ついに見つけたようです。 手遅れでなきゃ良いんですけど……
あれこれやってダメだったので、データと観測で見つけることにします。
一応は、これだ!ってのが見つかるんですが……大変な環境にあるようです。
今、宇宙船フロンティアは星系と星系の間の宇宙空間で停止中。
まあ、正確には宇宙空間を漂っているのだが。
なぜかというと、周りの恒星を、じっくり観測するため。
あちこちの星系を訪問してると、スターマップを貰ったり買えたりする星もあったりする。
代価は、こちらの持ってるスターマップや情報なんだけど。
そこで得た星系情報や恒星情報を、現在の情報と照らし合わせるために、あちこちに搭載艇を放って情報を収集してるわけだ。
気前のいい星だと数万年単位でのスターマップが揃ってたりするので、こちらが虱潰しで動くよりも合理的だったりする。
そんなスターマップの情報を、フロンティアとプロフェッサーが手分けしてデータ加工していく。
そのデータと搭載艇から得られる生データとをリアルタイムで精査していく(とてもじゃないが人間の俺の出る幕じゃない。大量のデータを、あっというまに加工・比較・検討していくスピードは、さすがにロボット頭脳の十八番だったりする)
作業を始めて、数日後。
プロフェッサーとフロンティア(頭脳体)が同時にスターマップから目を離して、俺の方を向く。
何か進展があったかな?
「我が主。ようやく見つかった……と、思われます」
「マスター、お待たせしました。高確率で不定形生命体に関する何らかの情報があると推定される星域が確定出来ました」
ほぼ同時に喋ってくる。
通常なら遮るが、俺の脳は全開状態だから、各々の話も聞き分けられる。
「うん、よくやってくれたな、二人共、ご苦労さん。さっそくだが、その星系のデータを見せてくれ」
「はい、マスター。こちらです」
目の前に星系の3Dデータが現れる。
ふむふむ……
これを見る限り、かなりの荒っぽい星系だな。
300万年近く前に主星が拡大期に入ってしまい、それまでハビタブルゾーンに入っていた星、その近傍の軌道を回っていた星は主星に呑み込まれてしまって蒸発している。
これを見る限り、生物など存在し得ない環境だと思うが、ところが!
見方を変えると、それまで遠すぎて生物の住む環境になり得なかった星が現在は、かなり厳しいが不定形生命体ほどの適応力を持つ生命体なら存在可能なものとなっている。
ただし、太陽(主星)が拡張期にあるため、かなりハードな生存環境になっていると思わなきゃならない。
でかい太陽フレアだと、惑星近傍まで来そうだ。
「フロンティア、正直な意見を聞きたい。この星系に生物は住めると思うか?俺の個人的な意見だと機械生命体でも厳しいと思うぞ、ここは」
「はい、肯定します、マスター。しかし、この数百万年の間に大規模な変動があったと考えられる星系を選別すると、この星系が候補の一番に上がります」
「我が主。候補の星系は他にもありますが、どれも大した恒星変動では無いとデータで確認されています。至急で全種族を呼び戻すなどという緊急集合をかけた可能性があるという星系ですと、ここしか無いと確信できますよ」
「二人が同じ結論になるなら、そうなんだろうな。しかし、ぶっちゃけ、ここに生命体が住んでいるとして数百万年も生き延びていると思うか?フロンティア」
「タンパク質生命体なら無理でしょうね。ケイ素生命体か機械生命体なら何とか少数が生き残っていると思われますが。不定形生命体の強靭さが問題になると思われます」
「そうだろうな。プロフェッサー、いったんは宇宙に出た不定形生命体が故郷に引きこもったのは理解できないでもないが、種族が危険にさらされても、なぜ緊急通信を送らなかったんだろうな?俺は、その点が不可解なんだよ」
「それは私では理解しかねます、我が主。高熱を遮断する物質が通信すら通さないのか、または避難している場所がテレパシー波すら通さないバリアを形成しているのか?全ては不定形生命体にしか分からないでしょう」
「そうか、そうだよな。では俺達がやれることを今からやるしかあるまい!フロンティア!この星系へ向けて発進。緊急速度だ!不定形生命体を救助しに行くぞ!」
「はい、マスター。了解です。緊急発進、準備よし。フロンティア、発進します」
がくん、とフロンティアが揺れた。
かなりの無理をさせたか?
何と言っても直径4kmを超す超巨大宇宙船だからな。
ついに突き止めた不定形生命体の星!
そこへ向けて俺達は跳躍につぐ跳躍で文字通り一秒も惜しんで宇宙空間を突き進んでいった……




