ポーカー勝負
私たちは今、ハワイにいた。
「アーロハー!」
「まさかハワイまで来るとは……」
気になる行き先はまさかのハワイだった。
理由はとあるゲームの世界大会がハワイで開催されるらしい。プロゲーマーであるアカネは日本代表として出場するからハワイにまでやって来た。
ちなみに世界大会はアメリカ時計であと一週間先である。前乗りしてこちらで調整するらしい。
まぁ時差ぼけとかそういうのを無くすためには前乗りして条件を揃えた方がいいんだろう。
アカネの他にも日本から出場する選手もいるそうだが、そちらは別に私は興味がないからどうでもいいとして。
付き添いできたので私にとってはここ一週間はただのハワイ旅行だ。
アカネは他のメンバーと調整するからハワイを楽しむ余裕はそこまでないらしい。自由時間は夜だけだ。
夜のビーチで一人寂しくアロハーと叫ぶ悲しい20代女性の姿が目に映る。
「せっかくのハワイなのに……。ビーチすら楽しむ余裕がないっ!」
「まあ仕方ないだろう。ホテルに戻ろうか」
「うぅ……」
未練がましく海を見つめるアカネを引っ張ってホテルにまで帰る。
部屋に入り、私は椅子に座って読みかけの本を再び開いた。
開いた瞬間、アカネが私の目の前にトランプを差し出してくる。アカネの顔を見ると「やろう」と訴えていた。
「わかった。何をする?」
「ポーカー!」
「わかった。やろう」
私はアカネからトランプを受け取り、トランプを切る。
適当に混ぜて、私はアカネに5枚渡した。私の方にも5枚置き、トランプを机の上に置いて手札を確認する。
ハートのジャック、ダイヤの5、スペードのA、ハートのA、ダイヤの6とすでにワンペア揃っている。
交換するならどれが良いだろうか。手堅くいくなら2枚交換。スペードのAとダイヤのA、ハートのジャックを残して2枚交換するのが吉だろう。
アカネに3カードと誤認を狙うというのがいいだろうな。
「……1枚交換」
「……」
1枚受け取り、山札の上に置く。
マジか? アカネは1枚交換を選んだ。つまりあの4枚はすでに良い手札の可能性があるということだ。2ペア以上は確定と見て間違いないだろう。
動揺を狙ってるだけかもしれないが、だとしても1枚交換はとてつもなく怪しい。本当はワンペアしか揃ってないけど動揺を狙って……。
「……私は2枚だ」
「オッケー」
私は手堅く2枚交換することにした。
トランプを混ぜ、アカネに1枚、私に2枚。交換したカードを確かめるとクローバーの10とハートのジャック。2ペア出来ている。
「ねぇ、このポーカーで負けた方は相手の言うことひとつ聞くことにしようよ」
「……勝ちが確定してるからそう言うこと言うのか?」
「いやいや。まだわかんないでしょ?」
「それを提案してくること自体、自信があるということの現れだ」
「ま、そっか。でも、お互いの手札はわからないし、私がもしかしたら負けるかもしれない。どうするー?」
「……」
そうなのだ。
相手の手札がわからない以上、こちらが勝ててるかどうかはわからん。
可能性が高いのは最初からツーペアだったということ。
だとするならば、こちらには一番強いAがペアで揃っているから相手がツーペアならば比較的勝ちやすい。
……。受けても良いな。
「わかった。そうしよう」
「そう来なくちゃ。じゃ、せーの」
私はカードを見せる。
「Aとジャックのツーペア」
「キングの4カード」
負けた。
「最初からキング4枚揃ってたんだよね」
「最初から負け確定じゃないか」
「そゆこと〜。ふふん、私の勝ち。こういうのはクオンに負け続けてたけど豪運で勝てたぜぃ」
「はぁ……」
受けなければ良かった。
と思いながらトランプを回収しようとして手を止める。
光明を得た。




