12話
図書室での勉強会から数日後。休日の時間も多少使いながら中間テストに突入した。そして各授業でのテスト返却も終え、今は順位の載った個人表配布中のHR。
返却期間中、テストの点数を見た生徒の反応は多種多様だった。目立つ教壇の前でグッと小さくガッツポーズする男子や思ったより点数が低かったであろう肩を落とす女子だったり。毎度思うが感情が表に出やすい年頃であるため、周りもその反応を見てどの生徒がどの教科に強いのか何となく分かるものだろう。
決して悪趣味な人間観察といったものでは無い。
各テスト返却時の満足気な顔をしていた親友二人は好感触といった模様で結構自信有り気だったので、後で俺に自慢しながら順位結果を教えてくれるだろう。二人の結果をまだ見ていないが個人の感覚としては二人よりはまぁまぁ上かな?といった所。
今回は佑が『最後に点数、順位を見せあおう』と提案して来たので未だ三人ともがどの位点数を取れたか判っていない。
担任の前川先生の締めの言葉により、早速生徒達は席を離れ友達の元へと順位比べを行っている。そして聞こえる何かしらの賭けを行っていた者達の歓声と悲鳴の声。
そんな光景を流し目で見ていたらやはり、二人は嬉しそうな顔で此方へ近付き俺の真横に移動してきた。
「まぁまぁ良かったよ。ほら」
佑が我先にと順位表を見せてくれた。五科目テストの80点前後の数字と、目玉の学年順位には、180人中『32位』と、努力の成果が実っていた。
「おぉ結構良いんじゃないか?」
「うわ、たすくんに越されちゃった」
次に朱音が順番表を。こちらはバランスの良い佑とは違い高低の差がある点数に、学年順位には180人中『48位』。
「数学や理科とか出来てればもっと上に行けたかもな」
「昔から朱音は理系苦手だもんね」
「そうなんだよね〜。中々覚えきれなくて」
「俺は23位。褒め称えよ」
「「おー」」
二人より順位が上である事に安心出来たため、俺も順位を見せる。後出しでやり方が卑怯であるが教えた立場で二人より下だったら恥ずかし過ぎて死ねる。
まぁ今回は中間。期末テストでは今回の範囲含めて幅広い問題が出るのでそこからが一学期の実力勝負になるだろう。
「そうだ。詩織ちゃんも呼んでみよ」
『お〜い詩織ちゃ〜ん』、と高垣の方へ手招きする朱音に呼ばれた事に気付いた高垣。ふう、と一息ついて表を片手に歩いてきた。
「はい、どうぞ」
「「「きゅ……9位」」」
そこに映るのは180人中『9位』。思わず三人して呆然としてしまった。
「まだ中間なんだから、こんなもんでしょ」
「そ、そうっすねー」
凜とした態度の高垣に俺は気のない返事が出るのみ。やはり見た目と相まって高垣は勉強が出来る女子だった。
「ま、まぁ高垣は頭良さそうな感じはしてたけど、佑と朱音は頑張ったな!!」
―――いきなりだが、ここでテスト期間中考えた『二人は勉強も出来るのだ作戦』サポート開始
態と二人の名前の所から周囲に聞かれるよう声を大きくすることによって、周りの生徒にん?と反応させる。するとどうなるだろうか。
「え〜浅見君32位!?凄いよ〜!」
「春辺さん俺より順位良いじゃん!くぅ〜っもっと頑張らないと!」
「高垣さん9位!?今度勉強教えて〜!」
普段は二人に遠慮しているのか積極的に話し掛けたりしないクラスメイト達だが、今はこれ幸いといった顔をして二人に話し掛けている。あと高垣は巻添えにしてしまってすまんな。そんな睨まないでおくれ……。
まぁそれは置いといて、恐らく、きっとその内誰かがこう言うだろう。
『二人で勉強教えあってたりするんでしょ?羨ましいなぁ』
二人が幼馴染みであるというのは周りにとっても共通の認識。そしてぱっとしない俺は二人の親友orおまけ扱いの筈の為に眼中に無いだろう。
そして恋に敏感な女子達は二人に羨望の眼差しを向ける。パーフェクトだ。
「二人で勉強教えあってたりするんでしょ?羨ましいなぁ」
キタコレ!!一言一句違わずじゃないか。凄いぞ俺……いや待て、俺の考えは女子寄りだった……?
「いやいやヒロくんに教えて貰ったの〜」
「俺も。いつもヒロには助かってるんだ」
変な思考に移っていた俺に朱莉と佑からの突然のキラーパス。
いや、教えたのは確かに俺だが今ここで注目したい訳では無いんだ!
「「「へ〜意外だね」」」
何だお前ら。自分で言うのも何だが興味無さ過ぎだろう!そして皆して息合い過ぎぃ!
内心そうツッコんでいた俺の肩に、ちょんちょん、と小さい刺激。方向からして前の席からなので蔵元だ。
どうしたんだろうか、そう思い顔を向けた。
何故かキマリ顔を作っている坊主頭の蔵元と、今話題沸騰中の順位表。
そこには、『5位』と載っていた。
―――お前、面白いな。
元々成績が良いのか聞いていなかったが、恐らくそれ相応の努力はしたのだろう。その順位は話題になるはずなのに俺だけに見えるような形で提示している為に周りの生徒達の興味は引き続き佑と朱音、あと高垣に集中している。
そんな不憫さに憐れみの感情を持ってしまった俺は、蔵元の肩にそっと手を寄せた。
☆☆☆☆☆☆
ワイワイキャッキャといったやり取りが終わって解散し、今日から部活が始まるとの事で佑と朱音は部活動へ。高垣も二人を見送った後に自分の席へ戻り鞄を取って挨拶を済ませ教室を出ていく。そして蔵元も『やべぇ部活ぅ!』と慌てて出ていった。
俺も二人を待つ為に何処かで時間潰しを、と思い席を立った時、ふと隣の席で未だ順位表を見ている眼鏡女子の順位が見え、そして絶句した。
180人中『1位』
どうやら、俺の席の周りはレベルの高い生徒が多いようだ。
※思い付きと勢いで書いているため、今後話の内容、矛盾点等を少し訂正する場合もありますが、流れは変えないようにします。申し訳ありません。
ブックマーク、評価、いいね、感想、誤字報告ありがとうございます。
(追記)誤字脱字多くて本当にすいません。毎回助かっております。




