033 日本の花
33 ひさかたの 光のどけき 春の日に しづこころなく 花の散るらむ
ひさかたの ひかりのどけき はるのひに しづこころなく はなのちるらむ
【分類】春
【超訳】そんなに急がなくても……
まったりとさ、陽が射してのどかな春を満喫しているのに、なんでそんなに急いで桜は散っていくんだろうね。もう少し落ち着いていたらいいのに。
【詠み人】紀友則
紀貫之(35)の従兄弟。三十六歌仙のひとり。
【決まり字】ひさ(2)
【雑感】ホント! ホント!! ワタシもそう思います。なぜあんなにも桜は花の時期が短いんだろう。もう少し、あと少しでいいから咲いていて欲しいのに。少しの風で、少しの雨で散ってしまう儚い桜の花。「花」といえば通常「桜」のことを指します。日本の国花です。
どの花も日本の四季を彩り、目を楽しませてくれるけれど、桜が格別に感じられるのはその儚さからかしら? 咲く前から開花予想までして、標準木を毎日のように観察し、ようやく咲いたら開花宣言をして、その桜を愛でる。花としてのその短い命を知っているからこそ、どうか散らないでと願ってしまう。風も雨も桜を避けて通ればいいのに。そうして惜しまれながら散る桜のまた見事なこと。桜の雨。やわらかに降り注ぐ花びらの舞。そして散ったあとの一面桜色の地面や水面。「花筏」とも言いますね。なんとも綺麗な言葉。
そんな桜の木の下でお弁当を食べながらその花を見上げるとき、あの薄紅のトンネルの下を通り抜けるとき、ああ日本人でよかったなぁと感じるのです。
あ、それから散りゆく桜の花びらをキャッチできたら願い事が叶うんですって。ワタシ見事に成功して今お財布にしまってあります。願い事は……、まだ叶っていません。いつか叶うのかな? 楽しみ。
♪次回予告
034 孤独感、喪失感




