◇雲外蒼天 ①
◇はクオン以外の視点の話になります。
今回はアカネです。
私は溜息をついた。
「ごめんね。心配かけまくって。クオンの悪い癖なんだ」
私は視聴者のみんなに謝罪した。
クオンは昔から何かにのめりこむと時間も何もかも忘れることがある。というか、何かにのめりこむと自分の時間を代償にしてすべてを費やしてしまう。
昔はずっと暇があったら勉強ばっかしていた。クオンが教科書を閉じていなかったときはほとんどなかったと思う。
クオンは寝た。
今日の配信はクオンの火山攻略……と思ったけどフェニックスをいつのまにかテイムしていて、本人が寝てしまったので企画がつぶれてしまったな。
今日の配信はどうしようか……。
「そうだ」
私は第二エリアのユ・ロ帝国の城跡地へととんだ。
「今日は私ソロでグレオンを狩ってみようかな」
クオンがいたらできないだろうからね。
私は玉座の間へと向かう。クオンはソロで勝てたんだ。シチュエーションが若干違うとはいえ、クオンが勝てた者に私が勝てないというのはなんというかちょっと嫌だ。それだとプロゲーマーを名乗ってる私が恥ずかしい。
だから今日はグレオン攻略。必殺技の万里一空はすでに記憶しているし、戦えるだろう。
グレオンと再戦しますか?というウインドウが表示される。はい、と選択すると、以前相対したゾンビの騎士が出現したのだった。
私は刀を構え、まずは攻撃を仕掛けることにした。
「”千本桜”」
一閃。
剣で受け止められた。
”ひいい、こええーー……”
”勝てる見込みあるん?”
”どうみても今挑む難易度じゃなさそう”
「レベルにしたら60は優に超えてる相手だからね。強敵だよ」
グレオンは今戦う相手じゃない。
クオンだって正面から戦ったら勝てなかったんだろう。クオンの話によると、逃げて機を窺い、抵抗しなくなったところに大技をぶち込んだという。
その時の映像がないからイマイチよくわかっていないが、その弱体化……無抵抗の状態にさせたい。が、無抵抗にするための条件がわからん。
クオンなら考え続けていたんだろう。クオンは並行して思考ができる。私は無理だ。そこまで頭がよくないし頭が回らん。
だから私は正面から堂々と倒す。クオンに負けてられない。
グレオンは万里一空の構えを取った。
私は放たれた斬撃をスキルを使って受け流す。
「モーション分かってたら避けられるんだよォ!」
私はグレオンの懐に潜り込み、刀で切り上げる。
あまりダメージは入ってないように感じた。手ごたえがそこまでない。
”がんばえー”
”動きが人間じゃない”
グレオンは剣を構えて無言で切りかかる。
鋭く速い連撃を受け流す。パワーが段違いではあるが、目的はそうじゃない。私の狙いはパリィ一択。タイミングがシビアだが、攻撃が理解できればパリィはできる。
私は攻撃を見定め、タイミングをうかがった。そして。
「せいやぁああ!」
パリィ。
グレオンがひるむ。武器が弾き飛ばされ、私は刀を強く握りしめた。
「隙だらけ!」
「…………」
グレオンは近くにあった玉座の残骸を手に取り私の攻撃を防いだ。
グレオンは吹き飛ばされ、壁に激突する。グレオンは吹き飛ばされる最中に剣を手にしていたのか、すでに手には剣が握られていた。
まぁ、この程度の攻撃で倒せるとは思っていない。アンデッドは体力が多いという特徴がある。その特徴はグレオンにも当てはまるんだろう。
”まだぴんぴんしてるぅ”
”アカネいけるか?”
”大丈夫かこれ”
心配の声が視聴者から上がっていた。
はたから見れば実力はかけ離れている。だがしかし、私がこの程度のモンスターを攻略できないわけがない。私は所見プレイには弱いが、二度目からは強くなる。
相対した時間は長くはないが、一度相対しているからグレオンとは渡り合える自信がある。
「心配しないでも大丈夫! 私は勝つよ」
ここで負けはありえない。
戦ってみて理解できた。グレオン相手には勝つことはできると。
アカネは初見プレイにめっぽう弱いだけで強いんですよね。




