チーム魔物教 ②
「諸君、ケモノは好きか?」
ライオンがそう問いを投げかける。
「いや別に……」
「そうか好きか」
「どういう耳してるんだい?」
目の前のライオンはプレイヤーのようだ。
人間の姿に戻ったライオン。人間の姿はというと、褐色肌の金髪の女性だった。
豹柄のビキニアーマーみたいな装備で、頭には猫耳をつけている。
「どもー! 私が魔物教教祖のアニマちゃんだよーん!」
「……えらい若いなぁ。アバターめっちゃ弄っとん?」
「失礼だねキミ。いいじゃないかゲームくらいは若く作ったって」
「別にそれはどうでもいいが……」
早く話を進めてほしい。
「二人はケモナーってジャンル、知ってる?」
「知らないねぇ」
「まぁ、興味はあるで」
アニマは椅子に座り、何かイラストを見せて来た。
アニマが描いたイラストのようで、イラストでは可愛らしい女の子が突如オオカミのような獣に変身してしまう過程が描かれていた。
「こういうTFとか萌えない!?」
「…………」
「ウェザーの性癖とか興味ないがこれが好きなのかい?」
「……その、何度かは」
「生々しい話はやめたまえよ。そんなんだから胡散臭くてモテないのさ」
「うるさいわ……」
まぁ、こういうのは前々からよくあるものだろう。
フランツ・カフカの"変身"では主人公のグレーゴル=ザムザが虫になっているし、中島敦の"山月記"では李徴氏が虎になっていたりもする。
珍しいものではあるが物語としては見たことはあるな。
「こういうのって……萌えるよね……。興奮するよね……」
「イマイチわからないな」
「何者かに強制的にさせられたり、こういう人間じゃないものにさせられるのって興奮するでしょ!?」
「それは何者にもなれなかったが故の憧れから来るものではないのかい?」
「うぐぁっ!?」
なんかダメージを受けていた。
「別に私は私だし、こういうのに興味は出ないな……」
「興奮するもん……嘘じゃないもん……」
「クオン、こういうのは一応ノッてあげた方がいい」
「そうだな。なんだか申し訳ないね」
すっかりいじけてしまった。
アニマは私を連れて来た女の子に元気付けられて少ししたら復活したが。
「なぁ、俺もその変身スキルとか貰えたりするんやろか?」
「もち! 入信もといチームに入るなら無料であげちゃうんだな!」
「俺入る!」
「よしっ! じゃあ申請送ってね〜」
ウェザーは入ることに決めたようだ。
ウェザーとアニマは私の方を見てくる。なんだその目は。私にも入れと言いたげではないか。
「断る。私は別に興味はないし、チームに入るんだったらアカネがいないと私は入らないよ」
「アカネさんも誘うから! 勧誘するから!」
「アカネは動物を愛でる方が好きだからこういうのには興味ないがね」
「うぐぅ……」
どうしてそこまで入って欲しいんだ。
「カーバンクルなんてめっっちゃ珍しい魔物になれて幸せだろうに……! その幸せを私たちと分かち合おうとは思わないのかっ……!」
「えぇ……」
「頼むよ! 後生だ! 私はライオンとかオオカミとか獣も好きだし神話上の生物だってイケるしデュラハンとかゾンビとかスライム娘とか人外も間近で見たいんだよっ! カーバンクルも近くに置いて見ておきたいんだよっ!」
アニマは私に縋り付いてくる。
カーバンクルに変身してる今、縋り付いてきてるのは触りたいが故だろお前。手つきがもう反省してるとは思えんが。
「人を助けると思ってさぁあああああ! 女同士だからいいだろう!? なぁーーーっ!?」
「たまに顔見せに来るで良いだろう……。入るつもりはない……」
「それでいいっ! 顔見せに来てねっ! たまに遊ぼうねっ!」
「あぁ……」
《アニマからフレンド申請が届きました》
「で、週7で遊ぼうね」
「毎日だろう。よくて週1だ。私も暇じゃない」




