銀河系を出る 新章、開始です!
新しい、主人公の活躍地が決定しました。
ほんわか、ほのぼの、でも銀河を超える超巨大スペースオペラを、お楽しみ下さい。
「フロンティア、今どのへんだ?」
「はい、マスター。銀河系を抜けて、もうすぐ小マゼラン雲に到着します」
俺達は銀河系の調査を終了し、ついに銀河系の外へ向かうこととなった。
最初の目的地は、大小あるマゼラン雲(いわゆる、マゼラン星雲ってやつ)である。
小さい星雲ですから、あまり見るところはないですよ。
などとフロンティアは言うのだが俺は地球人、なおかつ、いわゆる昔で言うところの『日本人』であるため、マゼラン雲というと絶対に外せないと思っている。
「帰ってきたよ、ヤ○トの諸君!」
まあ、これが分かる奴は、この船に一人もいないんだがな……
と思いつつも、俺の中の遺伝子が、この台詞を言えと強要する。
この分だと全ての調査を終えて地球に帰ってきた時には、
「地球か……何もかも皆、懐かしい……」
という台詞を呟くことになりそうだなとは予想できるが。
ま、そんなバカができるのも、星雲間航行の間は本当に何もない宇宙空間の移動だけで何もやることもなく何も見るべきものも無いから。
もう少しで小マゼラン雲に到着する。
小さいなら小さいなりに、それでも星雲(小さな銀河)なんだから何か調査すべきものは見つけられるだろう。
(頼むから機械生命体だけには出会いませんように!もう、星間帝国の皇帝に祭り上げられるの確定は勘弁して欲しい)
俺達の期待は目の前にある小さな銀河に向かって、ゆっくりと高まっていくのだった……
あ、ちなみに現在のフロンティアの直径は、もうすぐ20kmを超えようとしている。
復旧作業も順調に行われているようで、主砲は無理ですが、それ以外は再現可能な状態に、もうすぐなりますね……
と、フロンティア(頭脳体)が宣言した。
蛇足だが補助艦艇の数は正規の10%まで回復したそうだ。
どの位の規模だ?
と、ちょいと興味が湧いて聞いてみたら一星系の正規艦隊くらいの規模だそうだ。
詳しくは恐ろしくて聞けなかったが、このまま設計時の状態にまで完全復旧したら、本当に「無敵の宇宙船」になってしまう。
ちなみに完全復旧したら本体と補助船団のコントロールは大丈夫なのか?
と聞いたら、そこまで復旧できたらコントロールも完璧に掌握できる。
それどころか敵対勢力の船団すらも同等までの規模なら掌握できると言い切りやがったフロンティア頭脳体……
こいつの能力って、どこまでが限界なのか俺にも理解不能だ。
さて、ついに到着した小マゼラン雲。
いつものように情報収集かねて、無数にあると言っても言いすぎじゃない最小タイプの搭載艇を周辺空域に放つ。
こいつらは銀河系で改修した改良型の超小型恒星間駆動を搭載している。
この子グモ達が情報の糸をフロンティア(親グモ)へともたらしてくれるのである。
恒星間駆動を積んでいない従来の搭載艇達は、フロンティア周辺の宇宙空間に浮かぶデブリや浮遊隕石、破壊されたと思われる宇宙船の破片を運び込んできている……
待て。
宇宙船の破片?
「フロンティア、緊急の調査と確認だ。非常に高い確率で、この小銀河内部で星間戦争が勃発していると思われる。通常の生命体調査は中止して、この戦争の詳細な情報を収集しろ」
「はい、マスター、了解です。緊急事態と認識して船自体も戦時体制を取りますか?」
「いや、まだ戦時体制までは不要だ。しかし戦時体制の準備はしておけよ。今はまだ、こちらに対する攻撃はないけどな」
「了解しました、マスター。準戦時体制を取ります、防衛装置と、それに関係する装備のロック解除をお願いします」
「わかった。フロンティア、準戦時体制につき防衛装置と防衛に関する装備の全てのロック解除を宣言する!ただし、武器に関してはロックのままだ。たとえ攻撃を受けたとしても反撃にはパラライザー(麻痺銃)のみの使用で対処せよ」
「了解です、マスター。では、ただ今よりフロンティアは準戦時体制に移行しますのでロボット以外の生命体3名は、このマスターコントロールルームに常駐して下さい。ここ以外の場所では、最悪、生命の保持確率が小さくなりますので」
さて、後は搭載艇達の情報を待つだけだ。
俺は、銀河系ではあり得ないものと化した星間戦争の現場に飛び込んでしまった不運と、この重大トラブル、どうやって解決してやろうかと考えている自分がいる事に少なくない驚きを感じていた。
俺って何処まで行ってもトラブルバスターなんだよ……




