた少年を親のように慕いながら。

 いつしか親分子分の関係になっていた、素直で従順な子竜。

 少年はその子竜を山に帰す為、里を訪れたのだという。


 だが、何故だろうか。

 少年は初めて訪れるはずの里に、無視できない既視感を味わっていた。

 物心がついた頃には少年と寄り添いあい、二人きりで生きてきた少女。

 少年の恋人である少女もまた、山に懐かしさと恋しさを覚える。


 幼少の頃の記憶がない少年だったが、里で夜を過ごす度に思い出していく。

 この山が、己の故郷であると。

 だが、肝心の「自分は何者なのか」が思い出せなかった。

 

 山に記憶を喚起される少年と少女。

 だが少女は過去の恐怖から記憶を塗り潰しており、覚えていなかった。

 少年は未だ生まれておらず、隔たり越しの「外」の記憶は曖昧だった。



 今から十年以上前のこと、里に盗人がやって来た。

 彼らは噂で聞いた竜の血を引くという民と、竜の卵に興味を示し……

 まだ幼い里人の子供と、二つの卵を盗み出した。


 卵の扱い方がわからないので、卵の世話をさせる意味から子供と卵を同じ檻に隔離して。

 竜の末裔と卵を、セットで好事家に売り飛ばす心算だった。

 この攫われた幼子が少女であり、卵の中身は子竜と……少年だった。

 

 そう、少年は正真正銘、本物の竜であったのだ。


 攫われてすぐ、少女と同じ檻の中で孵化した卵。

 少女の膝の上で目覚めた彼は生まれつき人の姿をしていた。

 それは孵化時に己に触れていた生物……少女の情報を読み取り、本能から彼女に合わせて姿を変じたが故。

 自分が同じ生物だと思わせることで、身を守ろうとした自己防衛機能。

 孵化の一部始終を見ていた少女は、竜の卵から生まれた「人」に目を見張る。

 しかし檻の中で不安と恐怖と絶望に苛まれていた彼女にとって、唯一の心の支えが卵であった。

 心の弱っていた少女は簡単に少年の存在を受け入れ、依存する。

 知性高き竜の子である少年は、生まれながらに多くの知識があり、思考力を有していた。

 赤子であるが故の素直な精神性から、異常な状況を受け入れた。

 自分以外に頼るもののない少女と、もう一つの卵を庇護の対象と認識する。

 そうして少女を励まし、未だ孵らない卵を抱えて脱走したのである。

 

 以来、人の間で孤児として逞しく生き抜いてきた。

 人間社会では不自然さが際立ってしまう、異常性。

 幼子が持っているはずのない不自然な知識や認識……

 己が竜であるという自覚や記憶を封じ、人の子として人間社会に紛れ込んで。

 檻の中にいた間の記憶を恐怖から黒く塗り潰した少女も、容易く少年を人と信じた。


 そうやって、十年。

 卵を守りながら二人で支えあい、共に過ごしてきた。

 待ち望んだ、卵の孵化を迎えるまで。


 檻から脱走した時は、まだ生まれたばかりで幼過ぎて。

 潜在能力はともかく、体が過度の負担には耐えられなかった。

 だからこそ、山への帰還を諦めて都会に紛れ、潜伏していた。

 

 だが、卵が孵った時。

 既に生まれてから十年が過ぎた、今。

 少年の体は、長旅の負担などモノともしない程度には育っていた。


 卵の孵化に合わせて、少年があらかじめ自分達にかけていた暗示が発動する。

 竜の里を探し、子竜を山に帰さなければいけないと。

 

 そのような経緯で里へと戻って来た二人と一匹。

 だが、里に入って来た余所者に対して、里は容易な場所ではなかった。

 里山に棲む豆狸の妖怪から情報を得て動こうとするも、やはり余所者は目立つ。

 里に入って来た彼らに対して敵意を顕わにしたのは、史上最強の男竜。

 女竜は何か感じるものがあるのか、無意識に少年達へと好意的に振る舞うが……

 それが猶更、男竜の腹立たしさを煽り立てる。

 更には少年達を追って盗人の一団が里に入り込み、男竜の怒りは高まっていく。

 そんな男竜を諫め、鎮めようと働きかける女竜であったが、事件は起きた。

 

 盗人達を殲滅した折、咄嗟に少年を庇って女竜が命を落としてしまったのだ。


 そのことが原因で、少年と男竜は本格的に敵対することになる。



 一方、少女は里で己の両親と再会を果たしていた。

 再会するだけでは留まらず、その屋敷へと連れていかれて軟禁されてしまう。

 少女の家は、里長の家系だった。

 厳格な長の一族は、自分達の信仰する神(=竜)と対立する少年を快く思うはずもなく。

 少女の言葉は聞き届けられることもなく、少年との間を引き裂かれて閉じ込められた。


 少年は傲慢に振る舞う竜をぶちのめし、少女の奪還を誓う。

 だが未だ若い少年と竜の力量差は測るまでもなく明らかだ。 

 未だ自身が竜であることにも気付かないまま、少年は巧みに地の利や状況を利用して戦おうとするが……夜の世界の中で、史上最強ともいわれる男竜を相手に死なないのが不思議なくらいだった。

 

 少年も、竜達も知らず気づかなかったのだ。

 少年の正体も、竜の里の番人であった竜達との関係も。


 竜の里の竜達は何処かへと姿を消した。

 遺された竜の里では数百年に一つか二つ、多くて三つの卵が一時に孵化する。

 孵化した竜達が大きくなり、里を守れるようになると、それまで里を守っていた前任の竜達は本能に突き動かされるようにして何処かへと飛び立ってしまう。

 まるで遠くに消えた仲間達の後を、追いかけるように。

 そうして残された若い竜達が、次の卵が孵って育つまで里の守り役となる。

 そうやって何百、何千年と続いてきた竜の里。

 眠る卵達には古い延時の魔法がかけられている。

 ゆっくりと時間が流れ、死ぬことなく、通常よりもずっと長い時間をかけてやがて孵化するように。

 緩やかに緩やかに、通常の何倍、何十倍、もしかすると何百倍の時をかけて卵は育つ。


 今の守り役は、男と女の一対。

 それはほんの偶然出会ったのだが、彼らはそう定められていたかのように番となった。

 その結びつきから生まれた卵には、当然ながら時間をゆっくりと遅くする魔法などかかっておらず、本来の時間経過に従って孵化へと向かう。

 だから他の卵よりも、早く生まれるはずだった。


 その卵から生まれたのが、少年自身であり。

 対立してしまった竜こそ、彼の父親だった。



 やがて少年は母竜の言い残した言葉から、そのことに気付く。

 父親は気付かなかったが……自身が少年を追い詰めた時、覚醒して異形に変じた姿を見て、自分達が血を分けた親子だと知ることになる。


 気付いて情がわかないこともない。

 だがそれまでの険悪なものに至ってしまった状況。

 引くに引けないものが、互いにあった。

 仲良くなるには随分と時間を、そして切欠を必要とするだろう。

 父竜の方には一応、気付いてしまえば父親の自覚があるので、もう息子に直接的な暴力を振るうことはないのだが……どうしようもなく、気まずい。


 少女の方は少女の方で、父子の誤解が解けたことによって再会が叶ったのだが。

 今度は少年が竜とわかった為、少女の両親との関係が微妙なものに。


 それでも少年は少女の為に生きていたし、彼女を喜ばすことに生き甲斐を感じていた。




 ……という夢を、以前見たわけですが。

 夢なので登場した各キャラの名前がなく、少年、少女といった表現になっています。

 

外見

 少年 身体能力が高く、体の動きを阻害しないシンプルな衣装。微妙に和テイスト。

    前髪は少し長めで、色は青っぽい黒髪。

    覚醒すると髪が赤くなり、膝ぐらいまで伸びる。

    顔にも紅い模様が……ってどこの中二病?


 少女 ふわふわした感じの女の子。白と真珠色の合わさったひらひらワンピース。

    髪の毛は薄茶色で、複数のビーズ飾りが散りばめられている。


 子竜 常に少年の服の中とか肩とか腕とか背中にへばりついている。

    大きさは掌から余るくらい。小さな細い猫くらいの大きさ。

    色は白とベージュ、背中に鳥のような翼がついている。


 豆狸 うっかり子竜の弟分になってしまった情報通。

    里の事情に明るくない少年たちのサポートキャラ。

    人語を解すが、天然。


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