人の恨み
「我が家ー!」
「帰ってきたな」
息抜きの温泉旅行も終わり、自宅へと帰っていく。
二泊三日の旅行で息抜きも終わり、英気を養えたので明日から本格的にまた配信活動に勤しもうと意気込んでいた。
私は郵便物を確認してみると、なんか変な封筒が入っていた。
「なんだ?」
「なにそれ?」
真っ白な封筒。
"渚 久遠へ"も何も書いておらず、不気味な封筒。悪質なイタズラかとも思ったが、中身にたくさん何かが入っているのか分厚い。
「ファンレターかな?」
「さぁね。私にファンレターなんてくれる輩がいるとは思えんが」
「いやいや、クオンにもファンはいるよ!」
家に入り、ハサミを使って封筒を開けてみる。
中を取り出すと、紙がドサっと出てきた。私はその一枚を手にして中身を確認してみる。
…………。
「クオン、なんて書いてあった? 私にも……」
「見ない方がいいよ。アカネ」
「なんでぇ」
書かれてる内容は単純なものだった。
渚 久遠、お前を殺すとびっしり紙に埋め尽くされている。
殺す殺す殺す殺すと呪詛のように書き連ねられている。入っていた紙全部に殺すと書かれている。
「見せてよぉ」
と、一枚拾い上げ、アカネはその一枚を見てしまった。
アカネの言葉が止まる。
「え……」
「だから見るなと言っただろう。まったく、悪質なイタズラだな」
「……これ立派な犯罪だよっ! 誰がこんなことを」
「さぁね」
誰が送ってきたか送り先が書いてない。
郵便番号も何も書いてないのでポストに投函して送ってきたわけではなく、直接ポストに入れている。つまり住所が相手にバレているんだろう。
暇なやつもいるもんだ。他人に呪詛を吐かないと生きていけない暴力性の強い人間もいるものだな。
「……怖くないの? クオン」
「怖いには怖いが……。怖がっていては何も出来ないだろう。まずは然るべきところに相談して始めることだ。まぁ……送り主がわからないから被害届もまだ出せないが」
「……クオン」
「心配するな。まずは玄関に防犯カメラをつけておこう。こういうイタズラをする奴がまた来ないとは限らない。むしろ私を名指しして直接この家のポストに投函している分、来る可能性が高いだろう。犯人を特定してからだ」
「今からポチる!」
その時だった。
ピンポーンとインターホンが鳴らされる。
「来た!?」
「いや、宅配便を頼んでたんだ。今日届く予定だからきっとそうだろう」
「な、なぁんだ。何頼んだの?」
「洗剤とかもろもろだな。買いに行くのも手間だからネットでまとめ買いしたのさ」
私は玄関に向かう。
扉を開けて、相手の顔を見ようと顔を上げたときだった。
目の前にいた男が私に近づいてくる。そして、下腹部に強い衝撃が襲う。
ポタポタと、私の腹部から赤い液体が垂れてきていた。
「アカネちゃんに近づく不届者を成敗したぞッ!」
「…………」
目の前の男は私の腹から包丁を引っこ抜く。
血がドバドバと出てくる傷口。私は玄関口に置いてあった傘を手に取り、リビングの方にぶん投げる。
扉にコツンと当たり、アカネが部屋から出てきたのだった。そして、私と男の顔を見る。
「え……」
「アカネたん、迎えにきたよ!」
「く、クオン!」
意識が……。
意識が遠のいてくる。血が大量に出てしまっている。
私はそのまま、ゆっくりと瞼を閉じた……。




