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銀河のプロムナード 一 太陽系では……

主人公たちの旅は少しこっちへ置いといて……

しばらくは地球その他の星の現状を、お送りします。


フロンティアの一行が銀河狭しと飛び回っている頃、太陽系では……


「おい!この地球外生命体の集団は何なんだ?!こんな密集体型で太陽系に迫ってくるなどと……宇宙戦争か?」


ここは太陽系惑星連邦評議会の巨大なる建物の地下深くに設けられた戦略宇宙軍の情報管理部門。

ここには冥王星を果てとする太陽系の、ほぼリアルタイムの情報を全て一覧することが出来る3Dモニターが表示されている。


怒鳴り合っているのは情報室のお偉方と緊急事態を知らされた評議会の重鎮たち。

その目の前に写っている3Dモニターには明らかに異常な数のUFO(未確認飛行物体)……

いや、鮮明に映っているそれは明らかに地球外生命体により造られた宇宙船の大群。


大きさ、設計思想、デザイン、その全てが統一されていない、宇宙からの訪問者の大集団!

太陽系内をもれなく探査したという人類は、その狭い範囲内で「知的生命体は宇宙には人類だけ」などという思い上がりを長い間、維持していたが、この瞬間、それが井の中の蛙状態だったことが判明した。


「どうする?こんな事は予想もされていなかった。人類がファーストコンタクトする場面はシミュレーションされていたが、よりにもよって、こんなに多数の異星種族や異星文明とのコンタクト状態に放り込まれるとは……ああ、言葉も理解できないだろうし相手の訪問意図すら推測出来ないかも知れない!どうしたら良いのだ?!」


これは内惑星と外惑星の折衝作業を行っている外務大臣の職にある者の言い分。

工業省や農業省、開拓省などに所属する大臣たちの意見は、また違うだろうが……


「今のところ分かっているのは、この宇宙船群が我々とはケタ違いの技術力を持っていることですね。我々の文明は未だに太陽系を離れて付近の恒星系へ行くことも出来ないのですよ。それに比べて彼らの宇宙船は遥かに遠い恒星系からやって来ているのは明白。その動力源すら我々の文明は開発できておりません」


説明しているのは太陽系宇宙軍の情報省長官。

彼にとって、この事態は最悪のシミュレーションに近かった。

文明程度が数百万年ほど違うと言ってもいい(原猿と現代人のようなもの)この宇宙艦隊の太陽系訪問は完全に砲艦外交そのもの。

あまりの文明程度の差に、もう地球も火星も、その他の惑星も含めて相手の言うことを大人しく聞くことしか出来ないのが現状だ。


「戦略宇宙軍などという、ご立派な部署にいるんだろうが?!こういう事態の時に秘密兵器の一つでもないのかね?!」


かなりのお年を召された評議員が、たまりかねたように発言する。

戦略宇宙軍長官は哀しそうな目で、その人物を見る……


「残念ですが昔のビブリオファイルにあるアニメ映画ではなく、これは現実なのです。こちらが、どうやっても越えられない恒星間の膨大なる距離を彼らはいとも軽々と越えてきた……これほどの技術力の違い、どうやって埋めると言うのですか?教えて下さい。貴方の言う台詞とは、ご都合主義のアニメや映画では当然のことかも知れませんが、これは妄想ではなく現実なのです。ちなみに彼らには核ミサイルの攻撃すら効果がないでしょうね。恒星間を渡る技術力を持つというのは、それほどの差ですよ」


戦略宇宙軍長官の言葉は3D映像が真実とは思えていなかった政治家達の頭をぶん殴り、正気に戻させた……

皆、言葉もなく蒼白い顔色になっていた……


「今、この船団との交信を成立させようとしています。ともかくコミュニケーションが成立しなければ彼らが何を求めて太陽系になど来たのか、それすら分かりませんので」


戦略宇宙軍長官は、ぶつぶつ言っている政治家達を部屋の外へ追い出すと、ため息をついた。


「あと数時間で、あの宇宙船の大群がやってくる。推定進路から見ると、おそらく目的地は地球。さて、どんな風に相手をしたらいいのやら……こうなってみると、あのトラブルバスターがメンバーから離れたことが痛い。外惑星方面へ向かったと聞くが今頃は、どこを翔んでいるのやら……うらやましいよ、まったく」


ひとしきり愚痴ると戦略宇宙軍長官は地球側の対応状況を確認するために長官室へ歩き出すのだった。

彼が口にした人物が全ての元凶である事は神ならぬ身の哀しさ……

元部下だった楠見の事を思いながら長官は、これから忙しくなるだろうエキスパート部門へ緊急招集をかけようとしていた。


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