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【超訳】小倉百人一首   ~百の彩り 百の想い~  作者: 桜井今日子
さあ本編 まず飛鳥から 平安初期 月を眺めて 景色を愛でて
19/110

017 紅く染まっていたのは……

17 ちはやぶる 神代もきかず 竜田川 からくれなゐに 水くくるとは

 ちはやぶる かみよもきかず たつたがわ からくれな()に みずくくるとは


【分類】恋 (男子・悲恋)


【超訳】本心は言えないけれど……。

こんなことは聞いたことがないよ。竜田川が一面の紅葉で紅く染められるなんて。(僕の心もこんな風に赤く染まっているんだよ)


【詠み人】在原業平朝臣ありわらのなりひらあそん

紀貫之(35)の選んだ六歌仙にも藤原公任の選んだ三十六歌仙のいずれにも選ばれている。「伊勢物語」のモデルとされている。


【決まり字】ちは(2)


【雑感】この方です。小野小町(9)が想いを寄せていた方。天下の美女の想いに気づかなかった方。でもこの方にも想う方がいらしたみたいです。ということは小町さまのことは気づかないフリをしていたのかしら? 

 この歌は天皇の后が、宮中の屏風絵を指してそれになぞらえて歌を詠んでほしいと命じて、業平が詠んだと伝えられます。実はこのお后さまは天皇に入内じゅだい(お嫁入り)する前は業平の恋人だったそうです。今となっては手の届かない人になってしまった人への想いをあからさまに「好きだ」とは詠えないので、秋の景色に例えたらしいです。第三者から見ると、綺麗な秋の歌。美しく流れていく一面もみじに埋められた水面。けれどもふたりにとっては秘めた恋の歌。贈られたお后さまはドキッとされたのかしら。なんだか「オトナ~~」と感心してしまうのはミーハーでしょうか。

 「からくれない」は韓赤花からくれないまたは唐紅からくれないと書きます。日本にも紅花から染め上げる「くれなゐ」色はありました。ただこの「くれなゐ」の名前は中国古代(三国志)のの国の染料の藍からとって「くれあい」から変化したそうです。藍色とは似ても似つかない色ですけれどね。

からから渡来した紅」という説もあるようですが、諸説あるようです。でもおそらくこの時代に「から」や「から」と名前をつければお洒落な舶来のイメージになるのではと命名したのでは? ないのかな、と思います。日本にとっては当時の韓国、中国は文化の源流、最先端の文化ですよね。


 話はがらりと変わりますが、漫画化、映画化されましたね、「ちはやふる」。主人公の女の子が千早ちゃん。彼女と仲間との競技かるたにかける青春ストーリーですね。漫画を読んだ方、映画を観た方たくさんいらっしゃいますよね。百人一首のことは競技として接していた千早ちゃんが和歌としての楽しさを知ったのがこの業平さんの~ちはやぶる~の歌でした。

 競技かるた、スゴイですよね。以前からもお正月などに大会が行われました、というニュースは見聞きしていましたが、今また漫画や映画のおかげでクローズアップされていますね。もうあれは一種のスポーツですよね。記憶力に反射神経に俊敏さに集中力。ものすごい世界ですよね。尊敬します。

 親戚で楽しんだ百人一首は上の句が読まれ始めると、「あ~、それそれ知ってる、知ってる。なんだっけ」と脳みその中の引き出しを探しはじめます。確かどこかに仕舞ったわよ、と。仕舞ったことは覚えていても場所を覚えていない。そうこうしているうちに下の句が読まれ、「そうそう、それよ。それ」と一拍遅れで唱えながらおもむろに札を探していました。

 みなさん「これだけは取る!」と心に決めている得意の札がありませんでしたか? ワタシは「はなのいろは……」(9)でした。

♪次回予告

018 夢で逢えたら

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