アンドロメダ銀河 その12
ようやく、話が動き始めました。
作者も書いてて、話が動かないとフラストレーション溜まりますから。
俺と皇帝、ここでは一言も発していないのだが、早くもテレパシーで腹の探りあいを始めていた。
お互いが強力なテレパスのため、表層意識しか探れないのだが、それでも探索のテレパシー波を送って相手の隙をうかがう。
さっきは皇帝のほうが先手を打って、意識的に強いテレパシーを送った。
じゃあ、次はこちらの番だな。
〈強力なテレパシーの歓迎、いたみいる。では、こちらも意識的に強いテレパシーで返答しようではないか〉
俺達の仲間は、時折、俺のテレパシー強化訓練に付き合って貰っているから慣れているだろうが、通常なら、このクラスの強さのテレパシー受けたら頭痛がするはず。
案の定、皇帝除く御前会議の面々は、頭痛に耐えかねて立っていられない奴や、皇帝より強いテレパシーにショックを受けてる奴、脂汗流してる奴やら様々。
さすがに皇帝陛下は、顔をしかめるくらいで済ませている。
でも、ショックは隠し切れないぜ。
自分より強いテレパスなどいないと思ってたんだよね。
表層意識の壁が一瞬だけ崩れた時に、気弱な思考を確認したんだよ。
テレパシーのやりとりでは勝てないと認識したのか、ようやく皇帝陛下が口を開く。
「失礼した、遠き銀河系からの和平の訪問者よ。我々も、隣の銀河系との和平交渉は、望むところである。これが2つの銀河の友情と友好の架け橋になると期待するものだ」
ふふふ、うまくリカバーしたと思ってるな、皇帝陛下。
では、俺からも一言。
「銀河系を代表して、アンドロメダ銀河帝国皇帝陛下にご挨拶申し上げる次第です。和平交渉と通商条約、そして相互通行と、災害時の相互即時救援派遣条約の締結。そして、でき得るならば、アンドロメダ銀河の宇宙航行鎖国状況の改善策を話し合いたいと考えています」
はい、さっそくですが、ぶっちゃけました。
ダラダラと腹の探りあいだけの会談や会議なんか不要なんだよ。
ちゃちゃっと行こうぜ、皇帝陛下!
「わ、我が方への内政干渉では有りませぬか、銀河系からの使者殿?」
大統領か外務大臣か知らんが、木っ端役人の発言など耳にも入れない。
発言者の顔を済まし顔で見つめてやると、俺がテレパスだと改めて思い出したのか、あわてて顔と思考をそらす。
「アンドロメダ銀河が帝国体制で良かったですよ、皇帝陛下。貴方の一言で、銀河系との和平も相互協力も、このアンドロメダ銀河に住む一般市民達の宇宙へのカギも、全て開かれるのですからね」
はい、発言は大人しいですが、完全に恫喝ですな、分かってますよ。
でも、最初から、このくらい発言しとかないと、あなた達は本気にならないじゃないか。
皇帝陛下以外の面々の意識を読んだら、かなりこちらを舐めてかかってるみたいだから、爆弾発言を続けましたよ。
「さて、そこでですね。こちらからは典型的な大災害である「宇宙震」に遭った星の救助模様を録画したものをお見せしましょう。まずは、そこからです」
銀河系だけじゃなく、大小マゼラン雲でも遭遇した宇宙震災害。
一個の星系が巻き込まれた場合の甚大なる被害模様と、それを迅速に救出する宇宙救助隊組織。
とりあえず、30分にまとめた映像だが、中央星系にあぐらかいて、その他の星域に関心すら向けていなかった、ここにいるバカどもには相当な衝撃だったろうな。
「はい、この映像チップはコピーして、そちらにお渡しします。そして、この映像で使用されている災害救助用の小型艇、そして、さまざまな救助用ツールは全て設計図のコピーファイルをそちらへお渡しします。まずは、それが、こちらの誠意だとご理解ください」
え?
とか、こちらに設計図のファイルをくれるって?
とか、回りがざわめいている。
だんだんと、御前会議らしくなってきたじゃないか。
これくらい白熱しなきゃ、会議じゃないよ。
ワーワー、怒鳴り合うような騒がしさになってきたところで、さすがに皇帝陛下の一喝が入る。
「静まれ、皆のもの!銀河系からの使者殿が、我々にとてつもない贈り物をくれるというのだ。ありがたく、いただこうではないか。では、使者殿、これから会談と実務会議に入りたいのだが、よろしいか?」
「はい、皇帝陛下。ご決断の速さ、さすがは皇帝陛下と感心しております」
向こうにも面子ってものがある。
あまりに銀河系が上から目線だと、まとまるものも決裂する。
かと言って、交渉事は静かなる戦争。
上位に立つほうが主導権を握れるんだよ。
これにて御前会議は終了、しばらくしてから、和平交渉会談と、その他の事案の実務者会議となる。
俺達が控えの間で休憩していると、フロンティアから待望の連絡(*これについては後述します)
銀河系からの派遣メンバーを乗せて、アンドロメダ銀河に到着し、今現在、こちらへ向かって驀進中らしい。
ただし、完全ステルス状態で。
会談中に到着するか、それとも実務会談中になるか。
なんにせよ、もうすぐの到着だな。
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*通信手段が無いと先に書きながら、どうやってフロンティアからの連絡を受け取ったのか?
超小型搭載艇を十機ばかし、アンドロメダ銀河の縁に並べてました。
フロンティア本体が到着すると、その到着信号を受けて超小型艇が最高速度で跳んだわけです。
さすがにフロンティア本体は、アンドロメダ銀河内部では最高速は出せませんので、超小型搭載艇のほうが速いわけですね。




