21話
アンと共に王都の屋敷に戻って来た時には、旦那様はすでに王宮へ仕事へ出た後だった。
屋敷の使用人達にお土産を渡し、久し振りに自室のアトリエに入るとなんだか懐かしく落ち着く。
いつの間にかこの空間が自分の居場所になったのだと実感する。
今日は部屋でゆっくり過ごし、明日にでもお土産を届けながらシャーロットの居る商会へ顔を出そう。
今度は何を描こうかと考えながらソファに座っていたらいつの間にか眠りに落ちていた。
夕食の時間になり、アンが部屋に来るまで熟睡してしまった。
相変わらず旦那様はまだ帰ってこないようなので先に食事を済ませてから湯浴みをした。
すっかり目が冴えてしまったのでキャンパスの前に座ってみたがなんの構図も思いつかない。
仕方がないのでハーブティーでも飲もうと思い階段を降りて行く。流石がに時間も遅いし今日はアンも疲れているだろうからと自分で取りに行くと、そこで丁度帰って来たばかりの旦那様と目が合った。
「お帰りなさいませ」
「ああ、ただいま。こんな時間まで起きているなんて珍しいな」
「帰って来て、うとうとしてしまったらすっかり目が冴えてしまったので、ハーブティーでも淹れようと思いまして」
「アンは居ないのか?」
「もう、夜も遅いので、宜しかったら旦那様にもお淹れしましょうか? お食事はもうお済みですか?」
「食事は済ませてきたので、では私もお茶を淹れてもらおうか、今着替えて来る」
そう言って旦那様は階段を上がって行った。
そして直ぐに戻って来て、居間で二人だけでお茶を飲む。
結婚しているのに屋敷で二人だけでお茶を飲むのは今夜が初めてだなんてなんだか少し気不味い。
すると旦那様が両親の結婚記念日のお祝いのお礼を言ってくれた。
「今度休みを取るから街に買い物に付き合ってくれないか? お祝いの絵の額縁を一緒に選んで欲しいのだが」
「はい、では日時が決まったら教えて下さい」
そうしてぎこちないお茶会は終了した。




