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愛ですよクオン ②

 私に出来ることはアカネの回復。それ以外はない。

 アカネのサポートに徹することが今この場における最適解である。私とアカネの思考が一致したのか、アカネは防御を捨てて攻撃に転じていた。


 ダメージを負った瞬間即座に回復魔法をかける。

 

「チッ……。先輩が回復に徹してるから一撃で殺さないと殺せない……。先輩を狙いたくはないし……」

「ぶつくさ言ってる暇あるかなぁ!」


 アカネの鋭い突きがサイネリアを穿つ。

 双剣で受け止めたが、思い切り弾かれ、ボディがガラ空きになっていた。

 その隙をアカネが逃すはずもなく、右足でサイネリアを蹴り飛ばす。


「どうしたの? 私に押されてるけど」

「うるさいっ! 先輩がいなきゃすぐ死ぬ雑魚のくせにッ!」

 

 サイネリアは剣を力強く握りしめて斬りかかる。

 サイネリアの得物は双剣。リーチこそ短いが手数で押し切る武器。

 アカネは刀。リーチは普通の剣よりちょっとあるくらいだが、攻撃力は見た目に反してものすごく高いらしい。大剣より高いという。

 ただそれはスキルを付与してない場合の数値であり、スキルというものを加味すると大剣がやはり一番火力出るのだとか。詳しくは知らないが。

 付与できるスキルは最大三つ。だが刀は1つしか付与できないらしい。そこがデメリットだとアカネは言っていた。


 まあ、スキルは今はどうでも良い。

 問題は武器と職業の相性だ。例えば大剣は威力がある代わりに大振りなので細かな動きが苦手。双剣相手とかはだいぶきつい。

 一方双剣は手数で勝負であるため、防御力が高い相手だと削り切るのに時間がかかり反撃をもらってしまうという。

 職業によって装備できる武器が異なり、傭兵だと双剣の装備は不可能らしい。

 

 刀と双剣、どちらが有利なのかというと双剣だとネットでは言われているようだ。

 つまり相性的に見ればアカネが不利の立場である。

 刀を装備できるのはサムライという職業。サムライは防御力が高くなる職業ではないから双剣の連撃がそこそこキツいらしい。


「"ドラゴンズクロー"!」


 サイネリアは双剣を思い切り振り下ろす。

 アカネは刀をしまっていた。


「君、このゲームあまりやったことないデショ」

「はぁ!?」

「刀の真髄を知らなさすぎ。怒ってて攻撃が読みやすくなったね」

「何言ってやがんだッ!」


 まるでドラゴンの爪攻撃のような鋭い攻撃がアカネに当たろうと……。

 だがしかし、アカネは瞬時に刀を引き抜き、そして、素早くサイネリアの横を通り過ぎる。


「居合"清流"」


 目にも止まらないほど早く切られてしまったサイネリア。

 サイネリアはその場に倒れる。


「刀の真骨頂はカウンター攻撃にあるんだよ。カウンターを喰らうと2秒程度スタンする効果もある。ま、タイミングがシビアだから難しいけどね」

「こな……クソがッ!」

「逆上して早く殺そうとしたからだよ。焦りは禁物。ゲームにおいて焦りは良い結果生まないんだよ」


 カウンターか……。

 なるほどな。サイネリアが焦ったが故にタイミングを測りやすくなったのか。

 

「ほら、もうスタンは終わったでしょ。まだやろうよ」

「まだやる……? 本気で言ってんの……? 私は別にあんたと戦いたくてやってるわけじゃないんだ。あんたを殺したくてやってんだ……。もう、なりふり構うものか」


 サイネリアはこちらを向いた。


「先輩を殺せばあんたは雑魚になるッ! 悪いけど死んでください、先輩!」

「目的が入れ替わったな……! さすがにマズイ」


 私の横に立ちたいからアカネを殺すんじゃなくて、アカネを殺したいから私を殺すということにシフトチェンジしてしまった。

 こうなったら回復に専念することも出来ない。


 私はサイネリアの攻撃を躱せる自信はない。

 かといって攻撃を受け止めることもできない。見ていただけだったのでとっくにチェシャ猫の召喚時間は過ぎており、今現在クールタイム。


「死んだか」


 私は目を瞑り、受け入れることにした。

 ウジウジ悩んでも仕方があるまい。打開できないのなら受け入れるべきだ。


「先輩、かわそうとすらしてくれないっ! 私の愛を受け止めてくれるんですねぇ!」

「愛だなんてくだらないねぇ。私のこれは諦めというものだよ。覚えておきたまえ」


 私は死ぬ瞬間を今か今かと待ち侘びた。が、その瞬間が来ることはなかった。

 目を開けると、大剣を構えた老齢の男が私の前に立ち塞がっていたからだった。












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