次の被害者
私の戦力はテイムした魔物たちであり、それを封じられてしまった今、私は超無能である。
アスリタがのっぺらぼうを追いかけていく。私もそれに追随するが、私が向かっても攻撃自体がしょぼい。使えるのは一発撃ったらクールタイムがバカでかい万里一空と、斬雨のみ。斬雨は効果範囲がそこまで大きくないので近づかないとならない。
「待ちやがれ! このクソボケがッ! クオンさんの顔を返しやがれぇええええええ!」
「けひひっ。やーだよーっ。やっと顔が手に入ったんだもん!」
「こんの……調子乗ってんじゃねえぞガキがァ!」
アスリタはのっぺらぼうに追いついて、馬乗りになっていた。
そして、のっぺらぼうはにやりと笑うと、手を伸ばしてアスリタの顔に触れる。その瞬間、アスリタの顔のお面がにゅっと出現したのだった。
「あっ……」
「アタシの顔まで!?」
「えいっ」
のっぺらぼうは戸惑ったアスリタを蹴飛ばし、仮面となったアスリタの顔を手に取ったかと思うと、そのまま走って消えていったのだった。
アスリタの顔がなくなってしまっている。私と同じ状況だった。
「私の顔までなくなっちまったっス! 油断した……」
「また探さなくちゃならなくなったわけだな……。
犠牲者が二人。
だがしかし、さっき発見できたのは偶然でまた出会えるかと言ったらノーだろう。
こののっぺらぼうのせいでコイン集めが全然はかどっていない。一日目からほぼほぼ増えていない。くそ、レアスキルの書が欲しかったんだがこのペースだと無理だな。
「くうぅ~……。私が弱いばかりにッ! 申し訳ないっス……」
「いや……頑張ってくれただろう。悔いる前に早いところ捕らえてしまおうか。私は早くとらえないと一生戦えなくなる」
その時だった。
アスリタが何かに吹っ飛ばされたのだった。私はそれに驚き飛びのく。そこに立っていたのはバカでかい熊だった。
アスリタはクリティカルが入ってしまったのか、一発で死んでしまったようだ。
「……まずいな」
私は今現在戦えない状況にある。
その状況でタイマンは……。
目の前の熊は私に威嚇していた。
油断による魔物の不意打ち。私たちは対応が一歩遅れてしまった。顔を盗られてからいいことが一つもない。
私は仕方がないのでダメージ覚悟で魔物を呼び出すことにした。チェシャ猫、インダラは先ほど召喚したばかりなので、イズンかアイルスの二択。
ここは火力メインでアイルスにしておこう。
「アイルス」
アイルスが召喚される。
アイルスは吼え、熊を凍らせて噛み砕いたのだった。
「やっぱアイルスだね。さて」
アイルスはこっちを向くと、顔を近づけてきた。そして、褒めてといわんばかりに顔を差し出してきたのだった。
ほかの二匹とは違い、私を襲ってくる様子がない。
「アイルスは襲ってこないのか……?」
なぜだ。
アイルスだけは襲ってこなかった。インダラ、チェシャ猫と何が違う? アイルスだけが襲ってこない理由……。
「もしかして、私が卵から孵化させたモンスターだからか?」
卵から孵化したモンスターは、私がこういう姿になっても主人を見失わないということだろうか。
もし私の考えが正しかったのなら、イズンを呼び出していたら私を攻撃していただろう。アイルスを呼び出して正解だったということか。私の選択は正しい。
「アイルス、よくやった」
「ギャオン♪」
「しばらく頼りにしているよ。アイルスだけが頼りさ」
私はアイルスを撫で、そう言い聞かせる。
アイルスは頑張りますと言わんばかりに鼻息を荒くしていた。
「助かった。本当に助かったよ。アイルス、時間まで妖怪を倒していこうか」




