活動報告より(2016・1・25)
【松竹梅トリオの魔法少女育成計画】
若松君と梅宮君と佐竹君。
三人は小学校からの腐れ縁で、八年連続同じクラスに収まっている。
特に趣味が合うわけでも、行動範囲が重なるわけでも、考え方が似ているわけでもない。
でも何故か、馬が合う。
そんな彼等は、周囲から松竹梅トリオと呼ばれていた。
彼等に常識では計れない事件が襲いかかったのは、とあるうららかな早春のこと。
まだ四月前の、春休み真っ只中のこと。
三人はそれぞれの用事から学校に顔を出していた。
「あ。松」
「梅、お前も部活?」
「うん。松も?」
来年度は二年生。その為の準備もあれば、部活に関わる用事もある。
示し合わせたわけでもないのに、若松君と梅宮君は特別教室棟で遭遇していた。
「四月の新歓用の新メニューの準備に来たんだ。梅も似た様な用だろ?」
「そうそう。僕の方は部長が張り切っちゃって」
「あー。あの、斜めに突き抜けちゃった部長さん?」
「そっちはこの間、卒業したってば。新しい部長の方ね」
「どっちにしても曲者だったような…」
「うーん…否定はできないかな」
「それでその部長さんがどうしたって?」
「あ、うん。新入生向けに、抹茶に拘らないお茶会するって言いだしてさ」
「…茶道部が抹茶捨てちゃ駄目じゃん」
「今年はもっと親しみやすくてフレンドリーな茶道部を目指すらしいよ」
「去年のテーマはフリーダムで、今年のテーマはフレンドリー…」
「変わった茶道部だよね」
「うん。部員が言うこっちゃないと思う」
「だね。でもそんな感じで、今年の春休みは忙しいって先輩も言ってたよ。今までになかった試みだから、色々と練習しなきゃならなくて。紅茶の入れ方とかね」
「もはや和風ですらないのか」
「丁度良いから、松。シフォンケーキと、適当なお菓子の作り方教えてよ。三種類くらい」
「お茶会のメニュー用? レシピ本見れば?」
「実際に作って試したことのある人にお勧めを教えて欲しいんだよ。おいしいの教えて」
「あ~…じゃ、今から調理室来いよ。俺の秘蔵のレシピ貸してやっから」
「うわ、助かる! 持つべきはお菓子作りの上手な友達だねぇ」
和気藹々と親しげに、二人は調理室へと向かう。
まだ時間も朝の内、文化部の集合には早いくらいの時間。
家庭科部男子の若松君と茶道部男子の梅宮君が、誰もいない調理室で目撃したモノは…
二人が無遠慮にガラッと開いた、ドアの先。
そこには若松君が昨日作ったジャムとパウンドケーキに、飢餓のまま食らいつく人外。
体長:12㎝~15㎝くらいの、妖精?っぽいナニかがいた。
更に詳しく言えば、その姿はちまっとしてはいても、人間の少女(全裸)に見えた。
談笑に伴った笑顔のまま、二人の少年はピシッと固まった。
人外の妖精っぽい女の子は、そんな二人に全く気付くことなく。
本能(空腹)のままにガツガツとお菓子に齧り付いていた。
これが、彼等と世界管理を旨とする神霊の末端、エィミィとの出会いであった。




