11話
遂に結婚式当日を迎えた。全てを知っているシャーロットだがこの日の為にヴァンドーム商会の総力を使って私のドレスからアクセサリー、メイクまで磨きに磨き上げてくれた。
正直自分でも驚くほど完璧な淑女に仕上がったと思う。
シャーロット曰く磨けば光るタイプなのだとか。ただ、いつもは髪が邪魔にならないように後ろで束ね、下手をすると顔にまで絵の具の顔料をつけながら作業をしている為、普段の私を知っている人達は皆一様に驚いている。
女性嫌いな? どうやら従妹は別の様だか、ジオ様でさえ思わず二度見をしていたくらいだ。
ベールを上げ軽く頬に誓いのキスをされ、無事結婚式は終わった。そして普通なら初夜を前にドキドキする所だが私達の場合はそれが無い。
それに私は結婚式前日までシャーロットの商会の依頼で前回、買って頂いたバース侯爵夫人の肖像画の仕上げを徹夜でしていたので眠気との戦いだった。
せっかく気合いを入れて湯浴みを手伝ってくれた侯爵家侍女のアンには心の中で謝って、自分の寝室でお昼近くまで爆睡してしまった。
起きてから夫婦の寝室を軽く乱してから侍女を呼び着替えを手伝ってもらいながら旦那様の事を聞くと、仕事で朝早くに出たと言う。その際、奥様の事は起こさない様に気を使っていたという。
すっかり騙されてくれたアンに、微笑みながら言われてしまった。
「お優しい旦那様ですね」
そんなアンに、私はにっこり微笑み返した。
そして遅い朝食をとった後、早速アトリエ兼自分の寝室で作業を開始した。




