救助作業(太陽制御装置の撤去)に入りますよ。 炎熱地獄へ飛び込みます。
作業は難航しそうに思えますが、とある種族の協力により、あっさりと成功します。
不定形生命体との出会いは、この次に!
搭載艇のカスタム作業が終了し、作戦の打ち合わせが終了したのが、1時間後。
俺とプロフェッサーが搭載艇に乗り込み、熱エネルギー防御シールドを全開にしてから、眼前の膨れ上がった太陽に近づいていく。
船外カメラは耐熱カメラなのだが、あまりの熱量に画像がちらつく。
搭載艇の作業用船外観測窓も、目いっぱいの防眩シールドを展開している。
それでも眩しくて、俺は真っ黒なサングラスをかけている。
プロフェッサーが手際よく、搭載艇を右や左に動かして、フレアを避けて太陽表面へ近づく。
「我が主、待機ポイントに到着しました。さすがに、この高温では数時間しかもちません、我々の身体が」
「船は大丈夫なんだな。じゃあ、行くぞ。フロンティア!こちらの準備は完了した。ぶっ放せ!」
「アイアイ、マスター。では太陽を暴走させている機械体の予想地点へ絶対零度砲を3発、打ち込みます。予想しないフレアが発生する恐れがありますので、ご注意下さい」
通信が終わると同時に物質のエネルギーを最低限度まで落とす絶対零度砲が発射された。
ビーム形態ではあるが目標物は物質としての形態を保てなくなり雲散霧消する。
3回繰り返されるビーム照射。
プラズマ物質が太陽表面より剥がされて、そこに巨大な黒点が出来る。
黒点を観測するが機械体らしきものは見えない。
「フロンティア、砲撃中止。予想位置に機械体は存在しないようだ」
「了解です、マスター。しかし、予想が違っているとなると、これは難しくなりますよ。こんな超高温環境では位置特定が不可能です」
「分かっている。ちょいと俺に考えがあるんで連絡を待ってくれ。1時間もかからないと思う」
「分かりました、マスター。では連絡あるまで待機します」
「よし、プロフェッサー。熱シールドを最大限度まで強化して太陽に近づけるだけ近づいてくれ」
「それは可能ですが。何をする気ですか?我が主」
「精神生命体から聞いた話を思い出してな。テレパシーで挨拶さ」
〈太陽に住む方たちよ!貴方がたの住む太陽に異変を起こしている機械を探している者だ。力を貸して欲しい〉
このようなメッセージを5回ほど繰り返す。
返事は、すぐに来た。
〈破滅をもたらす者よ。我々は抵抗する術を持たない。要求があれば何なりと叶えよう、我々にできることなら〉
〈双方に誤解があったようだ。先ほどの砲撃は誤解の産物だった。謝罪しよう。我々は、この星に隠されている機械体を探している。それが、この星を巨大化させている元凶なのだ。その場所を知りたい〉
〈謝罪を受け入れよう、偉大なる力を持つものよ。その物の、ある場所は判明している。我々も、この状況には困惑しているのだ。突然に星が巨大化して地中からの炎に焼かれるものが大勢いる。その物を取り去ってくれるのか?〉
〈そうだ。場所さえわかれば機械体を撤去する用意はできている。ポイントを教えてくれないか?〉
〈それなら我々が地中より、その機械体?とやらを掘り出してこよう。そして地表に置いておくから持ち去ってくれ〉
〈協力に感謝する。では恒星表面に機械体を出してくれたら周辺より避難してくれ。我々は星のエネルギーと熱には短時間しか耐えられないので、最大冷却状態で、そちらへ行くから〉
〈分かった。こちらの用意が完了次第、また連絡する〉
〈ありがとう、よろしく頼む〉
「フロンティア、砲撃は終了だ。機械体は、もうしばらくしたら恒星表面へ出てくる」
「マスター、何をしました?自力で機械体が恒星表面へ出てくるのですか?」
「違う。ちょいと恒星表面に住んでるプラズマ生命体とコンタクトとれてな。協力してもらえることになったんだよ」
「想像を絶する事を考えますね、マスターは。まあ、いいでしょう。できれば装置も無傷で捕獲したいと考えますので、その点も、よろしくお願いします」
「ああ、楽しみに待っててくれ」
それから1時間ほど過ぎてから……
ついに待望のテレパシー連絡が入る。
〈偉大なる力を持つものよ、我々の方の準備は完了した。そちらの言う機械体は星の表面に引き出してあり、我々は、そのポイントから100kmほど離れている。さあ、災厄を招く物、持って行ってくれ!〉
〈ありがとう。それでは、こちらも恒星表面へ降下する。短時間で作業は終了するので、それ以降は自由に行動してもらって大丈夫だ〉
「プロフェッサー、今から言うポイントへ降下してくれ。そこに太陽に干渉していた機械体があるのでマニピュレータで引っ掴んで、おさらばだ」
「分かりました、我が主。ポイントは確認しました。降下します」
降下したポイントに果たして機械体は存在していた。
搭載艇のマニピュレータで挟みこむようにして機械体をゲットする。
そのまま俺達はフロンティアへ直行する。
格納庫で消火液と冷却剤をたっぷりとふりかけられた搭載艇から下船すると、さっそく太陽内部に仕掛けられていた機械体を調査する。
ある程度、予想はしていたが、これは絶対に自然のものじゃない。
太陽内部にあっても動作を継続させていたのも凄いがフロンティアの調査によると意外に簡単な構造なのだそうだ。
「これは、一種のカンフル剤ですね。小さな太陽でもノバ化一歩手前まで行くように重水素とエネルギーを補充する形になっています」
と、フロンティアは結論づけた。
当然、太陽から引き剥がされた現在、機械体は動きを止めている。
どうやら太陽そのものの熱エネルギーを燃料として稼働していたらしい。
あ、太陽はどうなったかって?
膨張は停止した。
これから星の寿命としては素早く、千年以内に元の大きさまで戻っていくだろうとのこと。
膨張するための燃料もエネルギーも供給されなくなったから多少は大きな変動があるかも知れないが、俺達の感覚ではゆっくり縮んでいく感じになるだろう。
さて、と。
災害原因そのものは撤去・解決した。
お次は待ちに待った、不定形生命体との邂逅だ。
楽しみだな。




