054 瞼を閉じるそのときは
54 忘れじの 行末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな
わすれじの ゆくすえまでは かたければ けふをかぎりの いのちともがな
【超訳】死ぬなら今日がいいわ。
「いつまでも忘れない」なんて言ってくれたけれど、明日のことはわからないじゃない? だったら死ぬのは今日がいいわ。最高に幸せなこの瞬間に。
【詠み人】儀同三司母
後に一条天皇の中宮となる定子の母。その定子に仕えたのが清少納言(62)。
【分類】恋 (女子)
【決まり字】わすれ(3)
【雑感】53番の「なげきつつ~」の右大将道綱母の歌に続く女性の哀しい歌です。この方は藤原道隆の正室となり、多くの子どもにも恵まれます。その子の中には天皇の中宮(正室)となる定子もいます。セレブなお生まれで、エリートのダンナと結婚して、優秀な子供達にも恵まれた。履歴書的には皆から羨ましがられたことでしょう。それでもひとりの女性としては、やっぱり哀しい。当時は認められている一夫多妻制かもしれないけれど、つらいものはつらい。オンナとして一番幸せな瞬間に死んでしまいたい、と思わせるほどの当時の女性の辛く哀しい歌ですよね。
誰だって最後にまぶたを閉じる瞬間は「幸せ」を感じていたいもの。愛する人がいるのなら、その人にはその「幸せ」を感じさせてあげて。
「幸せ」と「感謝」を感じながら旅立つのが理想です。
♪次回予告
055 流れるもの、流れないもの




