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クオンの理想的なパーティ

 進化したイズンは、私の腰半分くらいの大きさだったのが私より二倍近くある巨体へと変貌していた。

 顎が進化したのか、ハサミのように鋭利になり、獲物を切り裂くことができるようになっていた。


「種族は鋼土蜘蛛……。妖鋼鉱の妖力を吸収し鋼で覆われた魔物……だそうだ」


 イズンの身体に触れてみる。

 金属質の身体だ。こんこんと叩いてみるも鉄のような感じ。蜘蛛のような動きはできるようだ。蜘蛛の糸が鋼糸というスキルに変化している。

 ただ、毒が消えていた。ポイズンスパイダーの酸性毒というスキルが消去されている。まぁ、この見た目で毒は持たないだろう。


「キシャァアアア!」

「よし、じゃ、お前さんの力試してみようか」


 私はデカくなったイズンの背中にまたがり、イズンは歩き始めた。

 蜘蛛のように足を動かし歩く。道中で見つけた妖怪をそのハサミのような顎で切り裂く。一瞬で妖怪が切り裂かれ、ホラーコインをドロップしたのだった。

 今度は鋼糸を使うよう指示をしてみる。


 立ち上がり、糸を射出する。巻き付いた糸は鋼鉄の硬さがあり、蜘蛛の糸のような粘りも併せ持っているようだった。

 蜘蛛の巣があっというまにできあがる。


「おほっ、いいねぇ! こういうのすごいかっこいいじゃないか! すごいぞイズン!」

「シャッ」

「私は幸運だね。イズンもここまで強くなって。助かるよ。ありがとう」


 イズンの頭をなでる。

 町まで戻り、イズンをとりあえず戻しておいた。


「ふふっ、私はテイマーとしてはなかなか強くなってるんじゃないかな?」


 ”テイムしてるモンスターが強すぎるでしょ”

 ”チート?”

 ”インダラウルフ、チェシャ猫、マグマサウルス変異種、酒吞童子、鋼土蜘蛛……。他のテイマーってもっと雑魚多いよな”

 ”うらやまじーーーー”


「昔からだいぶ運はいいほうだったからねぇ。幸運パワーとでも言っておこうかな」


 私は街に入り、アカネと合流したのだった。

 アカネも配信を見て居たようで。


「シチニンミサキお疲れさん! あれはだいぶめんどいね!」

「だろう?」

「普通あれわからなくない? なんでわかったの?」

「名前」

「クオンってメタ的な考え好きだよね」


 まぁ、メタ的に考えることは多い。

 名前が体を表すとはよく言ったもので、シチニンミサキの場合、6人とかに減ってしまった場合シチニンミサキといえるのか?というのがある。

 シチニンミサキが6人しかいなかったらシチニンミサキと呼べなくなるだろうし、その場合どうなるのかというパラドクスみたいな考えだな。


「それより! めっちゃコメントが荒れてるけどどうしたの!? 進化したの!?」

「ああ、見てないのかい?」

「帰ったあたりでクオンと合流するために切ったから……」

「そうか。じゃ、召喚できるようになったら見せてあげよう」


 イズンだって戦えるようになったんだぞということで。

 10分経過し、イズンをアカネに見せびらかした。アカネは少し気持ち悪そうにしていたが、初めて見るモンスターにちょっと興奮している様子。


「すげー……。イズンがこう……。でもクオンってイズンあまり使ってないよね?」

「使ってないんじゃなくて使えないのさ。イズンの特性上、得意な舞台が限られていたからね」


 イズンは狭い空間で待ち構える戦法が一番強い戦い方だった。

 基本的に私が戦っているのは屋外で、待つ戦闘というのはそこまでない。トラップを仕掛ける理由がないゆえに、イズンはどうも使うことができなかった。火力もそこまでなかったからな……。

 適材適所の考えが割と私の中で強いから、イズンを使う理由がそこまでなかった。しいて言えばグレオンと戦った時にいてほしかったなという気持ちが大きい。


「でもこういうガンガン攻めていくモンスターばっかでクオンの思惑とはだいぶ違くなったんじゃない?」

「…………」

「クオン、こういうガンガン攻め立てていくモンスターじゃなくて得意なことで相手を嵌めて戦う戦法のほうが好みでしょ」

「……」

「力技のモンスター多くない?」

「…………」


 アカネのいう通り。

 私はどちらかというとこう、パワー特化のモンスターではなく、イズンのように得意不得意がはっきりしていて、戦法とか考えて戦うのが好きで、だからイズンをテイムしたというのもあって……。

 イズンを使わなかったのは適材適所とはいったが、もうそういった小細工がほぼ必要ないというのもあるんだよな。

 そのイズンまでもがパワー方面に進化してしまった。こう、能力バトルものが見たいのに素手で殴り合ってる能力バトル漫画ものを見ている気分に近い気分だ。


「……なんか知らないけど、私がテイムするのは小細工がほぼいらないものばかりなんだよね」

「人生ままならないねぇ」

「強いからいいんだ……」


 そういった魔物をテイムしようかと考えるときもあるが、まぁ、使わないだろうなという気持ちが大きくテイムに至れない。

 いや、始めた当初思い描いていたパーティとは本当にだいぶ異なっているな。まぁ、現実と理想が異なるのはよくあることだ。


「さて、私はもう疲れたからログアウトすることにするよ。疲れた……」

「ん、わかった。だいじょぶ?」

「大丈夫だ。配信は私は終わらせてもらう。さよならだ」


 私は視聴者に挨拶を告げて、現実世界に戻ってくる。

 立ち上がり、水でも飲もうとした時だった。視界がぐらっと揺らぐ。そして、そのまま体の力がどんどん抜けていき、気づけば地面に倒れ伏していた。













クオンはどっちかというとハメ戦法が基本的に好みです。ごり押しがそこまで好きじゃないんですね。なぜなら基本的に自分が傷つきたくないから。パワーでごり押すと被弾も大きくなるからあまり好みじゃないんですよね。あと、人が嫌がってる顔がちょっと好きなサディスティックな一面もあります。

どこから道が違っていったのか。インダラウルフからだよ

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― 新着の感想 ―
テイマーの定め。 中途半端な小細工によってせいぜい中堅止まりなモンスター。 「戦略?そんなよりもパワー!パワーがあれば強力なのだ!」な火力によって全てを粉砕していくモンスター。 どちらかですよね。う…
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