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【超訳】小倉百人一首   ~百の彩り 百の想い~  作者: 桜井今日子
さあ本編 まず飛鳥から 平安初期 月を眺めて 景色を愛でて
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006 静かな冬の夜

6 かささぎの 渡せる橋に 置く霜の 白きを見れば 夜ぞ更けにける

 かささぎの わたせるはしに おくしもの しろきをみれば よぞふけにける


【分類】冬


【超訳】随分と時は流れたものだ。

宮中の階段に霜が降りている。かささぎの橋といえば七夕のことだが今は冬。夜も随分更けてきた。時も随分と経ったものだ。


【詠み人】中納言家持ちゅうなごんやかもち

中納言とは役職で名前は大伴家持おおとものやかもちという。「万葉集」の編者のひとりで三十六歌仙のひとりでもある。

 仕事上では宮中に仕え、出世もしたのだが、嫌疑をかけられ失脚。その後、復活して要職に就いたとされている。


【決まり字】かさ(2)


【雑感】とてもロマンチックな歌です。「かささぎの渡せる橋」というのが、中国の七夕伝説で登場するそうです。織姫と彦星の逢瀬のためにかささぎが翼を広げて天の川に架かる橋となったんですって。

 時は移り、冬となり、家持は宮中での宿直(夜勤)の最中に階段に霜が降りているのを見て、かささぎの橋のようだと例えました。

 ここからは私の想像です。かささぎの橋と言えば夏のことだが、今は冬。凍るようにピーンと張り詰めた空気の中、自分の吐く息も白く煙る。漆黒の夜の中、たいまつなどで灯りがともり、うっすらと建物を照らしている。自然の照明は月と星。そんな中で建物と建物を結ぶ弧を描く木製の橋。外気に触れて手すりには霜が降りている。松の葉の先のようなとがった白い氷がおぼろげな明かりに煌く。そんな白く輝く橋はかささぎの橋のようだ。自分も宮中で出世したり、失脚したり、また復活したりといろいろあった。夜も更けてきたけれど、時も随分と流れたもんだなぁ、なんて感慨にふけっているのではないでしょうか。

 昔の方って感性がロマンチック。今、橋に降りた霜を見て「かささぎの橋」を一体どのくらいの人が連想できるかしら。霜を見て冷凍庫を連想しているワタシとしては家持さまに弟子入りしたいものです。

♪次回予告

007 心のよりどころの月

(有名な歌です。あまのはら~)

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