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手がかりが見つかりました。 ですが、先は長そうですよ。

この話で、手がかりは見つかります。

(例によって、主人公の出会い運により)

しかし、これから直に不定形生命体の文明へと繋がるかというと……


見つからない……

手がかりすら無いのは、どういうことだ?


あまりに長い歴史を生きているため、自分の存在を隠す技術に長けていても不思議ではないが、それでも噂も無ければ歴史の痕跡すら無いのは、どういうこと?

神の使徒の言葉さえ聞いていなければ、俺自身が不定形生命体などというのは妄想の産物だと断定しているところだ。

絶対に、おかしい……

不定形生命体の存在を示す証拠を消して回っている存在がいるとしか思えなくなってきたぞ。


「フロンティア。今の状況の概要が知りたいんだが」


「はい、マスター。出している艇の全てからネガティブな結果報告しか返ってきておりません」


「やっぱりな。フロンティア、ちょっと意見を聞きたいんだが」


「はい、なんでしょうか、マスター。このまま続けても不定形生命体に関する手がかりが見つかる可能性は、ほとんど無いという予測しか出ないのですが」


「そうだろうな。で、ちょいと方針変えよう。生命体の見つかりそうな星系を探査リストから外そう」


「はい?マスター……それって生命体を見つけることを放棄してるとしか思えませんが?」


「そうだろうな。でも、今の状況で何も、痕跡すら見つからないってのは考えられない事だ」


「はい、普通は、かすかなヒントくらいは見つかるものですが」


「でな、俺の考えは……こりゃ、意図的に隠されているか証拠や痕跡を消してる奴がいると思うんだ」


「マスター、その可能性は確かにあると思われますが、その理由は?そんなことしても何も利益が無いように思えますが」


「いや、それは、俺の勘としか言えない。しかし、勘だからこそ計画の裏をかけるんじゃないか?」


「ふむ……このままじゃ、らちがあきませんしね。やってみましょうか」


で、それから俺達は搭載艇チームやフロンティア自身の探索範囲を、とても生命体が発生するとは思えない星系のみに限定してみた。

まあ、最初から見つかるとは俺も考えてない。

データ無し、見つからず、の報告ばかり続いた。

ところが、ある時。


「マスター、この探査とは違いますが、緊急発信を感知しました」


「探査も大事だが、この宇宙での生命体救助は再優先事項だ!発信地点へ向かえ、フロンティア!」


「了解です!」


ほんの数10分ほどで緊急発信がなされたポイントへ到着する。

こういう場合のフロンティアの行動は本当に素早い。


プロフェッサーに、ミニマムサイズの搭載艇に乗り(最小サイズ、2人乗り仕様)救助へ向かってもらう。

救助者が多い場合を想定して、それより大きな中型艇も用意するが、その必要は無さそうだ。

プロフェッサーが乗った搭載艇が、要救助宇宙船に近づく場面が映像として見えている。

俺達はコントロールルームで確認と指示をしているのだ。


どうやら他の星系から飛んできた探査宇宙船らしいのだが先端部が潰れている。

隕石かデブリにでも衝突したか?

居住区には損害はないようだがコントロールルームは完全に潰れているようで宇宙船が胴体着陸できたのはオートパイロットの優秀性のおかげだな、これは。


乗員は一名だけのようだった。

それだけ小型の宇宙船だったからこそ胴体着陸時の衝撃が少なくて助かったのだろう。

まあ、当該惑星そのものが月よりも小さな微惑星サイズだったため、重力も小さくて助かったのもあるだろうが。


プロフェッサーが救助した生命体をフロンティア内に運び込んできた。

宇宙服を見る限り、手が2本、足も2本で頭部も地球人と同じような位置にある。

手足と頭部のサイズが地球人的に変なのは、ご愛嬌というやつかな?

手足が長く、首を含めた頭部が小さく見える。


俺から見ると腰部に尻尾がついていても当然のように見える(つまりはサルなんだが……まあ、知性体だから、そのへんは哺乳類でまとめようか)

一応、メディカルルームで俺達に危険な菌やウィルスが無いかどうかチェックさせてもらう。

同時に言葉も探ったが、ちょっと地球や、今までの宇宙生命体の言葉と互換性が全くないことが分かるのに一時間ほどかかってしまう。


こりゃ、俺の出番だな。

テレパシーでもなきゃ言葉を翻訳するのに時間がかかって仕方がない。

武器も持っていないことを再度確認してから俺自身がメディカルルームに向かう。

部屋のドアが開くと相手は驚愕しているようだ(まあ、当たり前だわな。相手にとっちゃ俺は「身体に毛のない裸のサル」だから)


〈ようこそ、フロンティアへ。歓迎するよ〉


テレパシーは通じたようだが、あまりに驚きすぎて返事のテレパシーが来ない。

ん?

もしかしてテレパシーを受けるだけで送る能力はないのか?


「フロンティア、こちらの方はテレパシー受信しかできないようだ。気長に翻訳機能が動き出すまで音声を拾いあげるしか無いようだぞ」


「了解しました。データは全てファイルで録ってあります。気長にやりましょう」


それからは、俺からテレパシーを送り、相手の音声を録音して翻訳辞書ファイルを充実させる場面ばかりが続く。

そうこうしていること3時間ばかし(さすがに共通点が無い言語について、様々な単語から物理的な共通事項を探すことから初めていると、こんなに時間がかかる)

ようやく相手との翻訳辞書ファイルが完成し、互いのコミュニケーションがとれるようになる。


「俺は地球人。太陽系という星系の地球という惑星からやってきた」


「わたしはキキリールⅤ。この惑星からは遠く離れたジューゼンⅣという星からやって来た他星系探査チームの一員だ」


「君の宇宙船から緊急信号が発信されたため、すぐ近くにいた我々が救助にやって来たのだが、君の希望を聞きたい。宇宙船は操縦系が完全に破壊されているため修理も不可能だ。もし望むなら、我々の宇宙船で君の星へ送り届けることは出来る」


「感謝する。できるなら、故郷の星に帰りたい。しかし、わたしには、その恩を返す手段も持っていないし、そのための物資もない」


「恩など返さなくていい。我々は、そういうものを望んで君を助けたわけではない」


「しかし、それでは異生命体同士の宇宙法に反することになる」


「ん?宇宙法?すまないが我々は、その宇宙法という物を知らない星区からやってきたのだ。我々は救助に関して礼など求めない」


「すごいな、君たちの星区の宇宙法は。我々は全ての生命体同士に通用する宇宙法の基本理念として宇宙での救助信号に対して、それを無視したり、救助を妨げたりすることは本質的に最悪の事だと制定している。そして救助されたものには救助したものの要求を全て呑むように制定もしている」


おいおい、この星区じゃ宇宙船で事故したら一挙に貧乏まっただ中かよ。

たまらんな、こりゃ。


「繰り返すが我々に、そのような宇宙法は存在しない。生命体が困っていたら助けるのは当然のことなのだ。見返りを求めることなど無い」


「いや、しかし!それでは私が個人的に困る。助けられても相手に恩を返せなかった者として一生、日陰者の烙印を押されることになる」


「いやしかし……困ったな、こりゃ。水掛け論だ。よし、こうしよう!」


「なんだ?要求が決まったのか?」


「要求というか何と言うか……君の星で不定形生命体という言葉を知るものはいないか?」


「不定形生命体?どこかで聞いたな、その単語……おお!今言った宇宙法の原理原則を決定した生命体が、その不定形生命体という生命体の文明だよ。ちなみに、この宇宙法は我らの文明の、そのまた前のまた前の……いつからあるのか分からないが、その文明にて使われる言語で石碑を造り、この宇宙法の原理原則を古代から伝えているのだ」


「ようやく、手がかりが見つかったかな?というところだな。ありがとう、俺達は不定形生命体を探して宇宙を旅している。今の話は何よりも重要な手がかりとなる。これだけで恩は返してもらった」


ということで俺達は喜んで彼を故郷の星へ送って行ってやった。

宇宙空港で政府の長という人物(?)と会って話をしたが、彼でも宇宙法の由来には曖昧な事しか伝わっていないようだった。

一応、石碑には案内してもらい実物も見せてもらったが、これは数100年前に造られたものだとのこと。


最初の石碑そのものは幾多の戦争によって壊されてしまい、もう残ってはいないと言われた。

星から旅立って数日後。

俺達は一応の手がかりを掴んだのだが、さて、それからどうしようか?


「フロンティア、これからは星系外からの調査ではなく惑星に降りるぞ。例の宇宙法の伝承を追いかけるしか今の俺達に手がかりはない」


さて、手間がかかるが、これしかない。


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