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お金が欲しい

 日本に帰国することができた。

 初海外……というわけではないが、海外旅行というのは新鮮さがあり、とてもいい体験だったと思う。ハワイは暑いながらも、日本のようないやらしい暑さではなく、カラっとした暑さだったな。

 と振り返りながらも、今日も今日とてレベリングにいそしんでいた。


「にゃっにゃにゃーん」

「マジでテイムしてる……」


 チェシャ猫が魔物を蹴散らしていく。

 チェシャ猫の初期レベルがものすごく高かったからたぶん序盤で出会うような敵じゃなかったんだろう。そもそもとしてレベルが高かったアカネで攻撃を受けるのがぎりぎりだったレベルだから高いとは予測していたが……。


 それはそれとして、チェシャ猫を見ていて気付いたこともある。


「チェシャ猫、攻撃には因果律と何も関係ないんだねぇ」

「あれは防御にしか使えないにゃ。攻撃となると相手に干渉する必要が出てくるんにゃ」

「そうなんだ……」


 防御に関してはすさまじい。

 そもそもとして当たらなくすることができるというのがものすごく厄介だろう。チェシャ猫を召喚している時点で私に対する攻撃が当たらなくなるというのはだいぶ偉い。躱すのが苦手な私にとって攻撃が当たらなくなるというのは大きな助けだった。


「ま、今日はここらへんにするにゃー。また必要になったら呼ぶにゃー」


 制限時間の10分が過ぎ、チェシャ猫が光に包まれて消えていく。


「ま、チェシャ猫ゲットできたんなら次の街行けるか」

「次の街?」

「そう! 行くには必ず一回道をふさぐボスを倒す必要があるんだけど、チェシャ猫とインダラがいれば余裕でしょ!」

「うーむ、まぁ、相手がわからないから何とも言えないが……」


 アカネが余裕だというのなら余裕なんだろう。

 それに、ずっと始まりの街でウロウロしているのもつまらない。


「まぁ、ボス攻略は配信の時にしようね。目玉だからね。あとチェシャ猫のお披露目会もかねて」

「そうだねぇ。そうしておこう。今日はやらないんだろう?」

「さすがに帰ってきてすぐは体力的にね……。ずっと格ゲー触ってたしいろいろと疲れてるし」

「そうか。ログアウトして休むといい。キッチンにホットアイマスクを置いてあるからそれを使って疲れ目でも回復しているほうがいいだろう」

「そうするー……。じゃ、楽しんでね」


 アカネと始まりの街に戻り、アカネはログアウトしていったのだった。

 一人になり、私は始まりの街をほっつき歩く。一人でゲーム世界を歩くというのはあまりない。基本的にアカネと一緒だからこれが2回目。

 アカネといるときは攻略一筋だからあまり詳しく見る機会がないが……。もう一度詳しく見てみるとやはり町としてはよくできている。


「ん?」

「あ」


 歩いていると、金髪の不良武闘家のアスリタと出会ったのだった。


「あっ、く、クオンっ……さんっ……」

「久しぶりだねぇ。装備とかもろもろ揃えてもらった時以来か」

「そ、その節はありがとうございました……!」

「いやいや、感謝するのは私だよ。助かっている。今も使っているよ」


 装備を見せると嬉しそうに笑うアスリタ。


「きょ、今日はアカネさんはいないんで……?」

「先ほどログアウトしたよ。帰国してすぐだからね。だいぶ疲れているようだったから無理はしないようにと告げておいた」

「そのほうがいい、すね……。推しには健康でいてもらいたいすから……」

「人間健康が一番だよ。それよりアスリタ君。暇かい?」

「えっ、ひ、暇っス!」

「なら私と一緒に遊ぼう。私もいつもアカネといるから一人だと落ち着かなくてね。ここで会ったのも何かの縁だ。一緒にレベリングなりクエストなりとやろう」

「ま、まさかのお誘い……! はい、よろこんでぇ!」


 アスリタは嬉々として私の横に並び立つ。

 レベリングばかりしているので私の今現在の所持金が寂しいことになっているし、この先装備を変える必要も出てくるだろうから、お金をまず所持しておきたいものだ。

 だから今からは金策……といったところか。


「金稼ぎに最適なものとか知っているかい?」

「き、金策っすね! あー、どうだろ……。うちのチームリーダーならそういうのに詳しいんすけど……」

「チーム?」

「あ、知らないっすよね! このゲームじゃプレイヤーが5人以上でチームってやつが作れるんです! チームを作るといろいろと恩恵があって、素材の譲渡にお金がいらないとか、ヘルプが来たらワープして駆けつけることができるとかいろいろできるんです! ソロプレイの人以外は大体チームに加入してるんすよ~」

「そうなのか。アカネは入っているのだろうか……」

「アカネさんが入ってるっていうのは聞いたことないっす! たぶん、無所属っすね!」

「そうか。そりゃそうだろうね」


 アカネはチームに入る様なガラじゃない。

 プロゲーマーとして一応企業に所属こそしているらしいが、誰かと一緒にいるというのはそこまで見たことがない。理由は過去のことだろう。アカネはああ見えて軽い人間不信だからな。


「リーダーに聞いてみるっす! あ、チームのアジトがここから近いんでよければいきませんか!」

「そうだね。私が直接聞きに行こう」

「おっけーっす!」


 意気揚々と歩きだすアスリタ。

 アカネのファンは優しい人ばかりだ。アスリタは見た目こそオラオラしているが、性格はとてもいい子だな。











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