のっぺらぼう
ホラーコインイベント二日目。
ログインしてみると運営からメッセージが届いており、他プレイヤーをキルした場合もドロップするのはバグだったらしく、すでにバグ修正済みとなっていて、奪われたプレイヤーに奪われた分の補填を、奪ったプレイヤーからはその分を引くという措置がすでになされていた。
私も昨日襲ってきたプレイヤーからのコインがなくなっている。
「ま、今日も今日とてやろうかね」
今日は配信をしない。
一人で黙々と集めておこう。アカネは明日退院できるみたいだしな。
「あのぉ……」
と、行こうとした私の腕を誰かがつかんだ。
振り返ってみると少女が私の服をちょこんとつかんでいる。
「どうしたんだい?」
「……顔、くれませんかぁ?」
少女は俯いていた顔を上げた。
少女の顔がない。いや、口以外のすべてのパーツが存在していなかった。こいつも妖怪……。私はインダラを召喚しようとしたが、突然少女の顔が浮かび上がっていった。
私は浮かび上がった顔をよく見てみると、私の顔にそっくりな感じだ……。私の目、私の鼻……。まさか?
私は自分の顔を撮影して確認してみると。
「顔が……ない」
私の顔がなくなっていた。
口だけを残し、私の顔のパーツが盗られてしまったようだ。のっぺらぼう……。
「弱ったな」
のっぺらぼう少女の姿が見えなくなってしまった。
私の顔が盗られてしまった。いや、視界はきちんと見えているし、においもなんとなくわかる。顔を取られた弊害は今のところ感じないが……。
まぁ、この姿で居るのは不気味だし早めに取り返しに行ったほうがいいだろう。
「ぎぃやぁあああああ!」
「ん?」
振り返るとNPCの少女がびっくりして腰を抜かしていた。
「ば、化け物! 出ていけぇ!」
ものを投げつけられる。
周囲のNPCも私の姿を見て出て行けと非難の声を浴びせてきたのだった。私はたまらず出ていく。どうやらこの姿では街に入れないようだ。
弊害はこれか……。いや、まぁ仕方があるまい。
「街に入れなくなったな」
まぁ、仕方があるまい。
私の顔を早めに取り戻して入れるようにしないとな。
「あ、クオンさん! ちーーぎぃやぁあああああ!」
「あぁ、アスリタ。どうしたいんだい?」
「く、クオンさんこそその顔どうしたんスか!?」
「さっきのっぺらぼうの少女に盗られてしまってね。取り戻すために奔走しているんだ」
「そういうのあるんスね……。わ、私も手伝いますよ! のっぺらぼうの女の子を探しゃあいいんスよね!?」
アスリタもどうやら手伝ってくれるらしい。
私は助かるよと告げ、私たちはさっきののっぺらぼうの女の子を探す旅が始まったのだった。コインを集めたいのだがとんだ邪魔が入ったものだ。
顔を取り戻さない限り街に入れないとなるといろいろと不便だしな。ログアウトする前に見つけておきたい。




