063 どっちが幸せなのよ?
63 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな
いまはただ おもひたえなむ とばかりを ひとづてならで いふよしもがな
【分類】恋 (男子・悲恋)
【超訳】別れるためでも会えない。
こうやって引き裂かれてしまっては、もうあなたのことをあきらめるよってそのことだけをせめて直接会って話したいんだ。人づてじゃなくてね。でもそんな方法ももうないんだ。
【詠み人】藤原道雅。儀同三司母(54)は祖母にあたる。父・藤原伊周の失脚後、出世の道は途絶え、内親王との恋も引き裂かれ、不遇のうちに生涯を終える。
【決まり字】いまは(3)
【雑感】三条院(68)の第一皇女である当子内親王との悲恋を詠んだ歌です。三条院は娘である内親王を溺愛していました。道雅は父の伊周が失脚後、出世の道が途絶えました。
どうして? どうして三条院は激怒したの? ふたりの交際を許さなかったの? 娘が可愛いから? お相手に出世の見込みがないから? お互い想いあっていたんでしょう? 不倫でもなんでもないのでしょう? なんで引き裂いちゃったの?
内親王様は幼い頃から伊勢神宮の斎宮を務めていらっしゃいました。そのお務めを終えられて、都に戻っていらっしゃいました。神様にお仕えしたから恋をしてはいけないということなのでしょうか。確かに源氏物語でもあの光源氏が落とせなかったのが、斎宮をしていた朝顔の君でした。あ、でも六条御息所の娘は斎宮を務めあげたあとに帝に入内して中宮様になっているぞ?
調べてみると、内親王さまの嫁ぎ先は皇族のみということらしいです。斎宮経験者の内親王の結婚は禁じられてはいませんでしたが、未婚の方が多かったそうです。作者の藤原道雅が皇族でないから三条院は交際を反対したのでしょうか。
このあと、内親王さまは出家して尼になり、道雅さまは不遇のまま生涯を過ごしたんですって。娘が想う人と一緒になるより、世捨て人になるほうがよかったの? 娘の幸せは願わないの?
なんだか腑に落ちないです。おふたりのかわりに恨んでやる。
♪次回予告
064 幻想的な冬の景色




