のっぺらぼうの真の弊害
イベント三日目。
私の顔を奪ったのっぺらぼうの居場所はいまだにわからずじまいだった。アスリタには街に入ってもらってのっぺらぼうのことを知らないか聞きまわってもらっている。
私はのっぺらぼうの行方を妖怪たちをガン無視して追いかけていた。
「すんません……。第二エリアまで範囲を広げたんスけど手がかりナシっス……」
「そうか。うーむ。私の顔をどこいったんだろうか。アカネが今日退院してくるっていう話だし明日から配信を始めるだろうからそれまでに見つけようと思ったんだが……」
私は自分の目のあたりを触ってみるがつるつるしていてなにもない。
不思議な感覚だ。私の目は見えてはいるのだが、目がないという状況。のっぺらぼうといえば口まで取っていくイメージがあったが口だけは残してくれたようだ。
アカネはこういうホラー苦手だしアカネと合わせる顔がない。二重の意味で。
「仕方がないか。アスリタ、頼みがある」
私は仕方がないのでアスリタにあるものを購入してきてもらうことにした。
アスリタはわかりましたと元気よく告げて街へ向かい、十分後に戻ってきたのだった。手に持っているのはキツネの顔のお面。
私は顔にお面をつける。これで顔がないというのはばれないだろう。
「ごめんな。この装備高かっただろう? 手持ちが今ないから払えないがいつか返すよ」
「いいんス! お役に立てれば……!」
「いや、装備も買ってもらってるからねぇ。さすがにもらいっぱなしではこちらとしても申し訳ないのさ」
このお面、高かったんだよな。
手持ちはアイルスの卵を買ったおかげでほとんど残っていないからあきらめていたがアスリタに代理で購入してもらった。
あまり人様に借りを作るのは好きじゃないんだがな……。
「カーバンクル姿になったらどうなるんすか?」
「顔がないのは変わらないだろう。変身してみるかい?」
私はカーバンクル姿に変身する。
装備していたお面がなくなり体が小さくなる。アスリタが私の顔を覗き込んだ。
「鼻とかあるけど目がないスね」
「やっぱりそうなるのかい」
私は変身を解き、仮面が目の前に現れた。
さすがにこの状態だと不気味だ。
「のっぺらぼうってどういう女の子だったんスか?」
「小さい少女のような女の子だったね。ちょうどあんな服を着て……」
私はアスリタと顔を見合わせる。
「「あいつだァ!?」」
ちょうど目の前に現れやがった。
少女は楽しそうに走っている。私たちは少女を追いかけることにした。あまり少女の姿をしたものを倒すというのは心苦しいが、私の顔を返してもらうために倒すしかないだろう。
私はインダラを召喚する……のだが。
「がる? グルルル……」
「なんで私を威嚇して……」
インダラが召喚された途端、こちらに牙をむいてきた。そして、私にとびかかってくる。インダラに突き飛ばされ、私はダメージを負ったのだった。
「まさか……」
私はインダラを返しチェシャ猫を召喚した。
「ん? 誰にゃ?」
「…………」
「誰か知らにゃいが……クオンをどこやったんにゃ?」
「私がクオンだ」
「嘘をつくにゃ」
と、チェシャ猫も攻撃を仕掛けようとしてきたので召喚を解除しておいた。
非常にまずい状況になったな。この顔になって私と認識されなくなっている。テイムしたモンスターを召喚しても主人と認識せず攻撃される仕組みになっているようだ。
のっぺらぼうになっての弊害がこれか……。
「……クオンさん」
「わかってる。今の私は超無力だ。迅速になんとかしないと私は戦えない」
テイムした魔物を呼び出せないというのは非常にまずい状況だ。




