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【超訳】小倉百人一首   ~百の彩り 百の想い~  作者: 桜井今日子
春は花 夏の月夜に 秋寂し 冬白清く うつくしやまと
41/110

038 純愛? 恐喝?

38 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな

 わすらるる みをばおも()ず ちか()てし ひとのいのちの ()しくもあるかな


【分類】恋 (女子・悲恋)


【超訳】死ぬかもしれないわよ?

私はいいのよ。別にあなたに忘れられたって。でもね、神様に永遠の愛を誓ったあなたに天罰が下るんじゃないの? 命は惜しくないの?


【詠み人】右近うこん

醍醐天皇の中宮穏子(おんし)に仕えた。百人一首に登場する歌人を始め、多くの男性との恋愛遍歴が「大和物語」に描かれている。


【決まり字】わすら(3)


【雑感】権中納言淳忠(43)に贈った歌だそうです。付き合っていたカレが通ってきてくれなくなり、連絡もとどこおりがちになってきて、「いいのよ? 私はいいのよ? それよりアナタが死んじゃわないか心配なのよ?」と詠いました。

 これも解釈が2パターン。


(その1)本当に私はあなたを愛しているの。神様に永遠の愛を誓ったのに、その誓いを破ってしまうと愛しいあなたが罰を受けるのではないかと心配でならないの。あなたが死んでしまうなんて考えられないの。

(その2)永遠の愛を誓ったくせにもう私達は終わりなの? いいのよ? 私はいいのよ。忘れられたって。でもね、あなたが神様に誓いを破って天罰が下るんじゃないの? いいわけ? 命を落とすことになっても。


 この方も恋多き方だったそうです。となると、解釈も(その1)の純粋で健気な女心というよりは(その2)のカレへの皮肉ととる方が面白そう。

 当時は生霊とか物の怪(もののけ)なども信じられていたようです。原因不明で命を落とした場合は、呪いだとか祟りだとか天罰だとか噂したようです。源氏物語でも嫉妬に狂った六条御息所ろくじょうのみやすどころが源氏の正室の葵の上を呪い殺すお話もあります。夕顔もそうでしたっけ? 右近さまも「いいの? 呪うわよ?」と脅したのかもしれません。

 

 残念ながらカレから返歌は届かなかったそうです。淳忠さま、お命は大丈夫だったかしら?

 右近さま……、次行きますか? 次。




♪次回予告

039 切ないくらいが華?

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