3話
ある日、メアリーの兄ジョージが仕事場の上司から尋ねられた。
「確か君の所には年頃の妹さんがいるそうだね」
「はい、今年で学院を卒業するのですが、絵を描く事に夢中で結婚の話をしても上手くかわされてばかりで困ったものです」
「実は私の友人から息子の結婚相手をと前々から頼まれているんだが、肝心の本人が全くその気が無くて困っていてね、もしかしたら君の妹さんも結婚に興味が無いならお互い束縛しない者同士、上手く行くかもしれんぞ?」
そう、上司に言われた。
「確かに両家共、いつまでも一人と言う訳にはいきませんね」
「それに相手は次期侯爵だ」
「うちは子爵家なので釣り合いが取れないのでは?」
「それは問題ない。そういうことは気にしない家族だし、なんなら侯爵である私が後見人になっても良い。とにかく女性に興味が無いのでそれを了承してくれる事が最も重要なんだよ」
「それならきっと、大丈夫です。妹は常日頃から『自由に絵を描かせてくれて、うるさい事を言わず、放っておいてくれる人がいたらいいのに』が口癖なので」
「それなら今度、私が段取りを取るので宜しく頼む」
「はい是非に。早速妹に話してみます」
そうは言ってみたもののそんな相手でメアリーは幸せになれるのか? 結婚しても、もしかしたら白い結婚かもしれないぞ? でもメアリーだったら自由に絵が描き続けられるならと、案外それはそれで幸せなのかもしれないな。とにかくのめり込むと周りが見えなくなるタイプだからな、取り敢えず帰ってから話だけでもしてみるか。




