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不可思議な遺跡 ②

 歩けど歩けどゴールが見えて来ない。

 遺跡の中はデカいのか、それとも別の理由があってゴールに辿り着けないのかは分からないが、かれこれ1時間程度練り歩いているような気がする。


「出口が見えないやん……。どこなんここ……」

「頭がおかしくなりそうだねぇ」


 歩けど終わりが見えて来ない一本道を歩く。

 分岐点なんてものはなかったし、ただひたすらまっすぐ進んでいた。

 私は一旦立ち止まり、壁画を眺める。


「ん? これ……さっきも見た壁画ちゃうか?」

「……」


 壁画が同じだった。

 右を向いた人間のような絵が再び私たちの前に現れる。右を向いた人間が7人、間に左を向いた人間が一人。

 これ、もしかしてヒントか?

 だとしてもどういう意味だろう。ヒントだと推測してみたが、ヒントの意味がまるでわからない。

 思いついたのを片っ端から試してみるか……。


「まず右向きの人が途切れるまで右に歩く……」


 私は一人で歩いてみる。一歩、二歩と左を向いている人間のところ……4歩だけ右に歩く。

 そして、一歩後ずさる。そして、また二歩と進む。


 その時だった。

 ひゅんっと目の前の光景が移り変わる。遺跡の中の光景から、森に佇む神秘的な泉の光景へ変わっていた。

 何が起きた? アレが、正解だったのか?


 だとすると、私はどこかに飛ばされたことになる。

 綺麗な泉は透き通るような透明。だがしかし、深いのか水底は見えない。

 どこだ、ここ。遺跡の内部……ではないのか?

 

「……ウェザーはまだ来ないのか?」


 私のやり方を見ていたであろうウェザーが来ない。

 私のやり方を反復すれば来れそうなものなのだが。ここは一体どういうものなんだろうか。

 周りは木々に囲われ、ここから出られそうにない。道という道もなく、この泉の周辺はモヤがかかりその先が見えない。


 この泉で何をしろと言うんだ?


 私が悩んでいるとウェザーからフレンドメッセージが届いたのだった。

 内容は"遺跡から追い出された"とのこと。

 遺跡から追い出された? つまりウェザーはここには来れなかったということだろうか。

 もしかすると、私だけを招くつもりでこの遺跡は……。つまり、私はここに来るための条件を何かしら満たしていた?

 訳がわからない。


 悩んでいると、勝手にテイマーブックが開かれ、チェシャ猫が登場したのだった。

 チェシャ猫は私を見てニヤリと笑う。

 そして、チェシャ猫は思い切り助走をつけると……。


「にゃはは〜!」

「何をする……っ!」


 思いっきり私を蹴り飛ばし、そのまま泉の中に突き落とす。

 私は泉の中へと沈んでいく。息はできる。ゲームだからだろうか。だがしかし、足に重しがついたかのように水面へ上がることが出来ず、どんどん沈んでいく。


 チェシャ猫が勝手に出て来たかと思うと突き落とされた。

 何かしら意味がある……のだろうか? 分からない。


 意味を考えていた時だった。


《スキル進化の泉の効果が発動します》

《ウサギモードが消去され、魔物(モンスターモード):カーバンクルとなりました》

《カーバンクルの魔法が使用可能になります》


 というアナウンスが聞こえて来た。

 ウサギモード。そういえばチェシャ猫を倒したあとにそういうスキルを手に入れていたような気もする。

 もしかして、条件はソレか?


 何かしらのストーリーイベントをクリアする必要があるのだろうか。

 だから私だけがここに来れた。そのスキルを進化させるための泉だったんだ。


「魔物モード:カーバンクル……。カーバンクルは神話に登場する生物だ。いきなりすぎて訳がわからないが、後で要検証だな……。アカネがいれば相談出来たんだが」


 アナウンスが終わると、嘘みたいに重しみたいなのが消え、水面に上がることが出来たのだった。そして、水面に上がった時、私は再び別の光景を目にする。


 目を点にして驚いているウェザーの姿と、先ほどまで入っていた遺跡が隣に鎮座していた。

 

「戻ってきた……さ」

「お、おう……。お前そのおでこどうしたん……?」

「おでこ?」

「ほ、宝石みたいなんがついとんで……?」

「あーん?」


 私は自分の姿を確認してみる。

 おでこにはルビーのような赤い宝石が埋まっていた。カーバンクルになった効果というべきか。


「気にすることはないさ。ここは私が条件を満たしていたから入れたところだったんだ。魔物もトラップもない神聖な遺跡さ」

「気になるねんけど……」

「端的に言うと私がカーバンクルになっただけさ」

「カーバンクル?」

「試してみよう」


 私はスキルを使用すると、体が縮み、体色が緑色のうさぎと猫が混ざったかのような見た目の四足歩行の動物に身体が変化する。

 その光景を見てウェザーは目を丸くする。


「魔物になっとるやんけ!?」

「こういうスキルさ。なるほど。カーバンクル、戦闘スキルは何一つないが回復スキルが豊富だねえ……。状態異常は無効化してくれるようだ。だが、消費MPはバカみたいに高いから連発は不可能だねぇ」


 ステータスは私のステータス依存のようで、回復効果は高いがバカみたいにMPを食うのでたくさん使える訳じゃない。

 カーバンクルのメリットとデメリットをきちんと把握して運用して行く必要があるな。









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