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死シテ屍、拾ウ者ナシ ④

 幽霊の姫様が椅子に腰かけていた。

 その隣のベッドには白骨遺体が寝そべっている。服装から見るにこの幽霊の姫様の遺体なのだろう。


「よくぞいらっしゃいました」

「……あぁ」

「まずは座ってくださいませ。ここにはグレオンは来れません」


 というので、まずは信用して椅子に腰かける。


「改めて自己紹介を。私はアイメラ。かつて栄えていたユ・ロ帝国の姫でした」

「アイメラ……」


 合言葉だ。

 姫様の名前が合言葉になっていたわけか。


「それで、私をここまで連れてきた理由を聞かせてもらいたいね。グレオンに困っているから手助けしてくれているのか?」

「理由は簡単です。あなたに、グレオンを倒してもらいたい」

「私にィ?」


 無理だろうという言葉が口から出かかる。

 が、まずは話を聞いてみて判断しよう。何も聞かずに判断するのは尚早だ。


「騎士グレオン……。かつてのユ・ロ帝国に仕えていた騎士でした。ユ・ロ帝国は戦争国家であり、他国を侵略し、どんどん領地を広げていったのです。ですが、領地を広げていくというのは領民を増やしていくこと。この大陸を支配したのはよいのですが、かつて侵略した国の住民が、とある日に一斉にクーデターを起こしました」

「クーデター……ねぇ」


 戦争国家、か。

 戦って領地を広げて、何をしたかったのか疑問は山ほどある。まぁ、問題はそこではない。


「クーデターによって、私たち王族や王城に勤めている貴族は人民によって次々と殺されていきました。グレオンは私を守るべく、私をこの部屋に閉じ込め、一人で私を殺そうとする人たちから私を守ってくれたのです」

「それで忠義というわけか」


 最後まで主君を思い、主君のために死んでいった。騎士の鏡ではあるな。


「最後まで一人たりともここを通さなかったんです。でも、最後の一人を殺して、グレオンは力尽きてしまいました。私を守るために、何人も殺し、私を守り抜くという使命を果たした……はずだったのです」

「使命をまだ果たしていないと思っているわけ、だな?」

「その通りです。グレオンは私の姿を見る前に死んでしまった。自分が倒れることで私が脅かされると考えもあったのでしょう。そのひどく強い後悔からグレオンは魔物と化し、この城に誰一人として侵入者を許さない。それが今のグレオンです。ですが、魔物として復活し長い年月が経過したことで、今はもうその使命すらも忘れて、ただただ城を守るというだけの存在に成り果ててしまってるのです」

「……なるほどねぇ」


 そういう背景があったのか。

 忠義の騎士は使命を果たさんと復活したはいいが、その使命は長い年月で既に朧となっている。

 使命を果たそうとも、使命を忘れてしまったのが今の現状。悲しき魔物だ。

 

 この姫様の願いは、私にグレオンを倒してグレオンを安らかに眠らせてほしいという願い。

 

「グレオンの魂を救えるのは今を生きているあなたにしか頼めません。どうか、お願いできませんか」

「断る理由もないだろう。脱出の目途は立っていないし……。倒さないと先へ進めないというのなら倒すさ」

「……っ! ありがとうございます!」


 だがしかし、倒す算段は今のところないのだがね。


「グレオンは、きっと私を見たらもしかして思い出すかもしれません。私のところにグレオンを連れてきてくださいませんか」

「了解だ」


 まぁ、なんとかなるだろう。











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