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【超訳】小倉百人一首   ~百の彩り 百の想い~  作者: 桜井今日子
貴族文化 終焉の時 散る桜 美しく儚く 人生にも似て
106/110

100 はじめがあれば終わりがあるわけで

100 百敷や 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり

 ももしきや ふるきのきばの しのぶにも な()あまりある むかしなりけり


【分類】人生


【超訳】随分廃れちゃったよね。

天皇の住まいっていってもさ、草とか生えっちゃってるわけよ。ここだって全盛期はすんげえ華やかだったんだってよ。今じゃ見る影もないんだけどね。


【詠み人】順徳院

第84代天皇。後鳥羽天皇(99)の第三皇子。和歌では藤原定家(97)に師事。承久の乱に敗れ、佐渡に流され、その地で崩御。


【決まり字】もも(2)


【雑感】この歌が百首めです。お父様の後鳥羽院(99)同様、時代が移り変わる様子を嘆いていらっしゃいます。時すでに政治の実権は鎌倉幕府に移っていました。天皇のお住いである御所は荒廃して、忍草が生えるほど。

 偲んでいる「昔」とは醍醐・村上天皇の時代あたりだそうです。百人一首になぞらえると伊勢さま(19)あたりから儀同三司母さま(54)あたりまでくらいかな? ざっくりですけれどね。確かにこの時代のお歌ってきらびやかで華やかな感じを受けます。そして恋の歌が多い。世の中が安定しているからこそ、恋の花も咲き乱れたのかもしれませんね。

 その華やかな平安時代の終焉のあとを追う形で、百人一首の編纂が終わります。


 貴族や皇族を中心とした朝廷政治が終わりを告げ、政治の舞台は武家政治へと移っていきます。その後も日本の歴史は武士を中心に動き、つい150年ほど前に明治維新を迎え、悲惨な戦争を数々経て、民主主義を得て、現代に至ります。

 皇族は政治の舞台からは姿を消しますが、その風習、文化は現代まで受け継がれています。お正月の歌会始の儀などがいい例です。


 我々一般庶民も気持ちを表現する手段としては、百人一首の時代とは比べようもないほど多岐に渡っていますが、和歌の三十一文字みそひともじも残っています。

 高校時代の恩師が国語の先生でしたが、ある日の授業で「とんでもない歌人が現れた」と授業を中断して熱く語り始めました。その歌人が俵万智さんでした。まもなく定年を迎えるロマンスグレーの先生が、デビューしたての若い女流歌人の歌の素晴らしさについて熱弁をふるったのです。

 私がお世話になった先生の中で最高最良の先生であった方の絶賛ぶりに、無条件にその人はスゴイ歌人なんだと思いこんだことを覚えています。「サラダ記念日」がベストセラーになったのはそれからまもなくのことでした。


 百首の超訳をしてみて思いましたが、時代は大きく変化しているけれど、感じていることは大して変わらないということ。美しいものは今も昔も美しい。辛いと感じることだってそう。儚いものは今でも儚い。人を想い、人を愛する。生活様式や家族のあり方など現在からは遠くかけ離れていることも多々あるけれど、人の想いってそうそう変わるものじゃないんだな、と感じました。

♪次回予告

おしまいに

(いよいよグランドフィナーレ)

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