最前線にて その2 うーむ、どこでビックリ箱開けましょうかね?
様々な検査・測定やっても、表面の岩塊しか採取できない小マゼラン雲の生命体達。
それは、中にいる人たちにとっても同じようなものだったりするのです。
さあ、根比べと騙し合いの、お時間です。
フロンティア(頭脳体)に防御フィールドは船体そのものをカバーする範囲のみの、最小限で展開するように言っておいて良かったぜ。
サンプル採取に、彼らがここまでこだわるとは思わなかったんでね〜。
停戦状態になったら、船内からテレパシーで語りかけてコンタクト始めようと思ってたんだが、妙な巨大隕石だと話題になり、調査が本格的になっちゃって、こちらとしても動けなくなってしまった。
まあ、彼らの科学力や技術力をステルス状態で隠蔽して観察してる超小型搭載艇からの報告では、とてもじゃないが、まともにフロンティア船団とやり合えるレベルじゃないとのこと。
船内にいても安心して回りを観察しながら、それでもタイミングを逃したのが悔しいな〜、と、コンタクトの機会を伺う。
「ええい!あの妙な小惑星の全体像は、まだ判明せんのか?!」
「総裁、ただ今、我が方だけではなく残りの2勢力とも協力して、3勢力の全知識、全技術をもって、あの謎の小惑星を分析中です!なにとぞ、今しばらくお待ちくださいませ!」
「そうは言うがな、補佐官よ。我が勢力は一番小さいが他の勢力より科学力も技術力も、頭ひとつ抜きん出ているのだぞ?その、我々の全科学力と技術の最先端装備を投入しても、表面の岩くらいしかサンプルが採取できないとは、どういうジョークなのか?もしかして、我々が知らない未知の勢力の秘匿兵器かも知れぬぞ?」
「いえ、それはないと思われますが。小惑星内部への分析装置投入が全く不可能なので、何とも調査が進まないのです。我々だけではなく、他の勢力も謎の小惑星の分析に全精力を注いでいる状況なのです」
「そうか。ああ、すまんが、大将軍殿と宰相殿へホットラインをつないでくれないか……つながった?すまんな。お久しぶりですな、大将軍殿、宰相殿」
『これは、お久しゅうございます、総裁殿、大将軍殿。ご用件は、今話題の、謎の小惑星ですかな?』
『うむ、久々であるな、総裁殿、宰相殿。あの小惑星について何か判明したかの?』
「いえ、それが何も進捗が無いとの報告を、今さっき受けたところです。さて、ホットラインを設定させていただいたのは、この後、どうするか?ということを話し合いたいからです。今は、あの小惑星の解析で大わらわですが、これが終了したら、また戦争状態に入りますが、よろしいでしょうかな?」
『総裁殿のお言葉に対するようですが。我が勢力は、このまま停戦状態が続けばと考えております。正直、戦場となる宙域へ送る艦船のエネルギーが、もったいないと民衆からの突き上げが激しくて……』
『うむ、宰相殿の発言に乗るようじゃが、我が方のエネルギー事情にしても同様じゃ。艦隊が大きければ大きいほど、動かすために必要なエネルギーが大きくなり、さらに本国のエネルギー事情は悪化してしまう。できるなら、終戦にしたいのが本音じゃよ……国民が黙ってないだろうから、これは公式発言とはしないで欲しいのじゃが』
「どちらも同じような国内事情がありますな。我々は勢力が一番小さいので、そこまで逼迫したエネルギー事情ではないのですが、先細りは見えていますから、この文明自体を保持していくためには、何としても今のエネルギー事情を改善する必要があるという事で我々は一致しているということですな」
『その通りです』
『うむ、その点では異議はない』
「では、今から期限を定めずに完全停戦状態への移行と、新しいエネルギー資源開発と探査を優先させる事を、ここで確認して、数時間後には公式発表といたしましょう。ご異存は?」
『異存はないぞ』
『こちらも異存はありません』
「では、公式発表の手順と行きましょう」
「おや?面白いことになってきたぞ。プロフェッサー、どう思う?」
「このチャンスで、こちらからテレパシーコンタクトをとるのが一番良いかと思われます。公式発表は明日ですから、発表がなされてから、すぐにテレパシー発信すればショックではあっても戦いにはならないと思われますね」
ふむふむ……
ただの小惑星一個が最前線に介入しただけで、ここまで政治が動くか。
省エネ戦争に、よほど嫌気がさしてたんだな、ここの3勢力。




