既視感
一週間もしたら退院することができた。
この一週間は警察の聴取などもあり忙しかったのを覚えている。
傷跡はあるが、回復が早いらしく、少し痛む程度までには回復している。
肝臓まで到達していたらしく、あと数分通報が遅かったら死んでいたと告げられた。
そして、赤穂は無事に捕まったらしい。捕まってなかったら怖いものだからこれでとりあえずは安心と言ったところだろうか。
まったく、人間というのは恐ろしいものだ。赤穂は殺人未遂として起訴される。本人は「アカネちゃんを守っただけで正当防衛」と言い張っているようだが、百歩譲って正当防衛だとしても過剰防衛に当たるだろうに。
ちなみにどうやって家を特定したのか聞いてみたらしいが、私ではなくアカネの方を特定したらしい。アカネを脅して聞き出そうとしていたが、ポストに私宛の郵便物が入っていたのでここだと踏んだそう。アカネは自撮り写真とか全部消していた。
「さてログインログイン。一週間もログインしてなかったからな。モカちゃんに連絡取れてるし早いところ落ち合おう」
ゲームにログインし、第一エリアの待ち合わせ場所まで向かっていく。
モカちゃんはすでに来ており、キョロキョロと見渡していた。プレイヤーネームがモカちーなので非常に分かりやすい。
「待たせたね」
「今来たとこだよぉ。それより大変だったねぇ」
「ニュース知ってるんだ」
「クオンちが刺されたってネットニュースになってたからねぇ」
「心配をかけたな。それより……」
「案内してあげる! こっちだよぉ」
モカちーに案内されてついた場所はミミミ湖だった。
ミミミ湖のほわほわカピバラの温泉に8分間浸かる、それが熱耐性を得る方法らしい。
二体までしか熱耐性がつかないらしく、付与するモンスターは選ぶ必要があるらしい。
チェシャ猫……。はマストだろうが、防御をチェシャ猫頼りにしてしまってる点は否めず、それだと私の成長にはつながらないだろう。
ここはチェシャ猫をあえて外す。
インダラ……。は超苦手だし、召喚してもあまり動けなさそうだ。
アイルス……。はまぁ、動けるようになっても氷がそこまで機能しないだろう。動けることと能力は別のものと考えるか。
イズンと酒呑童子が安牌か。
私はイズンと酒呑童子を召喚する。2体は温泉に浸かり一息ついていた。
「クオンちゃん!」
「アニマ?」
「大丈夫だった!? 生きてる!?」
「生きてるだろう。ここにいる」
「あ、そか。ログインしてるもんね」
アニマが悲しそうな顔で抱きついてきた。
アニマもニュースを見て知ったんだろう。まぁ、いろんな人に心配をかけてしまったようだ。
「で、何してんの?」
「ここの温泉に魔物を8分間つけると熱耐性がつくという話でな」
「そーなの!?」
「そーだよー。ウチが発見した!」
「まさかこんな簡単なことが今まで見つからなかったのか……」
8分後、たしかにステータスを確認すると熱耐性を取得していた。
一度解除し、第三エリアへ向かう。
「温泉入ったアタシにこの暑さが通じると思うなよッ!」
「シャアアアアア!」
問題なく動けていた。
イズンが溶岩ゴーレムに糸を巻きつけ叩きつける。イズンもだいぶ戦えるようになってきていた。
「蜘蛛ちゃんかあいいねぇ」
「わかる? いいよねー!」
「じゃあうちも……」
モカちーが召喚しようとした時だった。
突然、周囲の魔物が逃げ出していく。辺りには魔物一体もいなくなってしまったのだった。
まるで何かに怯えて逃げるかのように。
ぶくぶくと溶岩が噴き出す。
「いや、まさかね?」
「え、なにこの状況? 意味不〜」
「既視感……」
似たような状況を体験したことがある。
周囲の魔物がいなくなる、それはまるでインドラウルフと出会った時のような感じ。
マグマが突然噴き出してくる。
溶岩の柱が私たちを包み込んだのだった。そして、突然それは現れる。
「キュイヤァアアアアア!」
炎に包まれた大きな鳥が現れたのだった。
《レジェンドモンスター:フェニックスと遭遇しました》




