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二度と聖女は致しません  作者: 天冨 七緒
勝利の女神編
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 翌日。

 目覚めると皆動き出していた。


「ヴィル、おはようございます。皆さん早いんですね」


「ロッティ、おはよう。今日はトーナメント表が張り出される。皆、一早く対戦相手を確認したくて待ちきれないんだろう」


『おいっ、トーナメント表が張り出されたらしい』


ヴィルと会話していると、大声で教えてくれた人がいた。

彼の言葉で周囲の動きが変わる。


「俺達も確認に行くか」


「はい」


 トーナメント表の前にはかなりの人だかり。

 出場者だけでなく見物人も確認している。

 周囲が対戦相手を確認し興奮するも、私にはピンとこない。

 名前だけでは誰が強敵なのか判断付かないので、隣のヴィルを窺う。


「ヴィル?」


「……油断は出来ないが、なんとかなるだろう」


 笑みを見せるヴィル。

 彼の様子から、対戦相手が強敵なのか判断出来なかった。

 掲示板の前は入れ替わり人が集まるので、私達は場所を変える。

 移動中、出場者の名前と数字が記入された板が掲げられていた。


「あれは……」


「ん? あぁ、あれは誰が優勝するのか賭けているんだ」


「賭け……」


 沢山の名前が書かれている中、ヴィルの名前を発見。

 ヴィルの実力は知らないが、名前が挙がるということはこの会場でヴィルは有名人らしい。


「やってみたいのか?」


「えっ?」


 やってみるとは何のことだ?


「優勝者を予想して賭けてみるか?」


「いえ。賭け事は致しません」


「残念だな。誰が優勝するのか、ロッティの答えに興味があったのに」


「私は出場者の名前を確認してもよくわかりません。『誰が』と言うなら、ヴィルには負けてほしくないし怪我もしてほしくないです」


 聖女としての教育を受けていた時間が長いせいか、賭け事には抵抗があるし怪我をする大会であれば尚更悪い事態は起きてほしくないと思ってしまう。

 

「そうか、なら怪我をしないよう祈っていてくれ」


 祈っていてくれ……

 彼にとっては何気ない言葉なのかもしれない。

 その言葉は私には重い。 

 それで彼が怪我でもしたら……


「そうだ、近々前夜祭が開催される。パートナーを頼めるか?」


「あっはい構いません。前夜祭……あっ、もしかして服の指定などあるんですか? 私、準備が無く……」


「問題ない、俺の方で準備する」


「それなら……わかりました」


「俺は色々行くところがある。ロッティは自由に回るといい」


「はい」


 一人で見ていたのだが、迷子になりそうだったので分かるうちにテントを目指した。


「前夜祭……」


「ロッティ、前夜祭がどうしたの?」


「エディ。ヴィルにパートナーを頼まれたの……パーティーってどんな雰囲気なのかなって」


「あぁ、前夜祭ねぇ。出場者の決起集会のような場で、そこまで本格的なパーティーじゃないよ。出場者同士の挨拶や、美味しい物を振る舞い楽しむ場だって」


「挨拶に食事……」


「前夜祭は騎士の応援。どちらかというより後夜祭の方が大事かな。出場者であれば参加可能だけど、負けた出場者が後夜祭に参加すること少なく自然と人数も絞られるかな」


「そうなんですね」


「あっ、船に忘れ物取りに行くところだったんだ」


「私も手伝います」


「いや、船に取りに行ったことを皆に伝えといて」


「分かりました」


 エディは走って行ってしまった。


『これ、私から……貰ってくれる?』


『いいのか? ありがとう。君の為に優勝するよ』


『嬉しい。応援しているわ、頑張ってね……チュッ』


 女性が男性に贈り物をして優勝を誓う場に遭遇。

 

「そうだ、忘れてた。ヴィルにサッシュを贈るって約束していたんだっけ……」


 この広場でサッシュを販売している店を何店舗か見た記憶がある。

 購入することは出来るがどこで入手したのか判別できてしまうし、同じ物を身に着けている騎士と遭遇してしまうと気まずいものがある。

 

「どうしようかな……」


「ロッティ、どうした?」


「あ、ターナム。エディが忘れ物を取りに船に戻ったの」


「そうか、分かった……他にも何かありそうだな」


 私は悩み事が表情にでてしまっているのだろうか?


「ヴィルにサッシュを贈る約束したんだけど、どこか良い店ってないかなって」


「ヴィルにサッシュをか?」


「はい。私のサッシュで女性避けしたいみたいで」


「ふぅん、そうか……俺、いい店知ってる。ここではなく、街の方だが案内しようか?」


 街の方なら他の騎士と同じになる確率は低いだろう。


「本当? だけど、ターナムも忙しいんじゃ?」


「いや、今日の俺は暇だ」


「そうなの……だけと折角の空いた時間にいいの?」


「問題ない。それに俺も街に少し用があるんだ」


「そうなの? なら……ご一緒してもいいですか?」


「あぁ」


 準備をしてターナムと一緒に街へ向かう。


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― 新着の感想 ―
男がやたら構ってくるけど、拠点が確保出来た時点で「今までありがとうございました。それではごきげんよう」とか言って主人公がさっと捨てたら惚れる 現状は、手籠めにされちゃいそうだなあ
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