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41話(4)

『わたし、意外と独占欲強いんだよ。それでもいいの?』


 ―――②十分知ってるよ。それでも君が……


 現在、最初のターゲットたる体育会系女子との交流を深め主人公から告白し、返された返事へ二番の選択をし無事攻略となりエンドロールが流れ始めた。

 そして少しの時間が経ってエンドロールも終了し、クリア特典として二人のその後の日常を描いた一枚の絵と少しの会話が表示された。


 絵には幸せを噛み締めた表情の主人公とヒロインの二人と、それを祝う幼馴染み女子と親友ポジの男子。

 少しの間会話が流れ、そろそろ終わるかな、と思った頃。


『俺、○○ちゃんに告白するぜ。上手く行けばWデートとか……』


『勿論。お前達なら絶対上手くいく筈だよ』


「おい、この自称親友のやつ殺せないのか」


「言い方怖いわ。このキャラに親でも殺されたか」


「よっぴーもだ!相手はお前の幼馴染みだぞ!いいのかそれで!これはNTRじゃないか!?」


「ここまで来たんだから普通に応援しようよ」


 何と、親友たるキャラが主人公の幼馴染みへ告白すると言うでは無いか。今回は攻略対象が違った為に仕方ないのだが、取り敢えず体育会系女子への好感度を上げていく最中、幼馴染みへの関係が冷めていかないよう意見を出していったのだがなんだこの展開は。主人公も気乗りだし何時の間に幼馴染と親友の関係が深まっていたというのだろうか。

 俺、こんなの認めません!!


「今回の様に選択によっては親友ポジのやつが別のヒロインへと付き合うパターンもあれば無いパターンもあるんだ。仕方無いだろ」


「次いこう。次はクール系だ」


「なんか必死だね」


 こんな予想だにしない展開など興味も失せるわ。こんなやつ、親友と名乗るのは烏滸がましいぞ。


「クール系か〜。そういえばピッタリなやつが同じクラスに居るな」


「高垣さんでしょ?クールって言葉にピッタリだね」


「ほい、喜浩。お前の番な」


「ん?何で俺にコントローラー渡すんだよ」


 スタート画面へと戻り、また最初からへカーソルを合わしてプロローグが流れる中、蔵元の発言により宮本君もそれに同調する。そして何故か蔵元は横に座る俺へとコントローラーを渡し、『宜しく』と言って座る位置を変え始めた。


「いや、高垣と仲良いじゃんお前。高垣を攻略するような感じでやってみろよ」


「いや、クラスメイトに当て嵌めてゲームするの恥ずかしくないか。RPGとかで女キャラを好きやつの名前にする感じのやつ」


「あ〜小学生の時にこっそりそんな事してたなぁ」


「海音もそんな時期あったんだな」


「妄想はDK(男子高校生)の特権だろうが!」


「仕方無ねぇな」


 流石にこのキャラクターを高垣と見做してプレイするのは憚れた為に反論したのだが、俺の例えに何やら思い当たる過去があったのか宮本君もほんのり頬を赤く染め恥ずかしそうにそう返してきた。そして蔵元の一喝により俺は渋りながらも最初の会話を流し始める。


「それだったらさっきの子は……前田さん?とかかな?」


「哲は前田と思って攻略してたのか。そういえば同じ体育委員だったな」


「ばっ馬鹿野郎!そんな事ねぇし〜」


「「……はっは〜ん?」」


「はよ始めろ」


 宮本君のその言葉と俺の返事により先程まで恥ずかしい言葉とは裏腹に自信に塗れ威厳な顔つきをしていた蔵元は急に狼狽え始める。その姿を見て俺は兎も角、宮本君も同じ事を思ったのか同時にニヤニヤとしながら蔵元を見る。そんな俺達を見返した蔵元は焦りを見せまいとゲームの催促をしてくる。


 仕方無い。郷に入らば郷に従え。蔵元がそうしたのだから俺も一丁同じようにやってみますか。


『……○○よ。よろしく』


 対象のクール系ヒロインは此方に全く興味の無さそうな表情でそう言葉にしていたが、そういえば俺と高垣の最初のコンタクトはこれとは違ったな、と思い出す。

 最初はえ、もしかしてこれ睨まれてんの?と思ったのが初対面時の感想だし、それがデフォだと分かればそんな気にならなくなっていったしな。


「くっくっく。そのクールな表情を崩してやるぜぇ」


「いいぞいいぞその調子だ喜浩ぉ」


「ふえぇ……二人の顔がキモいよぉ」


 それにしても、宮本君も俺達に対して随分と遠慮無く言うようになってきたな。仲が深まってきている証拠だろう。良きかなよきかな。


 ☆☆☆☆☆


『しつこいわ』『……仕方無いわね』『……ねぇ。私は貴方が―――』


「よっしゃクリア〜!ふん、高垣はチョロいな」


「お前もコッチ側に来たな」


「喜浩も哲に染まったね」


 クール系女子に狙いを決めて時間にして約一時間。

 二人にちょくちょく意見を貰いながらではあったが基本俺の選択を進め此処まで来ることが出来た。最初は此方を突き離す様な態度ばかりであったが幾度の交流を経て最初のプレイとは違って向こうからの告白により幕を閉じた。徐々に心を開く展開はちょっとキュンとしたものだ。

 そしてお助けポジは一切使わなかった。それに最初のプレイで流れは掴んだしな。


「んじゃ次は海音だな。ほら喜浩、コントローラー渡してくれ」


「僕は誰にしようかな〜」


 感慨に耽っていた俺へ蔵元からコントローラーを渡すよう言われたので素直に従い宮本君へ渡す。それを手にとって目を蘭々と輝かせどれにしようかな、と楽しそうに悩んでいる。


「それじゃ僕は幼馴染みの子を攻略してみるよ」


「ずっと俺のタ―――」


「僕が攻略するんですぅ。喜浩の仇はうつから任せて!」


「うっす」


 俺がメインディッシュと決め込んでいた幼馴染みヒロインを、まさか宮本君が攻略しだすと言ったので焦ってしまったが、何と宮本君は先程の俺の豹変ぶりに対して思う所があったのか絶対に僕がやる、そう言いたそうな顔付きでそう言ってきた。

 いやまぁ死んでないけどね。


「フッフッフ。親友君には取らせない」


 今日の交流を経て宮本君も大概俺達に染まってきたな、とその様子を見て思った。次の登校日、きっとクラスメイトの諸君は宮本君を見てどんな反応をするだろうか。楽しみだ。


 ☆☆☆☆☆


 意外と目まぐるしい幼馴染みヒロインとの展開を皆であーだこーだ言いながら進み終えることが出来た。

 その中で面白いと思ったのが、俺が嫌っていた親友ポジの動き。二人の仲をより進展させようと主人公と幼馴染みを煽るようなまさかの行動に俺は目を開かせた。わざと主人公の前で幼馴染みに言い寄っているような描写を見てなんだこいつと思っていたがその効果により主人公の選択の枠に嫉妬心を芽生えさせたりなどまるで悪役ポジに成り果てていたが、最後の告白後の場面で今までの行動の理由を切なそうに独白した時はブラボーそれでこそ親友だと内心拍手を送った。

 その展開の最中、今まで違う濃密なストーリーに『なんでこんな難しいの!?』と驚いた海音を見て『一番主人公に近しいヒロインだから』と蔵元は答えていたのが印象的だった。


 その後も清楚系、ギャル系、文学系など様々なシチュエーションを終え、蔵元が欠伸をしたことによって休憩が始まったのだが、俺含めて二人の顔も眠たそうな顔をしており何となく今日はこれで終いにしよう、そんな雰囲気が流れた。


「ふあぁ……ヤベぇ。眠くなってきたな。やっぱ遅くまでずっとモニター見てると眼がシパシパするな」


「徹夜はやめてもう寝る?」


「そうだな。布団用意してるから準備しようぜ」


「オッケー」


 現在深夜四時。気分転換に夜風を浴びようと騒音防止の為に閉めていた窓へ近づき外を見れば既に家屋の電灯は殆ど付いておらず道路の電灯がよ一際目立ち、灯火に群がる昆虫が静かな雰囲気とは反対に忙しなく動いている。


 それをほんの少し眺めてから、寝支度を整える始めた二人の元へ戻る。布団を敷き、部屋の灯りを消してから今まで着けていた冷房も止め、変わりに先程の窓を網戸にして風通しを良くする。

 今は六月なので毛布も要らず三人して雑魚寝の形で宮本君を中心に左右に俺と蔵元で互いの感覚を少し空けて体を寝かせた。スマホも枕元に雑に置いてセッティング終了。


「……そういえばさ、二人は好きな人っている?」


「恋バナか?寝れなくなっちまうだろ」


「今日のゲームをしてて思ったんだぁ。皆は誰が気になってるのかなって」


「海音は居るのか?」


「勿論。教えないけどね〜」


 普段の快活な喋りではなく、ふにゃふにゃと眠たそうな声でそんな会話を切り出した宮本君に、俺は目を半開きにして宮本君を見る。反対側に体を寝かせていた蔵元は少し体を起こしていたが恋バナと思って興奮してるのだろうか。


「俺は……今は部活が優先かな。楽しいし」


「まぁ蔵元は前―――」


「ば、ちげえって」


「川先生だもんな」


「教師と生徒の禁断の恋……って男同士やないかーい。おちょくってんのかよっぴー」


「よっぴーやめろ」


「よっぴー……可愛い呼び方だね」


「最初ダサいって言わなかったか海音は」


「知らなぁい」


「そういえば前田先生結婚してるの知ってたか?」


「「そのぐらい知ってるよ。指輪してんじゃん」」


 先程の蔵元の反応を思い出してその名前を言おうとしたのだが本人に遮られ変わりに別の名前を出す。頭の回らない状態でよくノリツッコミが出来るものだ。そして俺の指摘を食らった宮本君はやはり伸びた声で俺とは反対の方へ寝返りをうって知らぬ存ぜぬの態度を取った。


 宮本君の背中を見てから目を閉じて、すぐに意識が閉じそうになる頃。そういえば、何か忘れているような気が……。


「喜浩は春辺さんといつくっつくんだよ」


「あ〜?何馬鹿な事言ってんの」


「春辺さんの反応見たらわかるっての。んで?どうよ」


「あ、僕も気になるぅ」


 もはや思考出来る状態ではないままに蔵元へそう返す。


「馬鹿だなお前らは。どう見てもあいつには……俺じゃ……」


 はっきりと、それは見当違いな事なのだと、朱音には佑が居るのだと、そう蔵元に言葉を投げようとして―――




「あれ?喜浩寝ちゃった?」


「何言おうとしてたのかめっちゃ気になるんだけど」


「……ねぇ」


「どした?」


「喜浩のスマホ、何か画面光ってるけど」


「光ってんな。メッセージじゃね?こんな遅くに誰だ?」


「ちょっと誰なのかだけ覗いてみる?今映ってるメッセージだけ」


「おうよ」


「……ん?高垣さん??」


「……え、やば。なんか今日って書いてね?」

(補足)高垣さんとの予定は二人と遊んですっかり忘れてたけど服は一応準備してます。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  そらそうよ。  バレバレだよ。  気付いてないの本人ばかりなり、ってやつだよ。 [一言]  高垣さんも色々怪しい‥‥‥。  ダブルヒロインは面白いね。
[一言] やっぱみんな気づいてんのね
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