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学園では

 ダンスパーティーで婚約破棄された私を皆さんはどう思われたのでしょうか?

 当日は婚約破棄されたあと、誰とも会話をすることなく帰ってきましたし、昨日学園を休んでしまったので様子がわかりません。クラスメートの反応は気になりますが、ここで怖気ついてはダメですね。

 私は一つ深呼吸して教室のドアを開けました。


「おはよう。フローラ」


 私を最初に見つけたディアナ・マクレーン伯爵令嬢が声をかけてくれました。彼女は一番の友人です。すぐに私の席まで駆け寄ってきてくれました。すると、他の令嬢達や子息達まで私の周りに集まってしまいました。軽い見世物状態です。ダンスパーティーであれだけ注目を集めていましたから、皆さん興味津々なのでしょう。


「大丈夫だった? 昨日休んだから心配してたのよ。今日もお休みだったら、お邸に伺おうかと思っていたところよ」


「大丈夫よ。昨日はお父様が休みなさいって一言に素直に従うことにしたの。でも、ごめんなさい。心配かけてしまって」


「ううん。そんなの気にしなくていいわよ。それよりもショックを受けてるとかはない? 落ち込んでるとか」


「それはないですわ。正式に婚約破棄ができて安心しているところですから」


 私は両家揃って話し合いができたこと、お互いそれを了承したことを皆さんに話しました。周りを見ると安堵の表情が見えます。皆さん、納得してくださっているよう。よかったわ。

 両家のプライベートなことに表立って異を唱えることはできませんけれど、あとでいろいろと陰で言われるかもしれません。


「それならよかったわ。フローラの悲しい顔を見るのが一番つらいから」


「ディアナ、ありがとう。私のことを気遣ってくれて。私としてはスッキリとした気持ちなのよ。だって、好きな人と結婚した方が幸せになれると思うもの。だから、エドガー様とリリア様のことは本当に良かったと思っているの」


 おおっ!ってどよめきが起きました。感嘆のため息もそこここで漏れているような気もします。


「フローラ、あなたって……」


 目を瞠ったディアナが私を驚いたように見つめています。


「フローラって、心が広いのね」


「自分は嫌な思いをしたのに、相手を思いやれるなんて」


「エドガーには、もったいないよな。フローラ嬢は。婚約破棄してよかったよ」


「俺もずっと、思ってた」


「わたしもよ」


 堰を切ったように次々に意見が飛び交います。皆さん、思うところはあったのね。

 学園内での行動を見れば良好な関係とはいえませんでしたし、婚約者の私には目もくれず、リリア様といつも一緒でしたものね。


「忘れないで。わたしたちはフローラが大好きだから、いつだってあなたの味方よ」


 ディアナが私の手を取って力強い瞳を向けると大きく頷いてくれました。周りにいる皆さんも笑顔で頷いています。私の気持ちを優しく思いやって下さる方たちばかり。

 私はとても素晴らしいクラスメートに恵まれているようです。


「それと例の二人だけど、一週間の停学ですって。しばらく顔を見なくてすみそうよ」


 ディアナが教えてくれました。


「停学?」


 やっぱりダンスパーティーでの件が原因かしら? 一週間って、けっこう重いような。


「ダンスパーティーって、学園主催でしょ。大事な行事が中断されてぶち壊されたのだもの。学園長、相当怒ってたらしいわよ」


 どこからの情報かしら?


「わたしとしては停学よりも退学にしてほしかったわ」


 過激な表現は控えてほしいのだけれども、やっぱり私のことを思ってくれてるからなのよね。


「ディアナ、それは言い過ぎでは……」


 私よりも彼女の方が怒っているような。


「そのくらいの大罪を犯したってことよ。楽しみにしていたパーティーが台無しだったんだから」


「退学、賛成。ホント、あれは迷惑だった」


「それが妥当よね。初めて出席した妹もガッカリしちゃってて、かわいそうだったわ」


 周りから次々に賛同の声がします。皆さん、憤慨なさっているよう。

 私はすぐに帰ってきたのであの後どんな様子だったのかわかりませんけれど、怒りの矛先が二人に向けられてしまいました。

 そうよね。

 年に一度の学園行事。私達は最後のダンスパーティーだったんですものね。

 ある意味、忘れられない一日になってしまいました。


 

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