百鬼夜行 ①
百鬼夜行。妖怪たちの大行進。
第一エリアの街に戻ると、そこは既に妖怪たちの巣窟となっていた。
NPCは既に建物内に避難しているのか、誰もいる様子はない。
建物の上から妖怪たちの様子を眺めているのだが。
「うへぇ……。予想以上に数がいるじゃん」
「魑魅魍魎が跋扈している……といったところか。壮観といえば壮観か?」
「うひぃ……。人外、妖怪がたくさんだぁ……」
涎を垂らしているアニマ。見境なさ過ぎる。
酒呑童子の召喚タイムのクールタイムは既に過ぎており、テイムしている魔物は誰でも呼び出せる状態となっていることを確認する。
調子は万全。
「無双ゲーみたいな感じか。気合い入れるぞ〜!」
「それじゃ、行くとしようか」
私はチェシャ猫と酒呑童子を召喚した。
「にゃ〜!」
「だーはっはっは! 暴れてやんぜぃ!」
二人は気合い満々。
チェシャ猫は私の防御に徹してもらうことにする。こんだけ大量にいるから被弾も多いだろう。
しばらくは酒呑童子がメインで、10分超えたらインダラ、アイルス。交互に繰り返して殲滅を目指そう。
「まずは手始めに大技見せてやろう!」
酒呑童子は背中に背負っていた瓢箪を開ける。
ぐいっと中に入っている酒を飲み干し、瓢箪を再び背負う。そして、金棒を構えた。
「酒が入ったアタシの一撃はガードなんて出来ねえぜ! "オニゴロシ"!」
金棒を大きく振るうと、衝撃波が生まれた。
衝撃波は目の前の大量の妖怪を消し飛ばす。すげえ威力だな……。
酒呑童子は火力が高いのもあるが、能力で背中に背負っている瓢箪の酒を飲むと最初の一撃がクリティカル確定、威力が倍になるという効果がある。ただ最初の一撃だけであり、瓢箪の酒が満たされるのは時間がかかるのであまり使い勝手は良くない。
ただ、躱す意思がない相手には格別な威力でお見舞いできる。
「乱暴ですね……。"狐業火"」
アニマが召喚していた玉藻前から青い炎が辺り一面を包み込む。
妖怪たちはその業火に焼かれて消えていく。
「アニマ、私のそばにいてくださいね」
「やーんスパダリ〜!」
玉藻前はアニマを守りながら戦い、酒呑童子は我先にと敵陣にそのまま突っ込んでいる。
猪突猛進だな。とは思いつつ、攻めていくのが最適解だろう。一体一体強くはないが何せ数が多い。
他プレイヤーも集まって狩っているのが見えてはいたが、減らせど減らせど妖怪たちの数が消えない。
百鬼夜行、絶え間なく押し寄せる妖怪の波。
「キリがないな!」
どれだけ魔物を倒したのだろう。
雑魚ばかりだからドロップしているコインは少量だ。時折5枚のやつがいたり、10枚のやつがいたり。だが、量が量なので割と稼げてはいる。
「"鍛高譚"」
「"幻影の拳"」
酒呑童子たちも絶好調のようだ。
酒呑童子は妖怪たちの反撃を少し喰らっているみたいだが、大したダメージにはなっておらずピンピンしている。
玉藻前は近づけないように炎を周囲に展開しているので無傷だ。性格の差だな。
「ひゃっはぁああああ! うまーーーーっ!」
「アカネ大はしゃぎだな」
アカネは単騎で妖怪たちを蹴散らしていた。
笑顔で薙ぎ払っていく姿は恐怖すら感じる。




