小マゼラン雲を覆う暗い闇。 戦争なんて反対だ〜!
新しい世界(銀河)にやってきたら早速、戦の影が……
主人公達の活躍の場が、また一つ。
はあ〜……
ため息もつきたくなるわ、こんな状況じゃぁ。
小マゼラン雲の現在の状況が分かってきたのは、超小型搭載艇の群れを放ってから数時間後のこと。
少しづつではあるが、現在の、この小銀河の様相が理解できてきた。
今現在、この小マゼラン雲の内部は、エネルギー争奪戦に明け暮れているようだ。
まあ、理解できないこともないな。
銀河そのものの規模が小さいので、アンドロメダ銀河(星雲)や、俺達の故郷の銀河系と比べると銀河の保有エネルギーも小さいから、生命の発達という点に関しては大きな銀河よりも過酷になりやすい。
しかし、エネルギー争奪戦で、戦争になるという選択はマズくないか?
俺は、ダイソン球のようなシステムで解決できないか?
と、ちょいと思考実験してみたが……
これは不可能なことに気がついた。
そもそも、エネルギーが足りなくて奪い合いしてるのに、とてつもない資源とエネルギーが必要になるダイソン球システムは選択できるはずがない。
ちなみに、太陽系で同じようなシステムを組むとすると……
実現可能である。
恒星間駆動は実現されていないが、それでも現在の太陽系人類の技術力と科学力で充分に実行できる計画である(*** この説明については、この回の終わりに注釈を設けます)
まあ、どうしたらいいか、まだまだ情報収集段階ではあるが。
しかし、せっかくのエネルギーを戦争に使う事は、もったいないし、大義名分に反するな。
(まあ、指導者達の頭に血が上ってしまい正常な判断が出来なくなっているか、または民衆の声に押されて止めたくてもヤメラレナイ状態になっているのだろうが)
フロンティアは、ただ今、どこの星区からも離れた宇宙空間を漂いながら、あちこちの星区や惑星、衛星にある軍事基地からの電波を拾い集めている搭載艇からの情報を一手に解析中である。
これから、どのような活動や手段をとるにせよ、まずは正確な状況と情報を得るのが先だからな。
情報戦で勝ったものが勝者となるという鉄則は、この小銀河でも有効だろう。
それから、また数日。戦いの趨勢と、現在の勢力図までが判明する。
弱肉強食とは言うが、やはり星系国家くらいだと星間国家に呑まれてしまうようで、ずいぶんと昔から続いている戦争で、小さい国家、弱い国家は無くなってしまっているようだ。
吸収合併みたいなものか。
一番大きな星間国家連合のような勢力と、星間国家の吸収合併と統制力で固くて強い中くらいの勢力、そして、一番勢力は小さいが、かなりの科学力と技術力で他の2つの勢力を圧倒している温厚的な勢力とがあるようだ。
3つの勢力の力関係と軍事上のバランスとが微妙に噛み合い、現在は小競り合いくらいに落ち着いているようだが、これは俺達が下手に介入するとバランスが崩れて一気に大戦争に突入しそうだな。
何か介入するきっかけが欲しいものではある。
他のクルーとの話し合いも何度と無くやっているが、フロンティアをはじめとする「安全第一、不干渉」組と「トラブルは大きくてもトラブル。解決してあげなきゃいけません」組に分かれてしまい、結論が出ない。
フロンティアは、
「いっそのこと、この船単体で全勢力を圧倒しますか?小マゼラン銀河帝国なら、トラブルも何も無くなってしまいますよ」
などと不穏なことを発言する。
やめてくれ、お前が本気になったら実現しそうで恐いわ。
まあ、俺自身が「小マゼラン銀河帝国初代皇帝」などになりたくないのも事実だがね。
権力なんざ、いらんよ。
自由に宇宙を飛びまわってるほうが性に合ってる。
フーム、どうしようかねぇ……
***注釈:
主人公は、この時点で太陽系に戻っておりません。
懐かしむことはあっても、今も主人公の記憶の中の太陽系文明は星間駆動は実現していない昔のままです。
ちなみに、この時点で地球を含む太陽系文明は少し前に星間駆動を実現させて大宇宙へと乗り出しています。
あ、まだジャンプサークル技術は考案されていません。
ですから、まだまだ太陽系人類は銀河の片隅の辺境民族のままです。




