表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/815

銀河のプロムナード 六 球状生命体たち、その後

これで、主人公抜きの話はおしまい。次回から、主たるストーリー展開に戻ります。


「ついに!ついに出来たか!血漿の粉末化!」


雄叫びというか、叫びを上げているのは球状生命体、昔は吸血生命体と言われて様々な異星種族から蔑まれていた者達の代表。

通常のタンパク質生命体(いわゆる人類ね)から、かけ離れてしまった進化をしてしまい、その進化の途中で固形物を食する事が不可能となり、肉体の維持のためには他のタンパク質生命体の血液を吸わねばならないという、一種の呪いのような事態に陥っていた。


種族の代表者(数十年で交代する選挙制)達は、様々な実験や試みでなんとか通常の栄養補給が出来ないものかと世代を越えて試行錯誤していた。

が、うまくいかない。


大衆は、強固な星間帝国体制を作り上げて球状生命体が頂上に君臨すれば、表面上は食生活に文句を言う奴もいなくなるだろうと考え、それを代表者に要求する。

ある程度は拒否してきた代表者たちだが、ある時期の代表者が大衆に迎合してしまい、星間帝国のようなものを作ってしまう。


その星間帝国の中で犠牲者となる種族を探そうと思ったのだが、どうも適当な血液(つまり、美味い血ね)を持つ種族がいないことに怒り心頭の球状生命体は、その頃に見つかった星間帝国から離れてはいるが、高度な技術と穏やかな精神性を持つ不定形生命体に高圧的な態度に出る。


「おのれらが把握しとる星間文明の中でタンパク質生命体がいる星のリストを寄越せ!んでもって、わしらの星間帝国の一員となってタンパク質生命体探しに(つまりは、エサ探し)に協力せいや!断ったら、耳の穴から手ェ突っ込んで、奥歯ガタガタ言わすぞォ!」


このように(文言は違うが)脅したわけである。

もちろん、吸血するから被害者リスト寄越せ!

なんて言われて不定形生命体が「はい、わかりました」などと了承するわきゃない。

とはいえ、球状生命体も不定形生命体を全滅させたいわけじゃない。

全滅スレスレの事態に追い込んで数千年も経てば、さすがに白旗上げるだろう。


とのことで、太陽制御装置を不定形生命体の主星に打ち込んで、主星の直径を数千倍にする。

しかし、球状生命体種族の誤算が、この後、判明。

不定形生命体は、千年経っても二千年経っても音を上げなかった……

そのうち、球状生命体も代表者が交代し、穏健派が主流となると帝国制は廃止され、現在のような連盟を組む星系政治の体制となる。


この時から、過去の攻撃的な政治体制が批判の対象となるが、もうその頃には太陽制御装置は不定形生命体の主星の中深く入っていて、球状生命体の科学技術でも取り出しと無効化は無理だった。

批判の嵐にさらされる球状生命体達だったが、自分たちの非道な行いの結果を見せつけられているので何も言えない。

どうにかしないといけない過去の過ちだったが、今となってはどうしようもない、と、ついに諦めかけたその時!


朗報が入った。

何と、名前すら聞いたことのない地球人(太陽系という星系らしい)というタンパク質生命体が操る超巨大宇宙船が介入し、不定形生命体の主星に打ち込まれた太陽制御装置を取り出し、無効化したという。

その後、球状生命体の支配星系に向かっていると聞く。

自分たちが何も出来ずに見放す寸前だった状況を、いとも簡単にひっくり返してしまった地球人という謎の種族と、見たこともない超巨大宇宙船が向かってくる。

球状生命体は、全滅もあるなと考えた。


あのような理不尽な種族全滅を目論んだ邪悪な生命体種族と断じられても文句は言えないからであり、自分たちの手も足も出ない技術力を見せつけられてしまってもいるからである。

地球人が本気になって怒れば、我々は全滅のカウントダウンを見ることになるかもな。

そのように球状生命体の代表者は諦めの気持ちで思っていた。

ところが!

実際に来た超巨大宇宙船に乗っていた地球人(その船の船長らしい)の提案と推論、そして我が種族との簡単な問答により、驚愕の事実が判明する。


我々、球状生命体と地球人との相関関係(先祖が同じで、球状生命体のほうが変異して今の種族形状になってしまった。血液としては地球人のほうが先祖のオリジナルに近く、我が種族にとって「ひじょうに美味い」血液であること)から吸血という「後ろ指を指される」行為を、少なくとも非常に短期で通常の食料摂取と同じような行為に出来ること、そして近い将来、吸血行為そのものを中止することが可能だということ。


これが、いかに球状生命体にとり救いの一言となったかは今更、述べるまでもない。

で、最初に戻るが、ついに、今まで液体状であった血液パックを、血漿粉末にする事が成功する。

これで、栄養補給時のみ、粉末血漿を水分パックに溶かすだけで良い、夢のような食事環境が実現する。

まあ、これを発展させて、カプセル一個飲めば良いだけにすることも将来は可能となるだろう。

まあ、こんなわけで、我が種族はもうタンパク質生命体を探して星系から星系へと犠牲者探しをすることもなく、現在、他種族の探索はしているが、それも文明発展の手助けをするためと目標が変化した。


目標が変化すると、こちらも攻撃的な探査や強引な交渉など行うはずもなく、他種族との非常に良い関係を作り出せるようになった。

おまけに我が種族の恩人である太陽系文明、特に地球人や火星人は特異な種族だったらしく、恒星系文明になって数年で今までの跳躍航法の効率と安全性を飛躍的に高める技術装置を考案する。

(これは今でも他種族の語りぐさとなる。惑星内の文明から、こんなに一挙に恒星間文明に発展し、なおかつ、とてつもない技術的貢献を成し遂げてしまった生命体や文明は未だかつて存在しない。もしかして先史文明の遺伝子を色濃く引き継いでいるのは実は太陽系文明なのかも知れない)


我々、球状生命体は、今日も宇宙を飛び回り、発展段階が遅れている文明があれば手助けし、窮状にある生命体集団があれば助けていく。

こんなもの、あの地球人に貰った恩恵に比べれば、微々たるものだが……


今日も、宇宙空間は人情と優しさに満ちている……


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ