一難去ってまた一難
メタボリックオークの動きはとても鈍重だった。
私でも避けられるくらい、攻撃の速度が遅い。そしてインダラの火力で押し切ることができたのだった。
メタボリックオークが倒れる。
「案外簡単だったねぇ」
「そりゃレジェンドモンスターの子供とチェシャ猫がいて苦戦する要素ないよね~」
ということだった。
インダラの火力で十分押し切れるほど強かったな。コメントでもそりゃそうだと言っている人たちが多く、視聴者の人たちもやっぱりそう思っているようだ。
私はよく知らないから不安は少しあったが……これなら大丈夫だろう。レベルもダウンする前まで戻ったし心配することはない。
「あっ、赤スパありが……えっ……」
アカネの言葉が止まる。
私もその赤スパを見たが、あまりにひどい内容だった。コメントがすぐ流れて見えなくなってしまったが、私に対するアンチコメントだった。
赤スパ投げてまで私を罵倒したいか。とも思ったが、アカネの様子がちょっとおかしい。
「どうしたんだい? 私に対するアンチコメントだろう?」
「……がう」
「なんだって?」
「違う……! クオンに対してじゃない……」
「いや……」
コメントをさかのぼってみてみるが「クオンっていう不細工が隣にいるのふざけんな」っていう内容だった。
不細工ねぇ。まぁ、容姿の美醜は客観的評価で変わるから別にどうでもいいのだが、このコメントだけでアカネが震える理由がわからない。
すると、そのアカウントが赤スパを投げてきたのだった。
『赤穗 太郎 ¥50,000 アカネちゃんは俺が一生守ってあげるからね』
「…………」
言葉にしてはいけないだろうがだいぶキモイな。
過激ファン……みたいなものだろうか。だとしてもアカネがここまで震えているのはおかしいことだが。
アカネが震えているので大丈夫かと声を賭けようとした時だった。
「死ねっ! あんたなんか死ねっ! あんたのせいでっ! あんたのせいでっ!」
と、泣きじゃくっていた。
突然の暴言に私は茫然としてしまう。アカネは死ねっ、死ねっと連呼していた。
それで、私はこのアンチコメント?をした奴がどういう奴か理解してしまった。私は相手にあったこともないし名前も知らなかったが……。アカネの人生を変えてしまった人物だろう。
それも悪い意味で……。
「チェシャ猫。悪いんだけどアカネをキルしてくれ」
「えっ、いいのかにゃ?」
「構わないよ。視聴者の諸君も今日は配信を終わらせてくれ。改めてすまないね」
チェシャ猫はアカネに攻撃を加える。
アカネは死ね死ねと連呼しながら消えていく。
「これは……荒れるだろうねぇ」




