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予想通りの展開だって? いや、まあ……そりゃそうなんですけどね。

今回で、不定形種族との邂逅編は終了。

次からは、対球状種族(吸血種族)編になります。


会談(?日常会話の延長に思えるが)は続く。


「音声コミュニケーションも久しぶりです。この10万年以上、ずっと、この惑星で巨大化した太陽の熱と戦ってましたからね」


うわ、ずいぶんなタイムスケールの話だな。

地球人なら永遠と思える期間だ。


「気の長い話ですね。まあ、不定形生命体の方たちは寿命が長いから普通のことかも知れませんが」


「いえいえ、私達の個としての寿命は、数千年程になりますので、それほど長いわけではありません。しかしですね」


ちょいと集中してるような気がする。

と思うと、いつの間にか小さな分体が生じていた。


「このように、我々は故郷を後にするときには自分の分体を残していきます。この分体が育てば、私の細胞そのものは個としての私が死んでも永久に故郷で生きていけることになるわけです」


はあ、もう驚きすぎて声も出ない。

一種の「不死」には違いないな、これも。

しかし、次の言葉には更に驚かされる事になる。


「ですから、ここに分体を残しておけば貴方についていっても私の記憶や細胞は死なずに済むわけですね」


「はあっ?!なんで、そんな話になります?」


「だって、あなたに付いて行けば、ずいぶんとおもしろい旅になりそうな気がするんです。でもって、ここじゃ語りきれない、私達の種族の歴史や、この機械体を設置した生命体のことも知りたいのでしょ?だったら私を仲間にすべきです」


「いや、いやいやいや。出会って、まだほんの少しの時間しか経ってないじゃないですか!いくらなんでも、この短い時間で全くの異種族を、そこまで信頼しますか?!」


「え?信頼できないとでも?すみませんが、私達のテレパシー技術は、あなたのそれよりも洗練されています。出力としては、あなたに及びませんが、私達はこうやって話し合っている間にも、あなたの意識下にアクセスできます。あなたが悪人でないこと、今までの仕事や冒険のこと、今の宇宙船を手に入れたいきさつ、精神生命体との出会いなども全て知っています。その上で、あなたの仲間になることが我が種族の利益に繋がると判断しました」


うわ、心を覗かれていたのか。

まあでも、正直な種族特性らしいから許してやろうか。

まあ、精神生命体のことも太古に出会ってる種族だから問題はないだろうし。


「はあ、分かりました。同行を許可します。フロンティア、プロフェッサー、エッタ。仲間が増えるぞ」


「マスター、これは貴重なクルーです、私は歓迎します」


「私も歓迎します、我が主。興味ある歴史が聞けるでしょう」


「私は保留します、ご主人様」


おや?

エッタが保留?


「エッタ、どういう事だ?」


「はい、私は不定形生命体に敵対する生命体種族に対する危惧感から、ここでクルーの増員を歓迎することは出来ないと感じます」


「そういう事か。じゃあ、そこを解決しないとな。あの機械体を設置した生命体、というか文明は、どこの何者だい?かなり高い技術力を持っている文明と俺達は真正面から敵対したくはないんだがね」


「それも、いわく因縁からお話すると長くなりますから、ここでは簡単に説明しましょう。あなた達が今までに出会ってきた生命体や文明とは、かなり違った生命形態の文明です」


「ふんふん、不定形生命体の君が、そこまで言うんだ。かなり珍しいものなんだろうな」


「はい。彼らの生命形態はエネルギー球です」


「は?純粋なエネルギー生命体か?」


「いえ、そこまでは進化していません。彼らにも肉体はあります。彼らは私達と同じくらいの生命体・文明として長い歴史を進化してきた者達です。最初は彼らも、あなた、キャプテンとお呼びしますが……キャプテンと同じようなタンパク質生命体でした。肉体もキャプテンと同じく手足や胴体、情報収集と解析に頭と、ほぼ同じくらいの肉体構成でした」


「ふーむ、それが長い時間をかけて、不要となった手足を捨てて球状になったということか?」


「そうです。ちなみに細かい作業や重量物を持ち上げるのは、細かく制御できるサイコキネシスと重力制御ビームの両方でまかなうのです」


「あ、それで頭脳だけで手足は不要ってことか……で、栄養の摂取は?」


「それが……言いにくいことながら彼らは進化の途中で固形物の摂取を拒否したのです」


「はい?それって、どういう事?」


「言いにくいのですが……彼らは他の生命体、特にタンパク質生命体の血が栄養となります。ですからキャプテンやエッタさんなどは、さしずめ「新鮮な獲物」として見られてしまうかと……」


おいおい!

ここにに来てオカルトに近い生命体、吸血生命体かよ?!

とんでもないな、宇宙に生きる生命体の種類ってのは……


「で、端的に話してくれ。その吸血生命体種族が、なんで不定形生命体を絶滅一歩手前まで追い詰めるんだ?」


「我々が彼らの星間連合に入らなかったためです。彼らとしても、我々の体液は栄養として不適格だったらしく、それなら宇宙法を伝道するついでにスターマップの情報を渡せと、そのために自分たちの星間連合に入れと通告してきたのです」


「自分たちの栄養源となるタンパク質生命体の住む星の情報は何としても欲しいか。で、そんなことには協力できないと断ったら……」


「絶滅まではさせないが他への見せしめという形もあったのでしょう。我々の太陽へ機械体を打ち込んで、このような状況に……」


「なぜ、その時に種族揃って逃げなかった?惑星さえ放棄すれば一族揃って移住も可能だろ?」


「移住計画も立てられました。しかし、それが実現する前に球状生命体の星間連合により惑星が包囲されてしまい、宇宙船が飛び立てない状況になったのです。仕方なしに我々は地下都市を建設して惑星の地下に引きこもるしか手がなかったのです。太陽が膨れ上がって地表が焼け野原になった状況で始めて、彼らの包囲船団は惑星軌道上から撤退していきました」


「ふむ。その頃には、もう危険すぎて夜の側からも宇宙船は発着できなくなったという事か……」


「はい。ちなみに宇宙船の非常招集は我々ではなく彼らの謀略でした。宇宙へ出た者も全て集めて、この星に閉じ込めようと計画していたようです」


ようやく疑問が解消した。


「エッタ、これで次の行動は決まったな」


「はい、ご主人様。新人クルーと一緒に球状生命体、いえ吸血生命体への抗議行動ですね」


「分かってるじゃないか。では、歓迎する……えっと、名前はどうしようか?」


「キャプテンの発音しやすい名前で、どうぞ。私の固有名はテレパシーでしか表現できません」


「じゃあ、横山某先生のキャラクター名じゃ、そのままだしな……うーむ、何かいい名前は無いだろうか?不定形生命体、スライム……そうだ、ライムにしようか」


「ライムですね。分かりました、私のことは今からライムと呼んで下さい、皆様」


という事で新しいクルーが増えました。

最初に、うんざりしてたように言ってたのは、この後のこと……


「ではキャプテン。エッタともども、よろしくお願いしますね」


「お、おう。こちらこそ……って、エッタともども、って何だ?」


「もちろん分体作りですよ、分体作り。私は見た目だけじゃなく相手種族の子供も作ることが出来ますからね」


がーん!

衝撃の事実。

エッタだけでも厄介なのに、また面倒のタネが増えてしまった……


「な、なんで、なんでこんなことになるんだぁ!」


「マスター、これも運命です」


「我が主、あなたの出会い運は最凶にして最強ですね」


やかましいよ、ロボット共が!

ああ、俺の貞操が危機にある。

別に守りたいとも思わないけどさ、この歳だから。

だけどな!


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