チーム魔物教 ①
「皆さんも魔物になりましょう!」
第二エリアの町をウェザーと歩いていると、変な集団と出くわしてしまった。
さっき、ウェザーからフレンドメッセージが届き、一緒にダンジョンを攻略しないかと持ち掛けられ、ポイズンスパイダーのレベリングに最適だと思いやってきたのはいいのだが。
「なんや、アレ」
「めっちゃ魔物の姿だね」
狼の姿だったり、スライムの姿の女性、ましてやアンデッドのような見た目の男性の集団が何やら訴えかけていた。
書かれているプラカードには「魔物教に入りませんか」というものだった。
「あー、噂には聞いたことあんで。魔物ロールプレイングを楽しんでるチーム、やな」
「魔物のロールプレイねぇ……」
「みんな魔物になるスキルを取得させられるっちゅう話や。あんな感じでも実力者が多いから割とネタクランに見えてガチらしいで」
世の中には変わった奴らがいるものだ。
そう感心しながら通り過ぎようとした時だった。私の腕をぬるっとした何かが触れる。私は恐る恐る振り返ると、スライムの姿の女性が私の腕をつかんでいた。
「魔物教に興味ありますよね!」
「ないが」
「ありますよね!」
「ないが」
「ありますよね!」
「ないが」
変な押し問答が続く。
「嘘です! カーバンクルに変身できるじゃないですか! 魔物化はマニアしかとらないんですよ! 配信を見たとき同類だと感動しました!」
「あれは不可抗力みたいなものなのだが」
どうやら視聴者らしい。
私がカーバンクルに変身できると知ったようで、同類だと認定されたようだ。
「私にそういう趣味はない」
「あ、マモナーじゃなくてケモナーでしたか?」
「そういう性癖はないのだがね」
第一マモナーってなんなんだ。
「へぇ、魔物になる経験か。悪くあらへんかもな」
「でしょ!? お連れさんはちゃんと魅力分かってますよ!」
「オイこらウェザー」
「ええやんか。ちょっと気になってるし、魔物にも強力なスキルを持つやつもぎょーさんおるんやで」
たしかにカーバンクルの回復魔法とかは強力だが……。
ウェザーが興味を示してしまい、魔物教と呼ぶ集団が私たちを引きずって本拠地にまで連れていかれてしまったのだった。
チームのアジトは郊外にあり、仏恥義理のような廃墟ではなく、洋館みたいな建物だった。
「ここから先は魔物に変身してないと入っちゃダメです。ぜひカーバンクルに!」
「そういう決まりならまぁいいがね……」
乗り気じゃない。
私はカーバンクルに変身する。スライムの女性が私を持ち上げたのだった。
「かーわーいーいー! なぜこんなにぷりちーなのにそんなけだるげなのですか!? 魔物教は素晴らしいんですよ!」
「君の熱心な布教活動のせいだと思うがね……」
「光栄です」
「ほめてはいないが」
スライムの身体はひんやりとしていてなんか変な感覚だった。
「で、君は名前なんて言うんや?」
「ライムです! スライムのライムって覚えてくださいね!」
「ライムちゃんか。かわええ名前やなぁ」
「あなたは?」
「俺はウェザー。よろしゅうな」
「はい、よろしくお願いいたしますね。そろそろリーダーのところにつきます! 体験入信ということでリーダーにメッセージを送っているので……」
体験入信ってなんだ。
体験入学みたいに言わないでもらいたいが。
私たちはチーム魔物教のリーダーの部屋に入る。
その部屋にいたのは、一頭のライオンだった。




