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82話

新年明けましておめでとうございます。

今年もどうぞ宜しくお願い致します。

徹夜状態で仕上げたので文章ぐちゃぐちゃかもです。

「ん、前々から思っていた事ではあったけど、グイグイいくじゃん。高垣さんに対してさ」


 馬鹿な事をほざくなよ。

 高垣とは、お前達が幸せになれる為に意見を貰ったりと協力してもらっているに過ぎなくて、出来れば高垣にもそんな綺麗な光景を目にして貰って欲しいと思っているだけだ。

 だから必然的に接触が多くなる訳で、別に異性として見てグイグイと攻めている訳では決して無い。


「あるんだよこれが。昔から、この目でヒロを見てきたから」


 だったらなんでそんな質問が飛んでくる?

 昔から俺を見て知っているのならば、俺が高垣に対してそんな感情を抱いていない事なんて一目瞭然だろうが。


「ヒロにしては珍しくハッキリさせないんだね」


 ハッキリとなんて、そんな真似は出来る訳が無いだろうが。

 俺は、俺がお前達にこの夢の内容を教えること無く、ごく自然とお前達が意識しあって好意を抱き合って、晴れて幼馴染みカップルとして結ばれて、そのまま末永く幸せになって貰いたいんだ。

 だから、高垣との関係を安易に伝える事は出来ないし、するつもりも毛頭ない。

 

「残念ながら、昔から好きな人というのは一人として居ないかな」


「むしろ今となっては、恋なんてものクソ食らえだとすら思ってるよ」


 ……馬鹿な事を言うなよ。

 昔に、お前が朱音の事は好いていると言ったでは無いか。

 あれを聞いて、俺はとても胸が温かくなった事を覚えているんだ。


 だから、恋なんてクソ喰らえだなんて酷い事を言わないでくれ、思わないでくれ。

 そんな事を言われたら、まるで俺の夢を否定されているように思えてしまうだろ。

 今迄の俺の行いが、全て無駄に感じてしまうだろ。


「朱音の事はどう思う?」


 どう思うって……何を聞きたいのか全く解らないし何故こんな時にその名前が出てくるのだろうか。

 あ……あの妙ちきりんな噂を佑も耳にしていたからだろうか、だから意味も無く俺をライバル視して、ふいにそんな発言が出て来たと言った所だろうか。


 それならば辻褄が合うな、きっとそうに違いないしそうであってくれよ。


「……さあね、それは自分で考えてみて。序でに聞きたいんだけどさ、ヒロが昔言っていた俺達の幸せって何なの? 俺、見つけた覚えこれっぽっちも無いんだけど」


「それとも今のヒロの目にはさ、俺が……俺達がヒロの言う幸せとやらを見つけた様に見えてる?」


 お前達の幸せ……ああ、昔からずっと、ハッキリと見えているんだ。

 何度も何度も思い描いて、無知なりに必死に成し遂げようと足掻いて。

 なあ佑、お前が幸せに繋がる存在は常に側に居るんだ、守るべき存在は何時も隣に居るんだぞ。

 どうしてそれに気付けない、剰えどうして恋を否定をしてくるんだ!


 こんな俺と友達になってくれたお前達が、俺にとっては『人生の宝物』なんだ。

 俺は、俺は……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 だから俺は……

 ああそうか、俺は―――













 いきなり過ぎと言っても過言では無い、時と場所を一切無視して始まった俺と佑の、束の間の恋バナ。

 始まった直後は本気で困惑してしまったが……結果として内心では言い返せても、表では終始狼狽えてしまうだけで何も出来なかった。


 その途中でゲームも終わっており、俺の余りの変化に周りはよもや熱中症か、と何やら騒いだりもしていたが、そういった周囲の反応全てに一言だけを返し、ただただ佑と朱音と高垣の三人を眺め続けてしまっていた。


 その後の進行は、全て前田さんが仕切ってくれていた。

 そうしてただ時間だけが過ぎていき、何時の間にか皆も着替えを済ませて今となっては帰る時間となってしまっていた。


「ヒロ君、皆はもう帰ったけど……大丈夫なの?」


「だーかーら、大丈夫だって。皆の忘れ物が無いか確認してぱぱっと帰るだけだ」


「……ホント?」


「ホントホント」


「ホントにホント?」


「しつこいぞ……あー、すまん」


「ううん、大丈夫だよ。こっちこそごめんね」


 今に限って心に余裕の持てない俺は、朱音の心配に対しつっけんどんな態度を取ってしまった。

 ついつい語気を荒げてしまっていた事に遅れて気付き謝れば、朱音はそれを気にするという感じでは無く、その澄み切った綺麗な瞳で内心を見透かそうとするかのように俺を見てくる。

 そのまま数秒ほど互いに見つめ合って―――


「ほら、佑と一緒に帰んな。向こうでコッチ見ながら待ってるからよ」


「うんわかった」


 耐え切れずに視線を切り、友達の見送りで今は遠くに居る佑の居る方角へ指を指す。

 朱音も催促に従い、肩に掛けたバッグの位置を調整してから踵を返し佑の元へ向かおうとした手前で、ふと足を止める。

 そして、夕日によって地面へくっきりと映る自分の影を見つめて、今度は俺の影を見つめた。


「影なんか見てどうした?」


「うーん、三人のこれ描くのも有りかもと思ってね〜」


「は?」


「何でもないよ、こっちの話だから! じゃあまた明日ね!」


「お、おう。また明日」


 影に何やら思い入れでもあるのか、軽く手を振り元気良く挨拶を送る朱音に、俺も手を振り替えしてその背を見送る。

 そうして待つ佑の元まで朱音が辿り着いた所を見ていると、少しの会話をした後に佑が此方に大きく手を振ってくる。

 俺を散々振り回してきた癖してその様が普段の、何時も見ているものと何らか変わりなくて、ついつい笑みを零しながら俺も手を振り返す。


 そうして視界から二人の姿が消えた頃合いを見計らい、俺は抱えていた鞄を無造作に放り投げ、その場に座り込む。

 そうして一人で、夕焼けを反射するキラキラと美しい海面を眺めた。


「……っはああぁぁ。なーにが恋バナだ、あんなもん俺にとっては実質拷問じゃねぇか。というか絶対思い付きで始めたろアレ」


 佑との会話を振り返りながら、そう独り言ちる。

 高垣の件については、あの時はそんな事は有り得ないと思っていたのだが、改めて見れば距離感を近くしてしまっている気がしなくもないのは確かだった。

 だから佑も、その様に見えてああ言ってきたのだろう。


 まあ、そんな事よりもだ。


「あいつ、()()()好きな人なんて居なかったんだな」


 俺が望んでいた、佑の恋(朱音への恋心)

 けれど佑は意中の相手など昔から居ないと、確かにそう明言して、その際に嘘を付いた印象は欠片も感じなかったからあれは本心から言ったものなのだと言うことは理解出来た。


「クソ食らえ、か」


 本人から言わせれば、恋愛に対し何かしらの理由があって今じゃ悪く見えているという言葉だろうな。

 だが、本気で嫌悪とか軽蔑していると言った雰囲気では無く、あくまでそう例えられる程度のものに見えた。


「そんでもって後は……」


「後は、何かしら」


 本日何度目だろうか……座り込む俺の背後からの聞き慣れた声。

 俺も俺で、コイツならきっと来るだろうなとは予想出来てはいたのだが。


「はあ……帰ってなかったのか、高垣」


「迎えが遅れるそうでね。暇潰しの相手になってくれるかしら」


 此処に来た時と同じ服装へ着替えを済ませていた高垣は、そう言うやいなや何も敷かずに俺の横に三角座りで座り込む。


「……」


「何よ、その嫌そうな顔は?」


「……いや何でも」


 何もこんな時に限って隣に来なくても、という意識が顔に出てしまっていた様だ。

 こいつの事だから言っても聞かないだろうなと思い、顔を正面に戻し穏やかに揺れる海を眺める。

 そうして無言の空間が数分程続いた頃、耐えきれなくなったのか高垣の方から話を振ってきた。


「相談。あるなら聞くわよ」


「何で相談なんてワードが出てくんだよ」


「アンタが始めた催しが終わってからずっと渋い顔してるから」


「……」


「喜怒哀楽の差が分かり易すぎるわね」


「じゃかあしい」


「随分と参っているのね」


 果たして自分がどんな顔をしているのかは不明だが、弄る様子を見るに相当な顔をしていることだろう。

 俺今ブルーな気持ちなのよ、結構マジで。


 でもまあ……佑の事も朱音の事も、そして高垣の今後を考え、俺は重く溜め息をついてから相談に乗ってもらう事にした。


「……佑と」


「浅見君と?」


「恋バナ……あれって恋バナで良いんだよな?……をしてた」


「…………は?」


 宇宙を背にした猫のような顔をした高垣は。

 徐々に理解が追い付いてきたのか、唐突に自身の両膝に顔を突っ伏し始め、肩を小刻みに震わせる。

 そう、それはまるで……


「ふっ……ふっくっふふ」


 笑いを堪えて―――ていうか隠しきれずに笑ってた。


「なにわろてんねん、こら」


 こっちは真面目な相談をしているというのに、何故その様な反応を示すのだろうか。

 ちょっとムカついた俺は、未だに笑いを堪える高垣の、ガラ空きになっていた脇腹にチョップをかました。


「んっ……」


 するとどうでしょう。

 なんかすっごい艶っぽい声が聞こえたし、そんでもって背筋には寒気が走った。


「何すんのよ、こら」


「あー! 脇腹抓るのはヤメて千切れるから!」


 やられたらやり返す勢いで、相談そっちのけで少しの攻防が始まる。

 だが俺は反撃を許されず二回ほど追加を貰うという、残念な結果となった。


「……んん。急に笑ったのは謝るわ」


「やっとかよ」


 気を取り直した高垣の方から話題を戻してくる。

 辟易した俺は、続きを促した。


「…………ふふっ」


「まだ続ける気か?」


「いえ違うのよ。あんな場所で堂々と歩く浅見君とビクビクしながら逃げるアンタが一体どんな会話を繰り広げたのかと思えば……それが恋バナって。しかもあんな大勢が見ている場で」


「悪うござんしたね」


「拗ねないでちょうだい」


 そう言われたら誰だってムッとするだろうに。


「でもまあ、そうね」


「?」


 余程面白可笑しかったのか、目尻を拭った高垣は俺の目を覗き込む。


「ただ仲の良い誰かでは無く、浅見君と正面からだなんて……アンタには()()覿()()だったでしょうね」


「……」


 「お前に俺の何が分かる」という言葉が喉元まで出かかったが……なにせ高垣だからなぁ、と変に納得する気持ちが勝ってしまい口を閉じる。

 この場合は妙に俺への理解度が高い高垣だからこそ、ここで効果覿面だなんて発言が出来ると言えよう。


「それで、続きは?」


「佑の視点では、俺がお前に好意を抱いているように見えるってよ」


「笑えない冗談は止めて」


「うわ、急に真顔になるじゃんか。ところがどっこいマジもマジなんよこれ」


 そう返せば、今までの態度が嘘のように表情を消す高垣に俺はビビってしまった。


「まあ、今はそんな事は置いといて」


「……そうね」


 これ以上この手の会話はしたくなさそうに見えたので、その後の続きに話を切り替える。


「佑がさ。昔は朱音の事は好きって言ってた癖に、昔から好きな人なんて居ないし今じゃ恋なぞクソ食らえだって言いやがってよ」


「そう」


「昔さ、俺は佑に『お前達の幸せを見届ける』って言った事があるんだけどさ。高垣ならその幸せが何かを知っていると思うんだが……」


「ええ、教えてもらったから具体的なものは知っているわ」


「佑の奴、その幸せに繋がる道すら見つけてないんだってよ。だからこの幸せってやつは、今も昔も俺にしか見えてなかったって事実を嫌でも叩きつけられてな〜」


「浅見君がそう言ったのならば、その通りなのかもね」


「挙句の果てには、俺に朱音の事はどう思う?だってよ」


「あらあら」


「そんな風に聞かれたらさ……まるで朱音が俺に好意を抱いている様にも聞き取れるんだが、そこんところお前はどう思う?」


「それは朱音に聞きなさい」


「ははは。そりゃそうだ」


 ()()を突き付けられ次第に気持ちが沈む俺とは反対に、相槌を打つ高垣は心做しか楽しそうで。


「夢って、随分と輝いて見えるもんだな」


「それはそうでしょう。大事な成長過程をすっ飛ばしてしまいながらも強く願ってしまう理想の姿なのだし」


「そうだな、確かにそうだ」


 ああ、そうだ。

 俺は……高垣の言う過程を俺如きの尺度で勝手に想像し、そして勝手に夢へと昇華させていた。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだと宣って。


「あーあ。一番最初の夢はガキながらに幼馴染みカップルという関係性にひどく憧れちゃって、そっから幼馴染みという存在が欲しくなって。でもそれは叶わないものだと気付かされてさー」


「……」


「そんで小学校で彼奴等を見つけた時にさ。俺はなんとか親友となって、この二人の初恋を成就させて最後にはそういった関係性にしたいんだって強く、それはもう強く願った」


「……」


 そういえばここら辺の話は、高垣には既に伝えていたな。


「でもそれってさ、最初から彼奴等を……俺の身勝手な夢の為の都合の良い玩具にしてるのと同義だった、身勝手な理想を押し付けているに過ぎなかった」


「そうね」


 上半身を後ろに少し倒して、海から茜色に染まりかけていた空を見上げた。


「……そんで今日だ。もう、逃げに回ることは出来なくなった」


 今日でハッキリしてしまった、今の佑の恋愛観。

 そして今まで逃げに逃げた朱音の……向けられる恋の視線の先。

 それらを直視したく無いが故に、彼奴等なら何て言うかを予想出来るからこそ、今の今まで正面切っての恋バナを避け理想に逃げた。


 全部が全部、茶番に過ぎなかった。

 只管に憧れだけを見続けて、意味の無い行いを数多く熟した気になって、勝手にあれこれ悩んでいるだけだった。

 ……当人の想いの一切を無視して。


「はははー。彼奴等と出会った時点からコレなんだ。もう胸張って親友とすら言えんなぁ」


「ソレについては慰める気はないわ」


「ただの独り言だからそんなん期待してねぇよ」


「そう」


 今、頭の中には二人についてではなく、前に高垣から貰ったアドバイスについて。


 一つ、俺は大切なモノを見落としている。

 ―――コレはきっと、当人の想い考えを無視して、自分にとっての理想を基に都合良く動かそうとする事の愚かしさ、或いは醜さを。

 二つ、自分を客観的に見なさい。

 ―――見れば自慢の玩具(佑と朱音)で遊び倒す子供()の姿。


 思えば今までの高垣は、俺の作戦内容を聞きアドバイスはくれるものの佑と朱音の恋路についてどうのと触れることは無かった。

 恋愛についての考えを話したあの日も、彼奴等のでは無く、全部が俺に言い聞かせるようなもので。

 どれもこれも、夢に逃げ続け知らんぷりをかます俺に向けてのメッセージだ。


 全く……たかだか数ヶ月の付き合いの癖して、随分と俺を見てくれているものだ。

 ああ、だからなのだろうか……佑が言った様に本当に俺は―――


「人の顔を凝視しないでくれるかしら?」


「ああ悪い悪い」


 自惚れてくれるなよ、俺。

 こんな自分が、高垣の事を好きになる?―――ははは、身の程知らずとはこの事だろうな。


「こんな事に現を抜かしている暇は無いんだよな」


「何よ急に」


「んー、俺なりの覚悟だよ、覚悟」


「現実との乖離を目にして頭でも狂ったと思ったわ」


「失礼過ぎるなお前は」


 場の雰囲気を気にすること無く毒舌をかます高垣を見て、俺はまた別の覚悟を決めた。


「なあ高垣」


「何かしら」


「聞いてほしい事がある」


 名を呼びかけてからこの場から立ち上がり、高垣の正面に移動し腰を落とす。

 今から話す内容の、俺なりの真剣さが伝わったのだろう。

 茶化そうとした雰囲気を引っ込ませ、俺の目をじっと見つめる。


 早速伝えようとして、けれど心臓が高鳴る程の緊張が襲ってくる。

 一度深呼吸をして、少しばかり緊張が解れたタイミングで口を開く。


「俺はな? ここまで来といてアレだが、二人の成就を……諦めるつもりは無い」


「……」


「今までは夢だなんだと綺麗事に祭り上げて、自分の行いが正しいものだと信じ込んできた」


「……」


「でもそれは違った。俺さ、心の底から佑と朱音の二人が大好きなんだ。俺みたいなヤツと友達になってくれた彼奴等がさ」


「……」


「だからそんな二人が……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。たった少しでもそれを想像すると、どうしてもイライラが止まらなくて、腸が煮えくり返るんだよ―――それが、例え俺であってもだ」


 気がつけば、俺は両手を組み力一杯握り締めていた。


「だから、多分だけど近い内に俺は……朱音と面と向かって話をして、問答無用で振る」


「……そう」


「朱音の今の恋を断ち切って、その矢印が佑に向くよう努力する。そんでもって佑の恋愛観を正しいものへと変えさせる」


「言うは易しだけれど、人の価値観は人生の積み重ねで自然と獲得するものであって、他人がおいそれと変えられるものでは無いわ」


「そうしなければ、出来なければ俺は一生後悔する」


「それに他の恋を経験するという道も、それぞれの女性観、男性観を培う大事な機会だと私は思うけれど」


「……あー、ごめん。その話はまた今度しようか」


「……逃げたわね。まあいいわ。どうしてもと言うのならばアンタの好きにしなさい。私はそれを見届ける事にするわ」


「ありがとう。過程はきっと醜いだろうが……きっと、美しいものにしてみせてやんよ」


「期待しているわ」


「おう」


 ここで会話が切れて、何処か穏やかにも感じられる雰囲気が漂い始めた。

 数分ほどして高垣の持つスマホが震え、この別れの知らせが訪れた。


「……迎えが着いたみたいだから、私はもう行くわ」 


「おーう。じゃあな」


「……ええ。所で新藤君」


「おん?」


「このまま黄昏ていたい気持ちも分かるけれど、潮風に当たり過ぎると風邪引くわよ」


「……うーい」


「……本当に分かったのかしらね。まあいいわ、それじゃあまた明日」


「……おう、また明日な」


 振り返り様に手を振る高垣を見送る。


「あ、そうだ。おーい高垣ぃ!」


 ゆっくりと遠ざかるその背を見て、言いたい事が出来たので呼び止めた。

 すると高垣は顔だけを此方に、意識を向けてきた。


「俺ばっかり見るんじゃなくて、クラスの奴らとかも見てやれよ! 俺より良い奴なんざ沢山居るんだからな!」


 そう言葉を投げかければ、何か気になる事があったのか高垣は身体事振り返る。

 そして俺の顔をじっと見て、遠目でハッキリとはしなかったがふっと鼻で笑われた気がした。


「馬鹿ね、今はアンタで手一杯よ!」


「……ははは! だったら尚更頑張らなきゃな!」


 中々に面白い返答に俺は馬鹿みたいに笑ってしまった。

 そんな俺を見て呆れた様子の高垣は、今度こそその歩みを止めることはしなかった。


 そうして本当に一人になった所で、俺は元の位置に座り直した。

 そしてガクリと頭だけを下ろして、視線の先に映る砂を眺める。


「訳分かんねぇ……恋なんて」

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― 新着の感想 ―
やっぱり新藤君はほぼ最初から佑や朱音の気持ちを分かるんだね……例えそれは自分勝手の妄想でも否定しない、むしろその理想像を絶対に叶えたい、まさしく新藤君っぽい答えだ。 傲慢だが、その行動の中に二人を幸せ…
この期に及んでヒロは自分たちが世間一般で幼馴染と呼ばれる関係だと気づかないのか…。ヒロの自分に幼馴染はいないという前提が覆された時の反応が楽しみ過ぎるw 頑張れ佑、朱音!
 例えそれが歪んでいて自分勝手な妄想の果ての未来像だったとしても、そこに生きる希望を見出してしまった以上それを否定したり諦めたりすることは出来ないか。  当事者の好意の向く先が己だったとしても受け入れ…
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